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    <title>赤毛のアン ~毎日読むアン~</title>
    <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/</link>
    <description>ここが私の、アヴォンリー。 ここが私の、グリーンゲーブルズ。このくだらない日々を、生き抜く "知恵" とは？赤毛のアンを毎日読みながら、 日々 "進化" する、オンナのエッセイです。</description>
    <language>ja</language>
    <docs>http://blogs.law.harvard.edu/tech/rss</docs>
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    <itunes:summary>ここが私の、アヴォンリー。 ここが私の、グリーンゲーブルズ。 このくだらない日々を、生き抜く "知恵" とは？ 赤毛のアンを毎日読みながら、 日々 "進化" する、オンナのエッセイです。</itunes:summary>
    <itunes:keywords>赤毛のアン,モンゴメリ,イギリス,カナダ,ピーターラビット,ビアトリクス,ポター,ターシャ,チューダー,プリンスエドワード島,スコットランド,PEI,PE,ベアトリクス</itunes:keywords>
    
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      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/103142972.html</link>
      <title>No.106 『第３５章  笑い』</title>
      <pubDate>Fri, 18 Jul 2008 21:04:55 +0900</pubDate>
            <description>    ~「生きていて、いったいなんになるの？ アン？」    ステラがアンにグチをこぼしました。    アンの答えはいつも通り立派だわ。    でも、憂鬱な雨の夜には、 心は響き合うのを忘れてしまうようです。    ごもっともな答えではなく、ステラはアンの本音を聞きたかったのよ。~２２歳ともなれば、もう大人。４年生になり、卒論で忙しくなった。ミッチやミス・クセの下宿に入り浸って、オトコの話で暇を潰す事もなくなった。夜遅くまで勉強していると、これが何になるんだろうと何度も考え...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　<br /><br /><br />　　　～<span style="color:#FF3232;">「生きていて、いったいなんになるの？　アン？」<br />　　　　<strong>ステラ</strong>が<strong>アン</strong>にグチをこぼしました。<br /><br />　　　　アンの答えはいつも通り立派だわ。<br />　　　　でも、憂鬱な雨の夜には、　心は響き合うのを忘れてしまうようです。<br /><br />　　　　ごもっともな答えではなく、ステラはアンの本音を聞きたかったのよ。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳ともなれば、もう大人。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">４年生になり、卒論で忙しくなった。</span><br /><br /><span style="color:#FF00CB;">ミッチ</span>や<span style="color:#FF00CB;">ミス・クセ</span>の下宿に入り浸って、オトコの話で暇を潰す事もなくなった。<br /><br /><br />夜遅くまで勉強していると、<span style="color:#0000CB;"><span style="font-size:125%;">これが何になるんだろう</span></span>と何度も考えてしまう。<br /><br />そりゃ、できることなら<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">立派な卒論</span></span>を書いて褒められたいが、<br />私の脳ミソじゃ無理なのは明白。<br /><br />とにかく、提出することに意義があるのだ。<br /><br />卒業させてもらうにはとりあえず、卒論をやっつけねばならないと、<br />私は自分に言い聞かせる。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">しかし、蒸し暑い雨の夜、　煮詰まった頭で私は悩んでしまう。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">これが何になるんだろう…</span>　<br /><br />立派な業績を残した、偉大な学者達の考えをただコピーしているだけだ。<br /><br /><span style="color:#006598;">新しい論理はおろか、自分の解釈で光をあてるなんて…</span>　夢のまた夢。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">頭が疲れると、学生バンドの<span style="font-size:125%;">ライブ</span>に私はたびたび足を運んだ。</span><br /><br /><span style="color:#006500;">忘れようとしても思い出される卒論の事…</span>　ストレスのせいか、舌がヒリヒリする。<br /><br />脳ミソが痺れる音量は、そんなウサを忘れさせてくれるからだ。<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">ところが今夜のバンドは…</span>　ほんとに、まぁ、　あまりにひど過ぎる。<br /><br />これでは逆にウサが溜まってしまう。<br /><br />オリジナル曲をやるバンドはなく、ほとんどは好きなバンドや曲のコピーだ。<br /><br />そういうのに限って、まず<span style="color:#006500;">自分が楽しんで演る事をモットーにしている</span>、<br />などと平気で言うから腹が立つ。<br /><br /><span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">ハモらないビートルズ</span></span>や、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">音がデカイだけのロック</span></span>を聴かされる身にも<br />なってくれや…。<br /><br />この人達は自分が楽しめればいいのであって、これが何になるのかと<br />自分に問う事もなく、苦しむこともないのだろう。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">設備もミキサーもボロのライブハウス。　それに見合ったバンドの迷演奏。</span><br /><br />この暑いのに、エアコンはダウンする始末。<br /><br />機材と照明と出演者の熱気でむせ返る中、店のマスターは涼しい顔で打ち水を<br />始めたが、窓際の客はびしょ濡れ。　<span style="color:#006500;">それが汗のせいか、打ち水なのか…。</span><br /><br />マスターは苦笑しながら、演奏中の必死の面々には目もくれず、<br />ステージ前の床をのんびり拭き始めた。<br /><br /><span style="color:#006598;">あんまり見られん絵よなぁ…</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ビートルズのコピーバンド</span>は、最初のコーラスの第一声からハモれていない。<br /><br />それ以前に声が潰れ、メロディーになっていない。<br /><br />そして最後まで、　とうとうハモリは聴けなかった。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ヘビメタバンドは…</span>　リズムはおろか、チューニングさえ合っていない。<br /><br />聴いている方が "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#326598;">ヘビー</span></span>" だ。<br /><br />弾けないんなら、せめて最後はギターをブチ壊して、大暴れしてよ。<br /><br /><span style="color:#006598;">そしてそれを最後に、音楽はヤメて学業に専念して…。　お願いだから…</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は耐えられなくなって、外に出た。</span><br /><br />"<span style="color:#9800CB;">佐竹</span>" は、軽く耳栓をしているから平気で居られるのだ。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">名曲は誰がやっても名曲でございますよ。　迷演奏の名曲でございます</span>」<br />と、一人でウケている。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は、アンのご立派な見解を思い出していた。</span><br /><br />数々の名曲を生み出した、偉大なるビートルズ。<br /><br />彼らの曲をコピーすることで、彼らが創り上げた音楽や感じ方を引き継いで<br />いけるのだから、　<span style="color:#006598;">迷演奏にも価値があるってことかしら…</span><br /><br /><span style="color:#333333;">いや、そうではないらしい。</span><br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">お嬢様！　ご覧下さいませ！</span>」<br /><br />佐竹が爆笑している。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">本気で唄っておられるのに、ぜんぜんハモっておりませんよ。<br /><br />　いやぁ～　来て良かった。　こんなに笑わせてもらえるとは…<br /><br />　この世に笑いがある限り、生きている甲斐があったというものでございます</span>」<br /><br /><br />そんな佐竹の "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#9800CB;">一言</span></span>" で、私はどうにか "<span style="color:#006500;">ヘビー</span>" な気持ちを持ち帰ることなく、<br />むしろ、<span style="color:#CB0098;">何かしらほっとした気持ち</span>で家に帰り着いたのだった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">確かに…　何事も笑いに変える能力は、価値無きごときものに価値を見出すのだ。</span><br /><br /><span style="color:#CB0065;">そういう自分だって、なんぼのモンなんよ～</span> って、自分を笑える事。<br /><br />思い通りにはならない人生を生き抜く知恵とは、　<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">笑って切りぬける</span></span>、<br />ってことなのだ。<br /><br /><br /><span style="font-size:127%;"><span style="color:#980098;">笑ってもらえるような卒論を書いて卒業しよう。</span></span><br /><br />私はほっと肩の力を抜いた。<br /><br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/102895630.html</link>
      <title>No.105 『第３４章  赤白水玉のお稽古かばん』</title>
      <pubDate>Mon, 14 Jul 2008 22:31:33 +0900</pubDate>
            <description>  ~ジョンの母親が亡くなりました。 そして、真相が明らかにされたのです。   なんてクソババアなんでしょう。   息子を誰にも渡したくないからって、ジャネットに   結婚を申し込まないことを誓わせるなんて。   余命半年のはずが、結局２０年近く生き永らえたものだから、   ジョンも辛かったでしょうが…   ジャネットも、余程ジョンの事が好きだったのね。~２２歳ともなれば、もう大人。１５年、 かなり長いと言っていい年月だ。その間 "一度だけしか洗濯していない" キルティングの...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF0032;"><span style="font-size:125%;"><strong>ジョン</strong></span>の母親が亡くなりました。　そして、真相が明らかにされたのです。<br /><br />　　　<span style="font-size:125%;">なんてクソババアなんでしょう。</span><br /><br />　　　息子を誰にも渡したくないからって、<strong><span style="font-size:125%;">ジャネット</span></strong>に<br />　　　結婚を申し込まないことを誓わせるなんて。<br /><br />　　　<span style="font-size:125%;">余命半年</span>のはずが、結局２０年近く生き永らえたものだから、<br />　　　ジョンも辛かったでしょうが…<br /><br />　　　ジャネットも、余程ジョンの事が好きだったのね。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳ともなれば、もう大人。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;"><span style="font-size:125%;">１５年</span>、　かなり長いと言っていい年月だ。</span><br /><br />その間 "<span style="color:#006500;">一度だけしか洗濯していない</span>" <span style="color:#CB0065;">キルティングの手提げバッグ</span>は、<br />結構<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">カワイイ</span></span>と褒められる事が多い。<br /><br />それも、何故か皆オトコだ。<br /><br />両端のどちらからでもファスナーでパックリ開閉できるようになっていて、<br />ピアノの教則本がすっぽり入るので、初めはお稽古かばんに使っていた。<br /><br /><span style="color:#333333;">柄は、赤地に白い水玉模様</span>。　…なんて、もしこれが服なら派手過ぎる。<br /><br />これを着こなせるのは<span style="color:#CB00CB;"><span style="font-size:128%;"><strong>ミッキーマウス</strong>の "オンナ" </span></span>の<span style="color:#CB0098;"><span style="font-size:128%;"><strong>ミニー</strong></span></span>と、<br /><span style="color:#0000CB;">オールディーズバンドの老けたポニーテール</span>くらいのものかしら…<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">通学には大きな黒いバッグ。　春も夏もコイツだけ。</span><br /><br />それ以外は<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span>。　正直くたびれて、色も褪せている。<br /><br />バーゲンを見る度に心が動くが、　新しいのを買ったらこの "<span style="color:#CB0065;">赤白水玉の子</span>" は<br />どうなるのか？<br /><br />きっと私は、<span style="color:#CB0065;">この子</span>を捨てちゃうに違いない。<br /><br /><span style="color:#006598;">いや…</span>　何でも捨てて始末するのが大好きだから、ゼッタイ捨てるだろう。<br /><br /><span style="color:#333333;">店頭で<span style="color:#006598;">新しいバッグ</span>を右肩に、<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span>を左肩に…、　</span>鏡の前で見比べて、<br />ため息と共に、新しい方を棚に戻す。<br /><br />新しいのと入れ替えに "<span style="color:#CB0065;">この子</span>" を捨てる自分に、気が滅入ってしまうのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ある時。　 "<span style="color:#CB00CB;"><span style="font-size:125%;">ゴウコン</span></span>" に、<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span>を下げて行った。</span><br /><br />他の女の子達は、普通に<span style="color:#9800CB;">流行のデザイン</span>とか<span style="color:#9800CB;">ブランドもの</span>とかをお伴に<br />めかし込んでるから、私みたいな<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span>は無視されるどころか、 <span style="color:#006500;">評価外</span>" だ。<br /><br />　「<span style="color:#000098;">かわいいカバンですね</span>」<br /><br />男の子のうちの一人に言われたが、私にはわかってる。<br /><br /><span style="color:#006598;">これって、褒められてんじゃないからねぇ。</span><br /><br />つまり、大学生が "<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span><span style="color:#333333;">のお稽古かばん</span>" ですかぁ、ってことで…。<br /><br />喜んでる場合じゃないのに、　<span style="color:#006598;">やっぱ…　オトコ受けいいんだわ…</span><br /><br />わかっていても、内心私は嬉しい。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">長く付き合ってきたものを捨てるには、それなりにちゃ～んとした<span style="font-size:125%;">理由</span>が要る。</span><br /><br />引っ掛けてバリッと破れるとか、お弁当に入れた<span style="color:#006500;">オカズの煮汁</span>がこっぴどく<br />こびりつくとか、　加えて、こぼれた<span style="color:#006500;">煮汁の魚臭さ</span>が抜けないとか…<br /><br />そんな決定的な事でも起こらない限り、新しいのに変えられない。<br /><br /><span style="color:#006598;">だが…</span>　そうなったらなったで、私は自責の念に駆られて落ち込むだろう。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">赤白水玉のバッグが好きでたまらん訳ではない。</span><br /><br /><span style="color:#650098;">使いものになる間は決して捨てない</span>、と約束しているのでもない。<br /><br />むしろ<span style="color:#CB0098;"><span style="font-size:125%;">新しいバッグが欲しい</span></span>と考えるのは自然なことだし、<br />取っ替えるのも<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">私の自由</span></span>だ。<br /><br />日頃から目星をつけているものが何点かあるのだが、本当は買う気など全くない。<br /><br />１０年以上も同じバッグを持ち続けると、違うバッグがある事など<br />考えられなくなるものなのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">それでも人は変わる。</span><br /><br />「<span style="color:#980098;">新しい葡萄酒は新しい皮袋にいれろ</span>」 っていうでしょ。<br /><br />新しい葡萄酒は、古い皮袋を破いてしまうから。<br /><br />でもね、　"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">まぁいいや　まだ使えるから</span></span>" と、新しい葡萄酒を古い袋に<br />いれちゃうのよ、　私は。<br /><br />そして、　破けて初めて、<span style="color:#CB0065;">赤白水玉が似合わないオンナ</span>になったと気付く。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">お気に入りと言う訳でもないのに、新しいのに変えられない。</span><br /><br />それはやはり、　<span style="color:#333333;">私は "<span style="color:#CB0065;">赤白水玉</span>" のバッグを愛しているのだ。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">もしかすると…</span>　愛するとは、捨てる理由が見つからないことなのかもしれない。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">次が見つかればそれで良い、というものでもない。</span><br /><br />捨てられないから、見つけられないのだ。　それが愛というものなのだから。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"<span style="color:#CB0065;"><span style="font-size:125%;">愛する</span></span>" とは、　自分から相手を捨てることができないってことなのだ。</span><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
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      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/101479616.html</link>
      <title>No.104 『第３３章   "亀族" 』</title>
      <pubDate>Wed, 25 Jun 2008 06:00:00 +0900</pubDate>
            <description>  ~態度をはっきりさせないままで、２０年も女を待たせる男なんて   許せないでしょ？   毅然とした態度で "根性" のあるところを見せて、   ジョンを炊きつけてやりましょうよ。   アンは思わせぶりなジョンに、復讐心を燃やすのでした。   でもジョンには、人に言えない様な事情があるのです、きっと…~２２歳の冬はホンマに寒いワ。私は "亀" に１ヶ月に一通の手紙を書き、 "亀" は３ヶ月に一通、きちんと切手を貼った封筒で返事をよこした。そうして４ヶ月目になる頃、二人で飲み...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br />　　～<span style="color:#FF3232;">態度をはっきりさせないままで、２０年も女を待たせる男なんて<br />　　　許せないでしょ？<br /><br />　　　毅然とした態度で "根性" のあるところを見せて、<br />　　　ジョンを炊きつけてやりましょうよ。<br /><br />　　　アンは思わせぶりなジョンに、復讐心を燃やすのでした。<br /><br />　　　でもジョンには、人に言えない様な事情があるのです、きっと…</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳の冬はホンマに寒いワ。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">亀</span></span>" に１ヶ月に一通の手紙を書き、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">亀</span></span>" は３ヶ月に一通、<br />きちんと切手を貼った封筒で返事をよこした。<br /><br />そうして４ヶ月目になる頃、二人で飲みに出掛けた。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;"> "亀" はちょうど穂高から帰ったところで、　山の空気がまだ、左肩あたりに<br />靄のようにかかっていた。</span><br /><br />「<span style="color:#006598;">山男歩きになってるわよ～<br />でっ、試してみた？　わたしを "<span style="color:#CB0065;">おかず</span>" にしてくれた？</span>」<br /><br />　「<span style="color:#0000CB;">忘れてた…</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">　…　…　。</span>」<br /><br />"<span style="color:#CB0065;">おかず</span>" になってみたかったのに、ガッカリである。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は "亀" が好きだった。</span><br /><br />山でどんな夢を見るのか尋ねたら、 「<span style="color:#CB0098;">寝袋の中で、寝てる夢</span>」。<br /><br />そんな事を、ごく普通に答える所が好きだ。<br /><br /><br />「<span style="color:#006598;">なんでもっと手紙くれないのよ</span>」<br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">頭の中ではうまく書けるのに、紙に書くと別モノになるから</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">その感じ、わかる…。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">飲みに行くのは安い店に決まっているし、行きも帰りも徒歩。</span><br /><br />私の大学のちゃらちゃらしたお嬢サマは、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">男友達</span></span>"をつくるなら<br />想像も出来ないくらいに "<span style="color:#006500;">貧乏くさい</span>" のがイイ。<br /><br />要するに、　 "亀" は私には分相応な "男友達" だった。<br /><br /><span style="color:#333333;">そう、男友達。</span>　男友達は、死ぬまで恋人にはならないものなのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">一方、 "亀" の方は…</span>　私の事をどう思っていたのかは分からない。<br /><br />なんにもしないって事は、私には性的魅力がないって事だろう。<br /><br /><span style="color:#006598;">この年頃の男ってのは、とりあえず何でもいいからヤリたいものなのでしょ？</span><br /><br /><br />「<span style="color:#006598;">カメ！　何かお歌を唄いなさい！</span>」<br /><br />横断陸橋の上で、 "亀" は唄った。<br /><br />スイスだかオーストリアの、古い山の歌…<br /><br /><span style="color:#980098;">恋する娘に贈ろうと、崖に咲いた黒百合を採ろうとして、若者が足を滑らせて死ぬ…</span><br /><br />そんな、ロマンチックな歌。<br /><br /><br />体が自然に動いて、私は "亀" の胸に体を預けていた。<br /><br />そして顔を上げ、小鳥のように "亀" に口づけした。<br /><br />暗くて、 "亀" の目がよく見えない。<br /><br />「<span style="color:#0000CB;">ごめん…　気が利かなくて…　女の子に恥をかかせて、ごめん…　</span>」<br /><br /><br />一瞬 "亀" が何を言っているのか、私にはわからなかった。<br /><br />そして次の瞬間。　私は "亀" をぶち殴っていた。<br /><br />「<span style="color:#006598;"><span style="font-size:125%;">キスしといて、ごめん</span>って…、　それ、なに？<br />私を好きでもなんでもないって事じゃないよ！<br /><br />何でそんなこと言うんよ！</span>」<br /><br /> "亀" はアホみたいに黙っている。<br /><br />「<span style="color:#006598;">アンタなんかねぇ、崖から落ちて記憶喪失になって、何もかんも忘れて、<br />イチからやり直ししたらエエんじゃ。<br />言うとくけど、何遍やり直してもまた崖から落ちるんじゃ。<br /><br />一生オンナとヤレんのじゃ！　<span style="font-size:125%;">アホ！　ボケ！　ハゲ！</span>」</span><br /><br /><span style="color:#980098;">我ながら素晴らしい、呪いの言葉。</span>　さぞや "亀" もビビッているに違いない。<br /><br /><span style="color:#333333;">しかし…　 "亀" の甲羅は厚かった。</span><br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">片岡って、面白いよ。　誰も言わんようなこと言う。　そこが好きだけど…<br />　僕は普通のヤツだから…</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">つまり…</span><br /><br />普通の "亀" は普通の事を言い、普通にかわいい "<span style="color:#CB0065;">女の子の亀</span>" がいいという事で、<br />それは 「<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">わたしは "亀族" ではない</span></span>」 という事に他ならない。<br /><br />私と "亀" とは、千年でも万年でも友達のままなのだろう。<br /><br />あの夜のキスは、その証。<br /><br /><span style="color:#006598;">だって、まるで兄弟同士の挨拶みたいで…。</span>　体の芯が疼かないんだもの。<br /><br /><br /><br />後日私は、 "亀" がイメージ通りの "<span style="color:#0000CB;">普通にかわいい亀族の女の子</span>" と歩くのを見て、<br />ひどく得心したのだった。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
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      <title>オススメ・スポンサーサイト「買取」</title>
      <pubDate>Wed, 25 Jun 2008 06:00:00 +0900</pubDate>
            <description><![CDATA[
<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E8%8C%B6%E9%81%93%E5%85%B7%20%E8%B2%B7%E5%8F%96&hid=35">茶道具 買取</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E9%AA%A8%E8%91%A3%20%E5%93%81%20%E8%B2%B7%E5%8F%96&hid=35">骨董 品 買取</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%20%E8%B2%B7%E5%8F%96&hid=35">ピアノ 買取</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E7%B5%B5%E7%94%BB%20%E8%B2%B7%E5%8F%96&hid=35">絵画 買取</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E9%AA%A8%E8%91%A3%E5%93%81%20%E8%B2%B7%E5%8F%96&hid=35">骨董品 買取</a>
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      <author>ads by Seesaa</author>
          </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/101332659.html</link>
      <title>No.103 『第３２章  "ミエ" 』</title>
      <pubDate>Mon, 23 Jun 2008 07:58:31 +0900</pubDate>
            <description>  ~下宿先の女主人、ジャネットは４０歳になりましたが、独身でした。   恋人のジョンが２０年もの間、結婚を申し込まないからなのです。   ジョンの母親の看病をするのが嫌で、母親が死ぬのを待っている、などと   噂する者までいました。   それでもジョンは、ジャネットの所に通ってくるのを止めないのです。   なぜ？  理由がわかれば、何か手の打ちようもあるのに…~２２歳の秋。 孤独を慰めてくれる人は誰なの？ 孤独と寂しさの匂いを嗅ぎ取る時、心が動く。 だから、孤独な人は孤独な...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF3232;">下宿先の女主人、<strong>ジャネット</strong>は４０歳になりましたが、独身でした。<br />　　　恋人の<strong>ジョン</strong>が２０年もの間、結婚を申し込まないからなのです。<br /><br />　　　ジョンの母親の看病をするのが嫌で、母親が死ぬのを待っている、などと<br />　　　噂する者までいました。<br /><br />　　　それでもジョンは、ジャネットの所に通ってくるのを止めないのです。<br /><br />　　　なぜ？　　理由がわかれば、何か手の打ちようもあるのに…</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳の秋。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#653298;">　孤独を慰めてくれる人は誰なの？<br /><br />　孤独と寂しさの匂いを嗅ぎ取る時、心が動く。<br /><br />　だから、孤独な人は孤独な人を好きになる。<br /><br /><br />　孤独のかけらもない人に憧れることがある。<br /><br />　その眩しさに惹きつけられてゆくけれど、<br /><br />　結局は理解してもらえず、離れていくもの。<br /><br /><br />　寂しさは時として、人を駆り立てる。<br /><br />　「私はここに居るよ」　そう言いたいが為に人を動かす。<br /><br /><br />　その声は小さくても…　動いた分だけ、足跡は残る…。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"<span style="font-size:127%;"><span style="color:#CB0065;">ミエ</span></span>" は目立ちたがりの女の子だ。</span>　不器量でダサイからだろうか。<br /><br />「<span style="color:#006500;">一番ダサイ服装の人を探せ</span>」と指令を下せば、ミエに会った事のない人でも、<br />おずおずと指をさして言うだろう。<br /><br />「<span style="color:#980098;">…　あのひと…　？</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">アタリです。</span><br /><br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">どうして気付かれたのか、わからないの…</span>　」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ミエはいつもより女らしく見える。</span>　まともな服を着ているせいだろうか。<br /><br />いつもは、上等な生地で縫ったダサい服を着ているのに。<br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">私が不倫しているらしいと会社で噂になってるの</span>」<br /><br />一瞬私は、この子に騙されていたのだろうかと思った。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ミエは高校時代から、 "<span style="font-size:127%;">男嫌いだ</span>" と公言していた。</span><br /><br />顔をしかめて両手をヒラヒラと振りながら…　<span style="color:#CB00CB;">男に触られたらジン麻疹が出る</span>、などと<br />いささかオーバーアクション気味だった。<br /><br /><span style="color:#006598;">器量が悪いから、興味のないような事を言っているのだ</span>と、私は思っていた。<br /><br />ミエだって、男の子に興味はあったのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">高校時代、　ミエは私になりすまして、東京あたりの男の子と文通していた。</span><br /><br />私は家に来た手紙を、学校でミエに渡す日が続いた。<br /><br />ミエは<span style="font-size:127%;"><span style="color:#CB00CB;">親が煩いから</span></span>と言っていたが、　 "<span style="font-size:127%;"><span style="color:#006532;">本物の男嫌い</span></span>" が文通したり、<br />修学旅行の時にその相手と会ったりはしない。<br /><br /><span style="color:#006500;">だが会ってから…</span>　以降、文通は自然消滅してしまった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">就職したミエは、　ＯＬになっても相変わらず不器量でダサかった。</span><br /><br />シミひとつない滑らかな白肌で、多くの欠点のうちの "<span style="color:#CB0065;">七つの難</span>" を<br />かろうじて隠していた。<br /><br />もし平安時代に生まれていれば、<span style="color:#0000CB;">卵に目鼻の下膨れ</span>…<br />絶世の美女だったに違いない。<br /><br /><br />「<span style="color:#CB0098;">会社関係の人物ではないし。　彼は大阪にいるから、目撃されるはずない。<br />要するに、周囲に感づかれるなんて有り得ないのよ</span>」<br /><br />まるで、事件を捜査する刑事の口調だ。<br /><br /><span style="color:#006598;">実際その通りだろう。</span>　段取りのいい彼女がミスを犯すとは考えられない。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">相手は６５歳の妻帯者で、　大阪でマンションの管理人をしながら、<br />歴史小説を書いているらしい。</span><br /><br />原稿の校正と清書は彼女が手伝っていて、自費出版のための費用の一部を<br />彼女が貸したそうだ。<br /><br />二人がどうして知り合ったのかは不明だが、プライドの高いミエは<br />話したがらないから、あえて聞かない。<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">そう…　誰も知りようのないことだから、ミエ…　私に知って欲しいんだよね。</span><br /><br /><span style="color:#CB0065;">不倫の噂話は "でっち上げ" かもしれない</span>と、私は思ったのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">誰にも言わないでと、ミエに約束させられた。</span><br /><br />いっそ約束を破った方が、彼女は喜んだかもしれない。<br /><br />誰にも知られず始まって、誰にも知られず終わってしまうなら、<br />それではまるで "<span style="font-size:127%;"><span style="color:#0000CB;">無かった事</span></span>" になってしまう。<br /><br />ミエは "<span style="font-size:127%;"><span style="color:#CB0065;">事実だった</span></span>" という刻印を、私の記憶の中に残しておきたかったのかもしれない。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/100755418.html</link>
      <title>No.102 『第３１章   "亀" の歩みはのろい』</title>
      <pubDate>Mon, 16 Jun 2008 23:11:34 +0900</pubDate>
            <description>  ~バレー・ロードからフィルに宛てたアンの手紙は、かなり長いです。   たっぷり "１章" あるんだから。   でも、離れている人と手紙でしか話せない事が沢山あるのだと、私は思います。~２２歳の秋。部活のつきあいで、他の大学の文化祭を見に行った。たまにはオトコのいる空気を吸っておかないと、免疫力が低下する。秋の夕暮れは早く、木立の下に設営された模擬店のテントには灯りがともって、考古学的発見に沸き立つ発掘隊の野営地のような賑やかさだった。２０歳になっていない連中を含めて、学生...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br /><br />　　～<span style="color:#FF3232;">バレー・ロードからフィルに宛てたアンの手紙は、かなり長いです。<br />　　　たっぷり "１章" あるんだから。<br /><br />　　　でも、離れている人と手紙でしか話せない事が沢山あるのだと、私は思います。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳の秋。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">部活のつきあいで、他の大学の文化祭を見に行った。</span><br /><br />たまには<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB00CB;">オトコ</span></span>のいる空気を吸っておかないと、免疫力が低下する。<br /><br /><br />秋の夕暮れは早く、木立の下に設営された模擬店のテントには灯りがともって、<br />考古学的発見に沸き立つ発掘隊の野営地のような賑やかさだった。<br /><br />２０歳になっていない連中を含めて、学生達は公然と酒を飲んでいた。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">誰とも話が合わないとわかったら、そこから先の私は社交的だ。</span><br /><br />話には尾ひれを付けて面白くもするし、見てきたような誠しやかなウソ話も得意だ。<br /><br />だが、　相手が打ち解けてくればくるほど、私の心は孤独になる。<br /><br />私が楽しませてあげてるのに、 「<span style="color:#0000CB;">あなたって、楽しい人ですね</span>」 って…、<br /><span style="color:#006500;">あんた達が私を楽しませる立場じゃないかと</span>思う。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;"><span style="font-size:125%;">類は友を呼ぶ</span>という。</span><br /><br />紹介されたＳ大の "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">亀</span></span>" は、名前通りの風体だが、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">いい目</span></span>をしていた。<br /><br /><span style="color:#006598;">上っ面だけを見る目ではないって感じ。　ぼそぼそとはっきり、物を言う人だ。</span><br /><br />「<span style="color:#9800CB;">おたくの女子大の学祭に行きましたよ。<br />　女の子が一人でいるのは情緒があっていいなぁと思うけど、あれだけ群れてると、<br />　何というか…　胸が悪くなって帰りましたよ。<br /><br />　展示はどれも<span style="font-size:125%;"><span style="color:#6500CB;">少女趣味</span></span>で、ガッカリだなぁ</span>」<br /><br /><span style="color:#333333;">私は "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">少女趣味</span></span>" と言われると、なぜか<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">カ～ッ</span></span>となる。</span><br /><br />「<span style="color:#006598;">女子大の学祭にオトコ一人で行くのが、そもそも間違いなのよ。<br />彼女に案内してもらうのが、お作法ってものよ</span>」<br /><br />負けずに言い返した。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"亀" は登山、というか…　一人で山を徘徊するのが趣味だという。</span><br /><br />山を登ったり降りたりの、何がそう楽しいのかわからんわ。<br /><br />風呂にも入らないで、土の上でよく眠れるものだ。<br /><br />「<span style="color:#006598;">ねぇ、眠れない時は、オナニーとかするの？</span>」<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">いや、しない</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">なにもしないで、ただ寝るの？</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">山の中なんだから、思いっきり声出してイケばいいのに。</span><br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">いや、もともと声は出さないんだ</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;"><span style="font-size:125%;">押され気味で "分" が悪い</span>、　私はこういうドタンバで、<br />すごくいい事を思いつく天才だ。</span><br /><br />「<span style="color:#006598;">ねえ、それじゃこうしたらどう？<br />寝袋の中で眠れない時は、わたしを "<span style="color:#CB0098;">おかず</span>" にするといいわ。<br /><br />　むちゃくちゃいやらしいこと想像していいのよ。　やりたい放題を許可します。<br />　そのかわり、どうだったかちゃんと報告すること。　ねっ？　いい考えでしょ？</span>」<br /><br />"亀" は、甲羅からめいっぱい首を伸ばして驚いた。<br /><br />そして、甲羅に隠した柔らかい腹の中から、クックッと笑う声が聞こえる。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">ありがとう。　気が向いたらそうさせて貰うよ</span>」<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">偶然にも、 "亀" の下宿は私の家に近かった。</span><br /><br />金色に輝く銀杏並木の下を抜けて、木立の茂る公園を横切れば、もうすぐ家だ。<br /><br />酔いも覚めてしまった。<br /><br /><br />「<span style="color:#006598;">寒いわ…</span>」　私が身震いすると、<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">もしかして、　きみ、トイレ？</span>」<br /><br />「　<span style="color:#006598;">…。　私の存在って、あんまりセクシーじゃないと思う？</span>」<br /><br />"亀" は苦笑していた。<br /><br />今度は顔でも笑っていたので、小さい目はすっかり肉に埋もれてしまった。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">若い男ってのは、なんでもいいから<span style="color:#0000CB;">とりあえず、女の子とヤリたいだけ</span>なんだ。<br />　<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980065;">セクシー</span></span>かどうかなんて、考えてられないよ</span>」<br /><br /><br />「<span style="color:#006598;">私のこと、押し倒したい？</span>」<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">押し倒したいよ</span>」<br /><br /><br />というところで、残念ながら時間切れ。　私の家に着いた。<br /><br />「<span style="color:#006598;">今夜、私を押し倒してるとこ想像していいよ</span>」<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">ありがとう。　やってみるよ</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">この事件以降、私達はご近所に住んでいたのに、長い間手紙の付き合いを続けた。</span><br /><br />私は郵便屋さんを煩わせることもなく、買い物ついでに下宿のお婆ちゃんに<br />手紙を渡した。<br /><br />二階の窓を見上げると、　洗濯物に混ざって、時に納豆の藁包が引っ掛けてある。<br /><br /><span style="color:#006598;">納豆が好物なんだ…</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"亀" からは、切手を貼った手紙が来た。</span><br /><br />結構なボリュームで "亀" の生態を綴ってあり、最後の締め括りには<br /><br /><span style="color:#9800CB;">　　…　一緒に酒でも飲みましょう。　キミと話していると楽しい。<br />電話が苦手なのですが、ここは電話するしかないんでしょうね。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"亀" よ…、あんたまでそんなこと言うのね。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">私を楽しませない、手も出さない、　そんな人はのろいにかけられ、<br />すべからく痛い目に遭うのよ。</span><br /><br />あんたも "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">ヨシロー</span></span>" と同じ目に遭いたくなかったら、<br />甲羅を脱いで、バッタの物マネでも何でもやって…<br /><br /><span style="color:#CB0065;">とにかく、私を心の底から笑わせてちょうだい。</span><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
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      <link>http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&amp;sid=akagenoanne-daily&amp;tid=seesaa_hotspot&amp;k=%E3%83%95%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%B3&amp;hid=35</link>
      <title>オススメ・スポンサーサイト「フコイダン」</title>
      <pubDate>Mon, 16 Jun 2008 23:11:34 +0900</pubDate>
            <description><![CDATA[
<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%20%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88%20%E6%88%90%E5%88%86&hid=35">マイクロ ダイエット 成分</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%81%86%E3%82%8B%E3%81%8A%E3%81%84&hid=35">うるおい</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%83%95%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%B3%20%E3%81%93%E3%81%A0%E3%82%8F%E3%82%8A%20%E6%9C%AC%E8%88%97&hid=35">フコイダン こだわり 本舗</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%88%20%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC&hid=35">コンタクト センター</a>&nbsp;|&nbsp;<a href="http://match.seesaa.jp/ot_listing.pl?aid=463603&sid=akagenoanne-daily&tid=seesaa_hotspot&k=%E3%82%B7%E3%82%BA%E3%83%AB%20%E3%83%95%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%B3&hid=35">シズル フコイダン</a>
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      <author>ads by Seesaa</author>
          </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/100371955.html</link>
      <title>No.101 『第３０章  ナルシズム』</title>
      <pubDate>Fri, 13 Jun 2008 11:00:29 +0900</pubDate>
            <description>  ~エスター・ヘイソーンに代わって、７月と８月の間だけ   アンはバレー・ロードの学校で教えることになりました。   アンを迎えに来たのは、最近結婚したばかりだという   中年の太った女性でした。   「私は自分に向かって言ってやったんだよ。   サラ・クローさんや、 そうしたいんなら、その金持ちのW・Oと   結婚するがいいけど、幸せにゃなれないよ。   人間、ちょいとでも愛がなけりゃ、一緒にやっていけるもんじゃない。」   それで金持ちのW・Oをフって、貧乏なトーマスと...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br />　　～<span style="color:#FF3232;">エスター・ヘイソーンに代わって、７月と８月の間だけ<br />　　　アンはバレー・ロードの学校で教えることになりました。<br /><br />　　　アンを迎えに来たのは、最近結婚したばかりだという<br />　　　中年の太った女性でした。<br /><br />　　　「私は自分に向かって言ってやったんだよ。<br />　　　サラ・クローさんや、　そうしたいんなら、その金持ちのW・Oと<br />　　　結婚するがいいけど、幸せにゃなれないよ。<br />　　　人間、ちょいとでも愛がなけりゃ、一緒にやっていけるもんじゃない。」<br /><br />　　　それで金持ちのW・Oをフって、貧乏なトーマスと結婚したんですって。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２２歳になってもこんな私…</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">夢を見て、夜中に目が覚めた。　<span style="color:#006598;">どうせ夢だ、気にせんとこっ</span>…　二度寝した。</span><br /><br /><br /><span style="color:#000000;">しばらくして、京都の "柏木さん" から手紙が届いた。</span><br /><br />「<span style="color:#CB00CB;">一ヶ月ほど前ですが、ヨシロー君が夜中に車で事故をしました。<br />ガードレールに激突し、朝まで発見されなかったそうです。<br />幸い大事にはならず、今は元気です</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">正夢だったのかしら…　あの夜の夢は…。</span><br /><br />"<span style="color:#CB0065;">ヨシロー君</span>" が田舎道の急カーブで、曲がり角にまつられている "地蔵堂" に<br />突っ込む、という夢だった。<br /><br />ひっくり返ったお地蔵さんの頭突きで割れたフロントガラスが飛び散っている。<br /><br />ヨシロー君は額から血を流して、死んだようにぐったりしていた。<br /><br />私ったら、まだ彼に未練があるのだろうか。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">柏木さんの手紙にはこんな事も書かれていた。</span><br /><br />「<span style="color:#CB00CB;">でも、妙な噂があります。　事故以来 "<span style="color:#006500;">あっちの方</span>" が…<br />つまり、男としての "<span style="color:#006500;">機能</span>" が具合の悪い事になってるという噂です。<br /><br />本人から聞いたと言う人もいるそうです。　よしこさん、何か聞いていますか？」</span><br /><br /><span style="color:#006598;">うんにゃぁ　なんも聞いてない…<br /><br />だって、私は彼とはとっくにお別れしているし。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">それにしても…</span><br /><br />オ～　ホッ　ホッ　ホッ！　これぞ、<span style="color:#006500;">執念の正夢攻撃</span>とでも言おうか。<br /><br />ヨシローを諦めはしたが、別れても潜在意識の中では恨んでいるとは、<br />我ながらなかなかアッパレな執念である。<br /><br /><span style="color:#006598;">　ヤツは私の想いを無視し、手紙の返事もよこさない。<br /><br />　下宿に押しかけて行っても手を出さないから、こんなことになるのよ。<br /><br />　今から後悔しても手遅れよ。　いい気味だ。<br /><br />　私の方から好きになってあげたのに。<br /><br />　私を好きになってくれない男はすべからく憎まれて、痛い目に遭うのよ。<br /><br />　思い知ったか、ヨシロー。　復讐してやったような気分だわ。</span><br /><br />私にとって "男" とは愛する対象ではなく、自分を愛してくれる者でなければ<br />ならないの。<br /><br />「好きだよ」　「かわいいよ」<br /><br />最低でも１００回くらいは言ってくれる人が必要なのだ。<br /><br />少なくとも２２歳の小娘にはね。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">心理学の講義で教えられた。<br /><br />こういうのをナルシズム、自己性欲、あるいは自己愛と呼ぶのだそうだ。</span><br /><br />美少年ナルキッソスに恋いこがれて、片想いのままもだえ死んだ妖精にでも<br />なったつもりで、恋に狂ってみたけれど…<br /><br />所詮私は未熟で、他人を愛することを知らなかったのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#CB0065;">あの時、　私は本物の恋をしていると思った。<br /><br />だけど、何にもわかっていなかった。</span><br /><br /><br /><br />信じよう、　いつか笑い飛ばせる日が来ることを。<br /><br />こうしている間も、現在はかたっぱしから過去になる。<br /><br />"詩人が夢みた恋" は終わり、今はさよならを言うだけ。<br /><br />笑って過ごせる日のために。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/100184988.html</link>
      <title>No.100 『第２９章  海の夜明け』</title>
      <pubDate>Wed, 11 Jun 2008 16:25:28 +0900</pubDate>
            <description>  ~ギルバートはダイアナの結婚式に参列する為、   アヴォンリーへ帰ってきました。   時は移りゆき、人は変わり、アヴォンリーはさみしくなりました。   ギルバートは、本当にクリスティーンと付き合っているのでしょうか。   彼は、アンのことを諦めてはいない… そんな気がするのです。   気付いていないのは、アンだけなのではないでしょうか。~２１歳の夏休み。"キヨコが暮らした島" を見たくてここにやって来たのだが、なんだかガッカリしてしまった。キヨコの知り合いだ、と島の人々に...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br />　　～<span style="color:#FF0032;">ギルバートはダイアナの結婚式に参列する為、<br />　　　アヴォンリーへ帰ってきました。<br /><br />　　　時は移りゆき、人は変わり、アヴォンリーはさみしくなりました。<br /><br />　　　<strong>ギルバート</strong>は、本当に<strong>クリスティーン</strong>と付き合っているのでしょうか。<br />　　　彼は、アンのことを諦めてはいない…　そんな気がするのです。<br /><br />　　　気付いていないのは、<strong>アン</strong>だけなのではないでしょうか。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳の夏休み。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"キヨコが暮らした島" を見たくてここにやって来たのだが、<br />なんだかガッカリしてしまった。</span><br /><br />キヨコの知り合いだ、と島の人々に歓迎され、獲れたての魚料理なんぞを<br />ご馳走になり、お土産まで頂いてる場面を想像して、<br />良い気分になっていたのだが…<br /><br /><span style="color:#000098;">青いうわっぱりの女</span>には、知らんぷりされてしまった。<br /><br />頼みの<span style="color:#CB0098;">ミス・クセ</span>は岩場で転んだ時の打ち身のせいで、釣りは断念。<br /><br />獲れたての魚のさしみは、幻と消えた。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">田舎とは、住み心地がよいものとは言えないようだ。</span><br /><br />田舎暮らしに憧れる人が増え、夢を叶えた人々の暮らしぶりが紹介されているが、<br />人付き合いに関する情報が少なすぎる。<br /><br />良いことばかり書かれているが、本当のところはどうなんだろうか。<br /><br />余所者は、しょせん余所者扱いしかされないような気がするのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;"><strong>赤毛のアン</strong>の舞台である<strong>アヴォンリー</strong>でも、余所者は変人扱いだ。</span><br /><br />村の人々は余所から移って来たというだけで、色眼鏡で見る。<br /><br />格好の "<span style="color:#006500;">噂話の種</span>" なのだ。<br /><br /><br />アンの家で家政婦をしているスーザンの言うには、　噂話やゴシップの情報を<br />知りたがるのは、<span style="color:#CB0065;">まっとうな婦人である証拠</span>なんだそうだ。<br /><br />田舎暮らしを楽しんでいる人々の多くは、家族ぐるみで移り住んでいるようだ。<br /><br />言い換えれば、一人では田舎暮らしは到底楽しめないと言うことなのだろう。<br /><br />キヨコが毎夜、涙で枕を濡らしたのも判る気がする。<br /><br /><br />そう言えば、　島での楽しい思い出をキヨコから聞いたことがない。<br /><br /><span style="color:#006598;">辛い思いをしてまで、島に居たのは何のためだったんだろう…</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は、夜明け前に起きて海岸に出た。</span><br /><br />海の夜明け、　空は徐々に日の光に溢れ、色づく。<br /><br />波はまるで、生きて呼吸しているかのようだ。<br /><br />だが、海は何も答えてはくれない。<br /><br /><br /><span style="color:#9800CB;">佐竹</span>がゆっくりと、波打ち際に向かって歩いている。<br /><br />靴を波が取り囲み、一気にズボンの裾まで濡らしていく。<br /><br />私は大声で佐竹を呼んだが、振り返らない。　心臓が少し震えた。<br /><br />「<span style="font-size:large;"><span style="color:#006598;">か　ず　ま　！　</span></span>」　たまらなくなって、名前を呼んだ。<br /><br />佐竹が振り向いた。　私の心臓はホッとする。<br /><br />佐竹が私の所まで歩いて来る時間が、ひどく長く感じられた。<br /><br />　「<span style="color:#CB00CB;">早起きでございますね</span>」　<br /><br /><span style="color:#006598;">そうよ、　今日、帰るのだから。</span><br /><br /><br />　「お<span style="color:#9800CB;">嬢様…　私は、かつてこの島に死ぬためにきたのでございます。<br />　岩場で引き揚げた "どざえもん" は私自身だったのだろうと思います。<br />　死ねば、私もあのような姿になったのですから。<br /><br />　あの時キヨコ様に大声で怒鳴られ、お手伝いをし…<br />　気分が悪くなりまして…　死ぬ気が失せました</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">佐竹…、　意気地がなくてよかったわね</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">面目なさそうな佐竹の笑顔をみながら、私は思った。</span><br /><br />何かの役に立ったかどうかなんて、ずっとずっと後にならなきゃ<br />判らないものなのだろう。<br /><br />その場で結果の出ることは、その場で終わりなのだ。<br /><br />いつ、何処で、何をしたかも忘れたような事が、　ずっと先になって<br />自分の知らない場所で花咲く。<br /><br />そんな瞬間をこの目で見たいと思う。<br /><br />口惜しくて、残念だけど、　そんなものなのかもしれない。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/99630654.html</link>
      <title>No.99 『第２８章  "青いうわっぱり"の女 その２』</title>
      <pubDate>Fri, 06 Jun 2008 20:23:36 +0900</pubDate>
            <description>  ~ダイアナは後５日で結婚です。   人は変わっていくものと判ってはいても、   アンは寂しさを隠しきれませんでした。   そして、アンとギルバートは…   アンがギルバートの申し込みを断った事は、村中に知れ渡っていました。   物事を動かしているしくみのどこかに、狂いが生じたような悲しさを、   マリラは感じるのでした。~２１歳の夏休み。"青いうわっぱり" の女は、郵便局に戻っていた。スラックスと、青いうわっぱりの下に隠された体はむっちりとして、よく見ると目鼻立ちの整った...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF6532;"><strong>ダイアナ</strong>は後５日で結婚です。<br />　　　人は変わっていくものと判ってはいても、<br />　　　<strong>アン</strong>は寂しさを隠しきれませんでした。<br /><br />　　　そして、<strong>アン</strong>と<strong>ギルバート</strong>は…<br /><br />　　　アンがギルバートの申し込みを断った事は、村中に知れ渡っていました。<br /><br />　　　物事を動かしているしくみのどこかに、狂いが生じたような悲しさを、<br />　　　<strong>マリラ</strong>は感じるのでした。</span>～<br /><br /><br /><br />２１歳の夏休み。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"<span style="color:#0000CB;">青いうわっぱり</span>" の女は、郵便局に戻っていた。</span><br /><br />スラックスと、青いうわっぱりの下に隠された体はむっちりとして、<br />よく見ると目鼻立ちの整った、男好きのする美人である。<br /><br />しかし、あまりに強い眼力のせいで、せっかくの美貌も帳消しになり…<br /><br />預金を引き出しに来た客は、何か悪い事をしている様な、<br />後ろめたい気分になるのだった。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">島では面倒見がいいと評判の彼女。</span><br /><br />てきぱき出来ない人を、見て見ぬ振りができないのだ。<br /><br />ひとたび彼女が動き出すと物事は驚くほど早く、彼女のペースで進んだ。<br /><br />彼女が人の世話になるなど有り得ないのだが、それでも借りたものはお礼を添えて<br />きちんと返し、義理を欠くことはなかった。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">そんな彼女にとって、 "<span style="color:#CB00CB;">田辺夫人</span>" とのことは "<span style="font-size:127%;">汚点</span>" ともいえる思い出だった。</span><br /><br />夫人とは "お互いに" 世話になったと言える間柄だったのに、礼を言わないどころか、<br />見送りにも行かなかったからである。<br /><br />だがそれには、彼女なりの理由があった。<br /><br />　<span style="color:#006500;">そもそも、田辺夫人が彼女に何の相談もなく、島を出て行ったのがいけないのだ。<br /><br />　"何も聞いていない"　これほど腹の立つことはない。</span><br /><br />彼女にとって、それは裏切りに等しいことなのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">診療所が、郵便局の隣を借りて診察を始めるようになってからは、<br />彼女はしょっちゅう、診療所に入り浸っていた。</span><br /><br /><span style="color:#006500;">　田辺夫人は、用もないのに診療所に来る連中に、気前良くふるまい過ぎる。<br /><br />　野菜や魚を診療代に受け取るのも考え物だ。<br /><br />　島の連中には、睨みをきかせる必要があるのに。</span><br /><br />しかし、鶴のように痩せた伏目がちな彼女に、荒っぽい島の連中に言い返す勇気など<br />あるはずがない。<br /><br />上品で町の匂いのする田辺夫人は、守ってやらねばならない<br /> <span style="color:#CB00CB;">"頼りない" 存在</span>だったのだ。<br /><br />その代わり彼女は、島の連中の噂話や悪口を田辺夫人にブチまけて、<br />大いにストレスを解消したのだった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">田辺夫妻は月に何度か土曜日に島を出て、何でも日曜日の礼拝とやらに出るために、<br />本土に出掛けた。</span><br /><br />好奇心から彼女は一度、礼拝に連れて行ってもらったことがあった。<br /><br />土曜日、三人は本土に渡り、その夜は田辺夫妻の家に泊まることになった。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">夫妻の家は、細くて急な坂道を登りきった山の斜面に建っていた。</span><br /><br />日当たりの良い島育ちの彼女には、こんな湿っぽく陰気な家に<br />よく住んでいられるものだと思う。<br /><br />　「<span style="color:#CB00CB;">山の木におるんでしょうねぇ、むかでが沢山出るんですよ</span>」<br /><br />田辺夫人は、さも嫌そうに体を縮めて震えてみせた。<br /><br />どうやら田辺医師は、家を選ぶに際しても、妻に意見があるとは<br />思いもよらないらしい。<br /><br />台所が暗い家なんて、まっとうな主婦なら決して選びはしないだろうから。<br /><br />「<span style="color:#006500;">奥さんは先生に、もっと口煩く言ってやった方がいい</span>」 と彼女は思うのだった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">教会は、駅前の大通りを横切って南北に流れる小川のほとりにあった。</span><br /><br />西洋風の尖った屋根の先端に十字架が青空に向かって立つ、<br />絵に描いたような当たり前の教会だ。<br /><br />半円のガラスがはめ込まれた、両開きの重々しい木のドアを入る。<br /><br />床も椅子も窓枠も全てが木造で、島のお寺と変わりはないが、<br />派手な飾りも仏像さえもない、　貧乏臭い教会だった。<br /><br /><span style="color:#006500;">　こんなお寺にお布施を払うとは、田辺夫人も人が良すぎる。<br /><br />　オルガン弾きは間違えてばかりいる。　これでは拍子抜けだ。<br /><br />　「練習さえすれば、アタシの方がマシに弾ける…」<br /><br />　それに、牧師の説教。　島の坊さんはマイクなんぞ使わなくても、よく声が通る。<br /><br />　やはりお経をあげてもらわないことには有難味がない。</span><br /><br />どうも "教会" とは頼りのないものと、しみじみ思うのだった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"青いうわっぱり" の女は、事務机の引き出しを開けた。</span><br /><br />鍵をかけ、何年も閉めたままの引き出しだった。<br /><br />中には、田辺夫妻からの手紙が何通か入っていた。<br /><br />一度も返事を書いたことはないし、今後もそのつもりはなかった。<br /><br />「<span style="color:#006500;">ワタシなんぞは相談相手にならんらしいわ</span>」<br /><br /><span style="color:#333333;">それが、彼女の結論だった。</span><br /><br /><br />「<span style="color:#006500;">荒くれ者の多い島で暮らしていけたのは、誰のおかげだと思っているのやら…<br />馬鹿にしてくれるじゃないか</span>」<br /><br /><span style="color:#006500;">田辺夫人には世話になったが、　その分おつりが出るくらいお返しはした。<br /><br />自分を捨てた者は、こっちから捨ててやる。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"<span style="color:#0000CB;">青いうわっぱり</span>" の女は、引き出しから手紙を取り出すと、<br />書き損じた伝票と一緒にシュレッダーにかけた。</span><br /><br />紙が切り裂かれる轟音と共に、彼女は長年の躊躇いを捨てた。<br /><br /><span style="color:#CB0065;">　別れは寂しい…</span><br /><br />シュレッダーの音は、そんな悲鳴にも聞こえた。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/98966058.html</link>
      <title>No.98 『第２７章  "青いうわっぱり" の女』</title>
      <pubDate>Mon, 02 Jun 2008 13:32:59 +0900</pubDate>
            <description>  ~アンは、ロイヤル・ガードナーに恋をしていると思い込んでいました。   というより、"思い込もう" としていたのです。   でも、どうかしら？ ロイにはユーモアがわからないのよ。   ギルバートとは笑いあえた事が、ロイにはさっぱり理解できないのです。   ユーモアのわからない人と人生を共にするのは…   さて、どうしたものでしょうか。~２１歳の夏休み。診療所があったという建物は、 港に近い、郵便局の隣にあった。コンクリートの箱のような造りで、玄関の引き戸は埃をかぶって、今...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF6500;"><strong><span style="color:#CB0098;">アン</span></strong>は、<strong>ロイヤル・ガードナー</strong>に恋をしていると思い込んでいました。<br />　　　というより、"思い込もう" としていたのです。<br /><br />　　　でも、どうかしら？　ロイにはユーモアがわからないのよ。<br />　　　<strong>ギルバート</strong>とは笑いあえた事が、ロイにはさっぱり理解できないのです。<br /><br />　　　ユーモアのわからない人と人生を共にするのは…<br />　　　さて、どうしたものでしょうか。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳の夏休み。</span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;"><br />診療所があったという建物は、　港に近い、郵便局の隣にあった。</span><br /><br />コンクリートの箱のような造りで、玄関の引き戸は埃をかぶって、<br />今は住む人もないことを物語っている。<br /><br />隣の郵便局も、入り口の壁に "<span style="color:#CB0065;">赤い〒マーク</span>" がついているだけのことで、<br />民家と変わりはない。<br /><br />ふと、葉書でも買ってみようと思い、中に入った。<br /><br />カウンターの向こうには、局長らしき男と半袖の "<span style="color:#0000CB;">青いうわっぱり</span>" を着た<br />中年の女が一人いるきりだった。<br /><br />「<span style="color:#006598;">隣に診療所があった、って聞いたことがあるんですけど…<br />　ご存知ですか？</span>」<br /><br />愛想笑いもしない女の顔に、明らかな警戒の色が読んで取れた。<br /><br />　「<span style="color:#0000CB;">さぁ…　知らんねぇ…</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">１０年ほど前までは、ご夫婦で診療所をしておられたと…</span>　」<br /><br />女は、<span style="color:#0000CB;">島のもんじゃないから知らない</span>、ということだった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">郵便局の向かい側には、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB00CB;">おしゃれの店</span></span>" の看板のかかった洋品店がある。</span><br /><br />そっと戸を開けて 「<span style="color:#006598;">こんにちは</span>」 と声を掛けるが、コトリとも言わない。<br /><br />奥の住居と思われる方へ向かって大声を出すが、依然答えがない。<br /><br /><br />　「<span style="color:#0000CB;">おばちゃんは、昼にならんと帰らんよ</span>」<br /><br />振り向くと、先ほどの "<span style="color:#0000CB;">青いうわっぱり</span>" が立っている。<br /><br />洋品店の主人は、漁の水揚げの手伝いに出ているそうだ。<br /><br />私はこそこそと店を出て、更に歩きだした。<br /><br />時折振り返ると、まだ "青いうわっぱり" がこちらを見ている。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">両側に民家が軒を並べるなだらかな坂を登ると、 "<span style="font-size:125%;">食堂</span>" と書かれたのれん。</span><br /><br />商品見本を入れるべきガラスケースに、なぜか色あせた黄色い熊の縫いぐるみが<br />押込まれている。<br /><br />滑りの悪い引き戸を開けて、中に入る。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">いらっしゃい</span>」<br /><br />皺だらけのじいさんが、タバコをふかしながら店番をしていた。<br /><br />「<span style="color:#006598;">あの…　１０年ほど前、診療所があったと聞いてるんですけど、<br />なにかご存知では…？</span>」<br /><br />じいさんは、覚えていた。　ふと懐かしそうな表情を見せたからだ。<br /><br /><br />　「<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">おとうさん、何しとるん？</span>」</span><br /><br /><span style="color:#333333;">奥から声がして、私はたまげた。</span>　"青いうわっぱり" の女だった。<br /><br />　「<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">おとうさん、早う仕込みしてしまわんと</span></span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">なんで私の先回りができるのだろう？</span><br /><br />というより、なぜ私をつけてきたのだろうか。<br /><br />　「<span style="color:#0000CB;">島には月に一回、医者が巡回してくるだけ。　若いもんは出て行って…<br />　年寄りばかりじゃ金儲けなんかできんでね。<br /><br />　よそから来てこの島には住めるもんかね</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">そんなつもりでは…</span>　またしても私は訳のわからないまま、店を追い出された。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">診療所の夫婦を懐かしむ、島の人々の暖かい反応を期待していたのに、<br />いったいこれはどういう事なんだろう。</span><br /><br />あの "<span style="color:#CB0098;">キヨコ</span>" が、島暮らしが辛くて逃げ出したとも思えないし、<br />少なくとも私は、<span style="color:#006500;">医師の夫が高齢になって退いた</span>、と聞いていた。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私は、坂を登り切った見晴らしの良い場所に立った。</span><br /><br />港は海に向かって大きく開かれているのに、人の心の近寄りがたさに、<br />ふっとため息が漏れた。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">娘の事は気にせんとって下さい</span>」<br /><br />背後から声がした。　食堂のおじいちゃんだ。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">あれは、よそもんを嫌いよります</span>」<br /><br /><br />おじいちゃんの話によると、　島から出ていく者が増える事を懸念し、<br />住む人のいない家を貸して田舎暮らしをしたい本土の連中を呼び込もう、<br />という村役場の企画があったそうだ。<br /><br />ツアーを組んで視察に訪れる人々を、島を挙げて歓迎したが、<br />結局はそれっきりで終わってしまった。<br /><br />住み着いた者はたった一家族。　子沢山の、韓国系の母子家族だったそうだ。<br /><br />　「<span style="color:#9800CB;">診療所の先生と奥さんは、ええ方でしたなぁ。<br />　ワシらは、ずっと住みついてくれるもんと思うとったがね。<br /><br />　娘もそのつもりでお二人とは仲良うしとったもんで、帰られると判った時は<br />　がっかりして、見送りにも出んかったですよ</span>」<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">海から吹く風に聞いてみる。　<span style="color:#006598;">この島で余生を過ごせるかしら…</span>　と。</span><br /><br />私には、薄汚れた港町にしか見えない。<br /><br />この風景から、何かのインスピレーションを感じることもない。<br /><br /><br />だが反対に、　知らない場所なのに、何故かそこを好きになることがある。<br /><br /><span style="color:#CB00CB;">前に来たことがあるような、懐かしい気持ちになる…</span><br /><br />誰でも一度は、そんな経験をしたことがあるのではないだろうか。<br /><br />残念ながら私にとって、この島は "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">ナシ</span></span>" だったのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">キヨコはただ、生まれ育った所に帰りたかったのだ。</span><br /><br />それは誰にも止められないし、責められることでもない。<br /><br />"青いうわっぱり" の落胆した気持ちもわかるが、それは理不尽な逆恨み。<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">話をすれば、わかるのに…<br /><br />寂しいけれど、　お互いの幸せを祈って、手を振り、別れていけるのに。</span><br /><br />私はただ、それを残念に思った。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
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      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/98594568.html</link>
      <title>No.97 『第２６章  佐竹が見えた日』</title>
      <pubDate>Fri, 30 May 2008 21:01:57 +0900</pubDate>
            <description>~ギルバートが夢中になっているという噂のクリスティーンは、アンが持っていないもの全てを備え持っているように見えました。薔薇色の頬、艶やかな黒髪、すみれ色の瞳…ギルバートを愛することはできない、と言ったアンなのに、どうして彼女のことが気になるのでしょう。~２１歳の夏休み。まだ暗いうちから、 "ミス・クセ" は釣り場に向かっていた。昨日、ホステルの主人から聞いた岩場までは、３０分程かかる。釣竿にビクンと伝わる獲物の動きを思うと、わくわくしてくる。日が昇るに従って、先客の釣り人達の...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br />～<span style="color:#FF0000;"><strong>ギルバート</strong>が夢中になっているという噂の<strong>クリスティーン</strong>は、<br /><strong><span style="color:#CB0065;">アン</span></strong>が持っていないもの全てを備え持っているように見えました。<br /><br />薔薇色の頬、艶やかな黒髪、すみれ色の瞳…<br /><br />ギルバートを愛することはできない、と言った<strong><span style="color:#CB0065;">アン</span></strong>なのに、<br />どうして彼女のことが気になるのでしょう。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳の夏休み。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">まだ暗いうちから、 "<span style="color:#CB0098;">ミス・クセ</span>" は釣り場に向かっていた。</span><br /><br />昨日、ホステルの主人から聞いた岩場までは、３０分程かかる。<br /><br />釣竿にビクンと伝わる獲物の動きを思うと、わくわくしてくる。<br /><br />日が昇るに従って、先客の釣り人達の姿が遠くに見え始めた。<br /><br /><span style="color:#CB0098;">遅れをとっては</span>、と足を速める。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#653298;">それにしても、よしこさん、　最近ますますおかしい…</span><br /><br />"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">ヨシロー君</span></span>" に夢中になっていた時は、恋に狂って頭がおかしいのだと<br />思っていたが、　彼を諦めてからも別の意味でオカシイ。<br /><br />　「 <span style="color:#653298;">"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">佐竹</span></span>" って…　だれよ…？ </span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">昨日、島に来る間も宙に向かって話をしていた。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">荷物は佐竹に持たせているから</span>と、自分はバッグひとつ下げたきりだ。<br /><br />どう考えてもイカれている。<br /><br />今朝も蒲団から顔だけ出して、妙な事を言っていた。<br /><br />「<span style="color:#006598;">一人で釣りに行くのは危険だから、佐竹にお供をさせるわ</span>」<br /><br /><span style="color:#653298;">寝ぼけていたのだろう…</span>　ミス・クセは、よしこについて考えるのを打ち切った。<br /><br />適当なポイントを見つけたのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">正直、独りで釣りに行ったことはない。</span><br /><br />以前カレと、日本海の荒波の打ち上げる岩場に行った事があった。<br /><br />ライフジャケットを身に付け、カレから教わった通りの手順を確認しながら、<br />一心に海に向きあった。<br /><br /><span style="color:#CB0065;">カレがいなくても釣りくらい行ける</span>ってことを、自分自身に証明するのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#656500;">ミス・クセはまるで物分りのいい姉のように、カレが黒髪の同級生と旅行に行く事を<br />知りながら、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">見て見ぬ振り</span></span>" をした。</span><br /><br />行き先が、<span style="color:#006500;">釣り場とは縁のない所</span>だったからだ。<br /><br /><span style="color:#656532;">あの黒髪の同級生は、一緒に釣りをするタイプではない。<br /><br />日に焼けるとか、餌が気持ち悪いとか言う女に決まっている。</span><br /><br />そう結論を出すと、いくらか勝ったような気分になった。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">それにしても "アタリ" が来ない…　</span>一匹の小魚でさえも引っかからない。<br /><br />ミス・クセは、淡々と "引き" を待っていた。<br /><br />日は高く昇り、ライフジャケットの下で、胸の谷間を汗が流れるのがわかる。<br /><br />たまらずジャケットを脱いだ。<br /><br /><br />「<span style="color:#CB0065;"><span style="font-size:127%;">カカッタ！</span></span>」<br /><br /><span style="color:#CB0098;">大物だっ</span>、と思った瞬間、足を取られた。<br /><br />岩に肩を強かにぶつけ、そのまま水中に頭から落ちていく。<br /><br />浅いはずの水中から何故か、起き上がる事ができない。<br /><br />始めから海水を吸い込み、鼻も喉も痛い。<br /><br /><br /><span style="color:#653298;">溺れる…</span>　<br /><br /><br />その時、体がふわりと持ち上がった。　真夏の日差しが眼に飛び込む。<br /><br />「<span style="color:#980098;">大丈夫でございますか？</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">初老の男性だった。　心配そうにミス・クセを見つめている。</span><br /><br />「<span style="color:#980098;">よしこお嬢様に申し付けられて、お供してようございました</span>」<br /><br />ミス・クセは、あっけに取られて言った。<br /><br />　「<span style="color:#653298;">あなた…　佐竹…？</span>」<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ミス・クセは、佐竹に負ぶわれて帰って来た。</span><br /><br />魚は釣れなかったが、そんなことはどうでも良かった。<br /><br />"佐竹" が見えたのだから。<br /><br />こうしておんぶされ、今は佐竹が点てたコーヒーを啜って<br />人心地ついていることに、　なんの違和感もない。<br /><br />今までどうして存在が見えなかったのか。　ますます不思議だ。<br /><br /><span style="color:#653298;">また次の瞬間には、見えなくなってしまうのかしら…</span><br /><br />いいえ、　一度見えたら、その存在を知ってしまったら、もう二度と<br />それを無視することも、無かったことにも出来ないのだ。<br /><br /><span style="color:#006500;">佐竹が死んだ</span>、と口にするまでは…。<br /><br /><br />「<span style="color:#980098;">いやいや、ドザエモンを引き揚げた岩場で、今度は生きたお嬢様を連れ帰る<br />ことができて、ホントにようございました</span>」<br /><br />当の佐竹は満足そうに、ミス・クセに持参した漬物を勧めていた。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/98285739.html</link>
      <title>No.96 『第２５章  私のそまつな想像力』</title>
      <pubDate>Wed, 28 May 2008 13:04:31 +0900</pubDate>
            <description>  ~アンはついに、夢に描いていた通りの "王子様" に巡り会います。   その名も、ロイヤル・ガードナー。   フランス帰りのお金持ち。   甘いマスクの彼に、アンは恋をしているというのでしょうか。   ギルバートのことを忘れてしまうのでしょうか。~２１歳の夏休み。今、アクセル踏んだらトラックに激突して死ぬ…今、反対にハンドル切ったら崖から転落して、死ぬ…運転しながら、事故を想像してしまう時がある。日常の中のある瞬間、別の選択をすれば生が死に切り替わってしまうのだ。また、人...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br />　　～<span style="color:#FF0000;">アンはついに、夢に描いていた通りの "<strong>王子様</strong>" に巡り会います。<br />　　　その名も、<strong>ロイヤル・ガードナー</strong>。<br /><br />　　　フランス帰りのお金持ち。<br />　　　甘いマスクの彼に、アンは恋をしているというのでしょうか。<br />　　　<strong>ギルバート</strong>のことを忘れてしまうのでしょうか。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳の夏休み。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#006500;">今、アクセル踏んだらトラックに激突して死ぬ…<br /><br />今、反対にハンドル切ったら崖から転落して、死ぬ…</span><br /><br /><span style="color:#333333;">運転しながら、事故を想像してしまう時がある。</span><br /><br />日常の中のある瞬間、別の選択をすれば生が死に切り替わってしまうのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">また、人の悩みや苦言のような<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">シビアな話</span></span>を聞いている最中に、その話とは<br />全く関係のない事に神経が行ってしまい、困ることがある。</span><br /><br /><span style="color:#006500;">　もしも今、すごく臭いオナラなんか出たら、不謹慎だ…<br /><br />　口紅がはみ出してるけど、今注意せんかったらどんどん話が深刻になり、<br />　キッカケ失う…</span><br /><br />しかし、私は悲しいかな、どんなに高尚かつ深刻な悩みに苦しんでいようとも、<br />頭の中で<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">妙な想像</span></span>が止まらなくなることがある。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">宿泊施設と言っても、浜辺に置いた廃船の一室に蒲団が置いてあるだけである。</span><br /><br />本館で食事と入浴を済ませて、　私達は船のデッキに置かれた椅子で<br />涼しい風に吹かれていた。<br /><br />船室にはエアコンがないのである。<br /><br /><span style="color:#000098;">佐竹</span>は人に預けてきた "糠床" が気になって、電話を掛けに席を立った。<br /><br />沖を走る船影もなく、星空だけが拡がる夜の海は恐ろしいほど真っ暗で、<br />波の打ち寄せる音だけが響いていた。<br /><br />"<span style="color:#CB0098;">夜明け前には釣りに出掛けるから早寝する</span>" と言っていた<span style="color:#CB0098;">ミス・クセ</span>は、<br />じっと海を見つめて一向に寝る様子もない。<br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">今頃…　カレ、あの子と旅行しているはずよ…</span>　」<br /><br /><span style="color:#333333;"><span style="color:#006500;">理想の女の子に出会えたから、我がままを許してくれ</span>と言われたそうだ。</span><br /><br />相手は私も知っている同級生。　お人形さんみたいな美人だ。<br /><br />陶器のように白い肌。　柔らかな黒髪がこれまた白い肩に掛かっている。<br /><br />あれだけ綺麗だったら、頭の中は空っぽでも何の問題もないだろう。<br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">二股カケルようなまねはしたくないんだってサ</span>」<br /><br /><span style="font-size:125%;"><span style="color:#006598;">はぁ…　二股をカケルねぇ…</span></span><br /><br /><span style="color:#333333;">この言葉が<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">誘発剤</span></span>になってしまった。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ミス・クセの "カレ" は陸上部で、短距離の選手である。</span><br /><br />"いかに記録を更新するか" で、いつも頭が一杯なんだそうだ。<br /><br /><span style="color:#006598;">が、私の見る限り…</span>、　カレは<span style="color:#006500;">ちんちくりん</span>で、足が短か過ぎるように思う。<br /><br />あの体型で記録を更新するには、二股の分岐点を中心にして、扇風機の羽みたいに<br />高速回転させないといけない。<br /><br /><span style="color:#006598;">ホレ、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">走っている足の見えないマンガ</span></span>みたいだわ…</span><br /><br /><br />　　土煙があがる陸上競技場。<br /><br />　　トラックの向こうには黒髪の美人が高速回転で走っている。<br /><br />　　汗もかかず、化粧崩れもなく。<br /><br />　　後方にはミス・クセが続く。　おっ、釣竿が邪魔だ！<br /><br />　　「そんなもの、捨てちゃえ～」　観衆が叫ぶ。<br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">カレと生まれて初めて釣りに行って、すごく釣れたのよ。<br />　ビギナーズラックかもしれないけど、カレは悔しがりもしないで言うの。<br /><br />　『キミはフィッシュ・チャーマーなんだよ。　魚が寄ってくるんだ』って…</span>」<br /><br />　　えっ～？　ホントに寄ってきたがな…　ミス・クセの周りに魚群が迫る。<br /><br />　　魚が邪魔で走れない。　おっと、ついに釣竿を捨てた。<br /><br />　　しかし既に、カレに大きく水をあけられている。<br /><br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">それからもうひとつ。　私を花に例えてたら何かしらって聞いてみたらね。<br />　ピンクのカーネーションですって。<br />　後にも先にもこの花の名前しか知らないんですって。　<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">正直な人</span></span>なのよね</span>」<br /><br /><span style="color:#333333;">正直者は馬鹿をみるって言うけど、　近頃では正直者と関わったら、こっちの方が馬鹿をみる。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">ウソつけ～　桜とかチューリップくらい知っとるはずやぁ。　小学校で習うやろが～。</span><br /><br /><br />　　二股回転走りのカレは、ついに白肌黒髪美人に追いついた。<br /><br />　　ところが、回転は急には止まらない。<br /><br />　　不本意にも美人にタックルをかけてしまい、美人を巻き込んでの<br />　　ものすごいスライディング。<br /><br />　　二人ともゼンマイの切れたおもちゃのように無様に止まって、<br />　　足だけがいつまでもカタカタと動き続けている。<br /><br /><span style="color:#333333;">周囲が暗闇だった事と、ミス・クセが終止私に背を向けていたおかげで、<br />私はこの深刻な問題を、<span style="color:#9800CB;">ちんけなお笑い草</span>に変えてしまった。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">それにしても…　この島に来る前になんで私に話してくれなかったのよ。<br /><br />ここへ来る道中だって、たっぷり時間はあったのに。<br /><br />ずっと、傷ついていたはずなのに。</span><br /><br />何でもないフリをしていたのなら、可哀想過ぎる。<br /><br />友達が傷ついているのに、変な想像した自分が申し訳ない。<br /><br /><br />「<span style="color:#006500;">ごめん…　あんたの話で…　変な想像して、ごめん</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">結局ミス・クセも大笑いしたのだが、その前にキッチリ嫌味を言われたわ。</span><br /><br />やっぱり、正直に打ち明ければ許して貰えると思ったら大間違い。<br /><br />勇気を出して本当の事を話したら、笑われる。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">正直だからって、大して良い事がある訳でもない。</span><br /><br />自分に正直な人が、　どれだけ周囲に迷惑をかけ、人を傷つけていることか。<br /><br /><span style="color:#006500;">所詮私も自分勝手な正直者だ</span>、とガックリしたのである。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/98026768.html</link>
      <title>No.95 『第２４章  離れ小島でリゾート？』</title>
      <pubDate>Mon, 26 May 2008 13:34:36 +0900</pubDate>
            <description>  ~プロスペクト岬にある、お上品な人向けのリゾートホテルに滞在する   フィルから、アンに手紙が届きました。   ハンサムでお金持ちでなければ結婚しないはずのフィルは、   全く正反対の人を好きになり、戸惑っていたのです。   ブ男で、貧乏な神学生のジョウナスを好きになるなんて…   フィルにとっては "あり得ない" ことだったからです。   でも… どうやら、本気のようです。~２１歳の夏休み。私と "ミス・クセ" は、用心棒代わりの "佐竹" を伴って２泊３日のリゾートに...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF0000;">プロスペクト岬にある、お上品な人向けのリゾートホテルに滞在する<br />　　　フィルから、アンに手紙が届きました。<br /><br />　　　ハンサムでお金持ちでなければ結婚しないはずのフィルは、<br />　　　全く正反対の人を好きになり、戸惑っていたのです。<br /><br />　　　ブ男で、貧乏な神学生のジョウナスを好きになるなんて…<br />　　　フィルにとっては "あり得ない" ことだったからです。<br /><br />　　　でも…　どうやら、本気のようです。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳の夏休み。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私と "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0098;">ミス・クセ</span></span>" は、用心棒代わりの "<span style="color:#000098;">佐竹</span>" を伴って２泊３日の<br />リゾートに出掛けた。</span>　<br /><br />早い話が "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">海水浴</span></span>" だ。<br /><br />だが、<span style="color:#333333;">リゾート地でもない</span> "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">ただの小島</span></span>" に、しゃれたホテルはない。<br /><br />釣り客用の民宿が数件と、廃船を利用したユースホステルが<br />１件あるだけのさびれた島を選んだのには、　理由があった。<br /><br />７９歳の友達 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">キヨコ</span></span>" が、夫と一緒に渡り住んだ島だと聞いて、<br />どんな所か行ってみたくなったのだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">当時、島には医者がいなかった。</span><br /><br />　「<span style="color:#980098;">無医村と聞いたら、どこにだって行くんですから。<br />　まぁ、着いてみたら、何にもありゃしません</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">確かに…　何にも無い…</span><br /><br />食事をする店もない。　車が走っていない。<br /><br />港の反対側にあるユースホステルへは、徒歩で小山を超えるか、<br />船で行くしかない。<br /><br />私達は歩くことにした。<br /><br /><br />「<span style="color:#CB0098;">いい釣り場がいっぱいあるじゃないの！</span>」<br /><br />ミス・クセは、肩に掛けた釣り竿のケースをグイと握りしめて言った。<br /><br />彼女、付き合っているカレシに釣りを仕込まれたのだ。<br /><br />「<span style="color:#006598;">彼のどこがいいの？</span>」<br /><br />我が儘で子供っぽいカレシ。　頭のいいミス・クセとお似合いとは思えない。<br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">強いて言えば、私の気付かなかった才能を発掘してくれたからかなぁ…</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">なに、それ？</span>」<br /><br />　「<span style="color:#CB0098;">釣りよ。　私、先天的に凄い腕前なのよ</span>」<br /><br /><br />"釣りの天才" ミス・クセは、真剣な面持ちで釣り道具一式を背負って歩く。<br /><br /><span style="color:#006598;">一方、私といえば…</span>　赤いワンピースに白いフリルの付いた日傘という、<br />なんとも場違いな出で立ちである。<br /><br />佐竹は荷物を持って、無言で私達の後に続いた。<br /><br />どう見ても、不思議な３人である。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ユースホステルまでは一本道。</span><br /><br />高い木立のない斜面には、背の低いみかんが植えられている。<br /><br />濃い緑の向こうには、キラキラ輝く夏の青い海が拡がっていた。<br /><br />アスファルトのような、人工的な物のない所では、　夏の日差しですら優しい。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">キヨコは、島の暮らしが結婚生活の中で一番辛かった、と話していた。</span><br /><br />看護師が本土から週に一度やって来るのだが、 "<span style="color:#333333;">居ない時</span>" に限って<br />けが人が担ぎ込まれて来るからだ。<br /><br />医師の夫は有無を言わせず、キヨコに手伝わせる。<br /><br />血を見るのが恐ろしいキヨコは、目を背けながらいやいや傷口を消毒し、<br />包帯を巻いたそうだ。<br /><br />　「<span style="color:#980098;">わたしには出来ませんですよ…　海から死体があがるんですけどね。<br />　自殺する方が多くてね。　腐ってどろどろになっておりますでしょ？<br />　掴むとヌルリと肉が剥けて、　そりゃ、かわいそうな姿で。<br /><br />　わたしには見ることも触ることも…　とてもできたもんじゃありません</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">…って、　見る事も触る事もできないあんたが、何でそれを知ってるんだよ！</span><br /><br /><br />夕食を終えて廃船の "ホステル" のデッキでくつろぎながら、私はキヨコの<br />話をしていた。<br /><br />佐竹が妙な顔をして、口を挟んで来た。<br /><br />　「<span style="color:#000098;">その方、田辺さんとおっしゃるのでは？</span>」<br /><br />「<span style="color:#006598;">そう、田辺さん…</span>」<br /><br />　「<span style="color:#000098;">名前はキクさんではございませんか？</span>」<br /><br />名前は違うが、　どうやら佐竹の言う "キクさん" と "キヨコ" は、<br />同一人物のようだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">彼は昔、博打の借金取りから逃げてこの島へ来た時、自殺死体が岩場に<br />打ちあげられた現場に出くわしたらしい。</span><br /><br />中年の女性と何人かの男達が、診療所へ死体を運ぼうとしている。<br /><br />見物を決め込んでいた佐竹に、女性が声を掛けてきた。<br /><br />　「<span style="color:#980098;">あなたも手伝いなさい</span>」<br /><br />佐竹は言われるがままに、手を貸したそうだ。<br /><br />　「<span style="color:#000098;">気丈な方だと思いましたよ。　腐乱しかけた死体ですから…。<br />　わたくしは、吐きそうでございましたよ</span>」<br /><br />見るのも触るのも出来ないと言いながら、キヨコは勤めを果たしていたのだ。<br /><br /><br />佐竹の話によると、その後一週間ほどキヨコの家で世話になったという。<br /><br />　「<span style="color:#980098;">あなたも自殺しに来たのなら、おやめなさいよ</span>」<br /><br />キヨコと夫は島で見知らぬ顔の人を見掛けると、家に連れ帰ってタダで宿を貸し、<br />飲み食いさせていたということだった。<br /><br /><span style="color:#006598;">キヨコはいつも隅っこで小さくなっているような人だったが、<br />実はすごい婆サマなのかも…</span><br /><br />私だったら、無医村で医師をする夫と共に献身的に働いた、と<br />自慢話にするところだが。<br /><br /><span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">辛いから、辛いと言う</span></span>、　彼女のそんなところが正直でいいなぁと思う。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">自分のことで精一杯の私でも、　良い人に出会うこと、あるいは人の良いところを<br />知る機会がある。</span><br /><br /><span style="color:#CB0065;">コレって、ツイてるよ。</span><br /><br />でも、黙っていよっと。　佐竹がイイ気になるだけだから。<br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
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      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/97436019.html</link>
      <title>No.94 『第２３章 ベビーシッターの定め』</title>
      <pubDate>Wed, 21 May 2008 10:31:22 +0900</pubDate>
            <description>  ~いつもの夏休みなら、 どこに行くにも、何をするときも、   側にはギルバートがいました。   でもこの夏、アンはひとりでした。   ギルバートは、アンに手紙すらよこして来なかったのです。   しかしアンは、この淋しさを気付こうとさえしませんでした。~２１歳、ママにヤキモチ。私達ベビーシッターの役目は、 お母様に代わって、依頼された時間だけこども達のお世話をすることが目的だ。だから、お母様の考え方の通りにしなければならない。「必ず外に連れ出してほしい」 というお母様がいた...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br /><br />　　～<span style="color:#FF0000;">いつもの夏休みなら、　どこに行くにも、何をするときも、<br />　　　側にはギルバートがいました。<br /><br />　　　でもこの夏、アンはひとりでした。<br />　　　ギルバートは、アンに手紙すらよこして来なかったのです。<br /><br />　　　しかしアンは、この淋しさを気付こうとさえしませんでした。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳、ママにヤキモチ。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私達ベビーシッターの役目は、　お母様に代わって、依頼された時間だけ<br />こども達のお世話をすることが目的だ。</span><br /><br />だから、<span style="color:#333333;">お母様の考え方の通り</span>にしなければならない。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">「<span style="color:#000098;"><span style="font-size:125%;">必ず外に連れ出してほしい</span></span>」 というお母様がいた。</span><br /><br />まだ１歳にもならない赤ん坊を、　雨の日も、寒い日もベビーカーに乗せて<br />連れて歩く。<br /><br />私達が赤ん坊を預かる日は、"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">男性が家に来る日</span></span>" なのだ。<br /><br />その人が赤ん坊の父親なのか、他人なのか、それはわからない。<br /><br />とにかく、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">事情</span></span>" があるのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#006598;">　赤ん坊がかわいそうじゃないですかぁ…</span><br /><br />呟く私に、社長が言った。<br /><br />　「かわいそうだからって、かたおか、　あんたが母親になれるのかい？<br /><span style="color:#980098;"><br />　<span style="color:#CB0065;">ひとぉつ！　シッターは "ママ" じゃない。<br />　ふたぁつ！　お客様のプライバシーを詮索するな。</span><br /><br />　駐車場の車に置き去りにしてパチンコする親だっているんだ。<br />　シッターに世話を頼むってことは、この母親はちゃんとしてるじゃないの</span>」<br /><br />"<span style="color:#006598;">かわいそう</span>" だけでは、こどもを育て上げることはできないのだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">また、ある母親は赤ん坊をあやしたり、話しかけたりしない。</span><br /><br />暗い顔をして黙っていた。　シッターが来るとふらりと何処かへ出掛けてしまう。<br /><br />私達仲間は、どうしたものかと途方に暮れた。<br /><br />だが、どんなに愛情を込めて接しても、　母親が帰ってくると、<br />足をばたばたさせて喜ぶこども…。<br /><br />なんだか悔しいような、アホらしい様な気になってしまう。<br /><br />さびしいけれど、ベビーシッターはやっぱり "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006598;">ママじゃない</span></span>" のだ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">再婚して、夫の連れ子だった３人の娘の母親になった人がいる。</span><br /><br />７９歳になる、私のお友達 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0098;">キヨコ</span></span>" 。　最初の夫を結核で亡くした。<br /><br />「<span style="color:#9800CB;">かわいそうでしたよ。　戦争中のことですからね、<br />薬もなく、だんだん痩せて弱って、亡くなりました</span>」<br /><br />呉服屋の息子だったそうだ。<br /><br />西洋の音楽や小説が好きで、　 "鬼畜米英" のご時勢にも倉に隠れて<br />こっそり楽しんでいる様な人だった。<br /><br />キヨコは最初の夫の話をする時は、瞳をしっとりと濡らして若やいでいた。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">夫を亡くして間もなく、戦争が終わった。</span><br /><br />キヨコは実家に帰らず、婚家にとどまっていた。<br /><br />実家はキヨコの兄が後を継ぎ、嫁との間にはこどもが産まれていた。<br /><br />気を遣う生活も嫌だったが、食いブチを増やすことに気が引けた。<br /><br />姑もキヨコが家に残ることを喜んでくれたそうだ。<br /><br /><br />そんな時、医者の居なかった山間の町に<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">医者</span></span>がやって来た。<br /><br />女の子３人の子持ちの "やもめ" の医師。　町は彼を大歓迎した。<br /><br /><span style="color:#333333;">特に町の教会は喜んだ。</span><br /><br />なぜならこの医者は、"長老派のクリスチャン" だったのだ。<br /><br /><br />教<span style="color:#333333;">会員は、競って医者の世話を焼いたそうだ。</span><br /><br />野菜やら米やらを届けるが、いったい誰が料理するのやら。<br /><br />１２歳の長女に、家の切り盛りができるはずがない。<br /><br />下の二人の妹の世話をするので手一杯。　進学したくても勉強する暇がない。<br /><br /><span style="color:#006500;">オマケに、先生ときたら…</span>　　よれよれのズボンにくしゃくしゃのシャツ、<br />その上にシミだらけの白衣をひっかけて、仕上げにおしゃれなソフト帽をかぶり、<br />年中靴下も履かずに、革靴をつっかけて往診している。<br /><br />こどもにまともな食事をさせず、コーヒーばかり飲ませていると噂する者もいた。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">再婚させるしかない、これが長老達の結論だった。　キヨコに白羽の矢が立った。</span><br /><br />「<span style="color:#9800CB;">私は、何度説得されてもお断りいたしましたよ。<br />亡くなった夫が好きでしたからね</span>」<br /><br />長老達は諦めなかった。<br /><br />キヨコもクリスチャンだったので、教会へ行く度に再婚話になった。<br /><br />しかし、キヨコも簡単にうんと言うようなタマではない。<br /><br />「<span style="color:#9800CB;">決心いたしましたよ。　このまま婚家にいたら、いつかは厄介者に<br />なりますでしょう。<br /><br />何より、３人の女の子達がかわいそうでね。<br />こども達には、ちゃんと世話をして、躾をしてやれる人間が必要だと<br />思いましたよ。<br /><br />でもそれが、<span style="font-size:125%;">私でなければならないのだ</span>と思えるまで、時間がかかりました</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">町には他に、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">女</span></span>" は余るほどいたはずなのに…</span><br /><br />つまり相手の女性は、同じ "長老派クリスチャン" でなければならなかったのだ。<br /><br />そして、その条件を満たすのはキヨコだけだった、と言うわけだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ひとつしかない道を、自分の意志で選んで、　キヨコは医者の所に嫁いだ。</span><br /><br />"なさぬ仲" のこども達を育てるのは、並大抵の事ではなかったと言う。<br /><br />「<span style="color:#9800CB;">誰かがきちんと育てなければならんでしょ？<br />善悪の区別を教えてやらねばならんでしょ？<br /><br />それが継母でも、誰でもいいじゃありませんか</span>」<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">"<span style="color:#006598;">かわいそう</span>" だけでは、こどもに向き合う事はできない。</span><br /><br />本当の母親でも、母親の責任を自覚できない人が沢山いるのに、<br />私達、時間で雇われたベビーシッターに何ができるだろうか。<br /><br /><span style="color:#CB0098;">ただひとつ、</span>　こどもと居る時の楽しい時間を作り出すことだけだ。<br /><br /><span style="color:#CB0065;">ママが帰ってきたら、あっさり捨てられる身だけれどね。</span><br /><br />社長が面白く言う。<br /><br />「<span style="color:#000098;">ホステスさんみたいなもんよ。　結局、本妻のところへ戻るんだからさ</span>」<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">毎回続く、そんな繰り返しの中で、　私は思った。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">こども達の中に、私の記憶など残らなくても良い。<br /><br />むしろ、消えてしまうようでなければならない、とさえ思う。<br /><br />楽しかった思い出だけが残ればいい。</span><br /><br /><span style="color:#333333;">だけど、私は覚えている。　こども達、一人一人のこと。</span><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
        <item>
      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/96856198.html</link>
      <title>No.93 『第２２章  寝たきりのシノさん』</title>
      <pubDate>Fri, 16 May 2008 06:00:00 +0900</pubDate>
            <description>  ~春休み、アンは予定より一日早くアヴォンリーへ帰ってきました。   驚きながらも大喜びのマリラ。 愛情を込めてアンを抱きしめるのでした。   大好きなグリーンゲーブルズ。   でもこの春、ギルバートは帰って来ません。   アンがギルバートを "愛せない" と拒絶した日から、   アンの心にもギルバートは戻って来ないのでしょうか…~２１歳、女の逞しさを知る。自称 "寝たきり" の "シノさん" は、居間の真ん中に万年床を敷いている。人工透析を受けると大変疲れるそうだ。買い物...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
　　～<span style="color:#FF0000;">春休み、アンは予定より一日早くアヴォンリーへ帰ってきました。<br />　　　驚きながらも大喜びのマリラ。　愛情を込めてアンを抱きしめるのでした。<br />　　　大好きなグリーンゲーブルズ。<br /><br />　　　でもこの春、ギルバートは帰って来ません。<br /><br />　　　アンがギルバートを "愛せない" と拒絶した日から、<br />　　　アンの心にもギルバートは戻って来ないのでしょうか…</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳、女の逞しさを知る。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">自称</span> "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">寝たきり</span></span>" の "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0098;">シノさん</span></span>" は、居間の真ん中に万年床を敷いている。<br /><br />人工透析を受けると大変疲れるそうだ。<br /><br /><span style="color:#0032CB;">買い物にも出て行けず、炊事もままならない、ゴミを捨てに外に出ることさえ<br />できない、</span>　と情けなさそうにグチる。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">茶道の先生をしていたと言うシノさんのお宅は、　茶室のある、実に立派な造りだ。</span><br /><br />玄関には<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">立派な掛け軸があった…</span></span>　とおぼしき所に、こんな "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">張り紙</span></span>" が訪問者を<br />歓迎する。<br /><br />　"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">せっかくですが、糖尿病のため、手土産のお菓子はお断り致します。"</span></span><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">台所は更にスゴイことになっている。</span><br /><br />　"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">食べたら死ぬぞ</span></span>"<br /><br />壁に<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">３箇所</span></span>貼ってある。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">冷蔵庫のは、ちょっと気が利いている。</span><br /><br />　"<span style="color:#980098;"><span style="font-size:125%;">オヌシ、また、食べるのか、死んでもよいのだな</span></span>"<br /><br />　"<span style="color:#980098;"><span style="font-size:125%;">冷蔵庫は地獄への門</span></span>"<br /><br />　"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#980098;">心にも　しっかり締めよう　カロリー計算</span></span>" （？）<br /><br /><span style="color:#006598;">これって、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">交通標語</span></span>のパクリよなぁ…</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">私がゴミの片付けや掃除をする間、シノさんは万年床に座卓を差し込んで、<br />くつろいでいる。</span><br /><br />だがあくまで病人らしい、弱々しい声で、　指示を出す。<br /><br />　「<span style="color:#980098;">鍋や洗面器をごしごし擦って磨かなくてもよろしいのよ。<br />　時間がもったいないでしょ。　汚れたら新しいのを買ってくださいな</span>」<br /><br />どうりで…　台所の鍋、道具、雑貨は新品同様。　風呂場の洗面器までピカピカ。<br /><br />手間をかけるより、１００円ショップで買った方がいいのだそうだ。<br /><br />　「<span style="color:#980098;">１００円の安物と私の命と、どちらが長持ちするかですわ</span>」　だってさ。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">宅配の配達が呼び鈴を鳴らす。</span><br /><br />　「<span style="color:#980098;">上がって頂いて下さいな。　電球を取り替えて頂きましょうよ。　ねぇ？<br />　高い所は危ないから、あなたにさせるわけにはいきませんからね</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">って、シノさん…　その宅配屋が危ないかもしれないのであって…</span><br /><br /><br />しかし、心配は無用。　そのおにいちゃん、これが初めてではないと判った。<br /><br />壁掛け時計の電池やら蛍光灯の取替やらで、使われ慣れていたのだ。<br /><br />郵便配達のおにいちゃんも、重宝に使っているらしい。<br /><br />「<span style="color:#980098;">男手は必要よねぇ～</span>」 と、涼しい顔である。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">買い物の時は、リストに書かれた品物について細かく確認をしてから、<br />近所の商店街へ行く。</span><br /><br />人の買い物をするというのは、かなりやっかいだ。<br /><br />商品がなかったり、いい品でない時はどうするかまで打合せしておかないと、<br />はたと困ってしまう。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">レシートを見せて、釣銭を勘定して渡す。</span><br /><br />　「<span style="color:#980098;">あなたの家は近いのですか？</span>」<br /><br />私は前もって、先輩のシッターさんに聞いていた。<br /><br />シノさんは会社を通さずに <span style="color:#CB0065;">"個人的に" 来てくれる、近場の人</span>を探しているらしい。<br /><br /><span style="color:#006598;">へ～　しっかりしている。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ある日、私は見てしまった。</span><br /><br /><span style="color:#006598;">本当にシノさんがしっかりして居られる姿を…</span><br /><br />商店街を、買い物車を押しながらではあるが…、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0098;">達者に歩いている</span></span>ではないか。<br /><br />"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006500;">寝たきり</span></span>" なんかであるもんですか。<br /><br />　<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006598;">シノさ～んっ！</span></span>　声を掛けると、<span style="color:#006598;">おっ！　ギクッとした！</span><br /><br />　「<span style="color:#980098;">まぁ、私、　こんな体でも一人でしょ…<br />　こうして無理にでも動くと、また寝込んでしまうのよ。<br />　あなたのように、お若い方にはお分かりにならないでしょうけれどねぇ</span>」<br /><br />買い物車に目を落とすと、野菜や果物に混ざって "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">和菓子屋の包み</span></span>" が嬉しそうに<br />存在をアピールしている。<br /><br />たまには和菓子のひとつも食べなきゃ、楽しみがない。<br /><br />シノさんと私は "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">そうだよねぇ</span></span>" と、眼で語り合って笑った。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">一日三食、　その上に二度のおやつを食べたとしても、シノさんは長生きすると私は思う。</span><br /><br />一人で暮らす知恵と、バイタリティーがあるからだ。<br /><br /><br /><span style="color:#333333;">望みは人を元気にしてくれる。</span><br /><br />どんな望みであれ、それが本人の心からの希望であれば叶えられて欲しい。<br /><br /><br />"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">一食でも多く食べて逝きたい</span></span>"。　それがシノさんの望みだ。<br /><br /><br /><br /><a name="more"></a>

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            <category>バックナンバー</category>
      <author>片岡 よしこ</author>
                </item>
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      <link>http://akagenoanne-daily.seesaa.net/article/96653399.html</link>
      <title>No.92 『第２１章  "源爺"』</title>
      <pubDate>Wed, 14 May 2008 08:10:15 +0900</pubDate>
            <description>  ~アンはフィル・ゴードンの屋敷 "ひいらぎ荘" で、楽しい二週間を過ごします。   馬車の遠乗り、ダンス、ピクニック、舟遊び。   ギルバートのことを考えると、何かが痛んだけれど、   毎日続くお祭り騒ぎの中で、彼の事を考える時間はありませんでした。~２１歳、お年寄りの気持ちはわからない。ここが市内なのかと思うほど、田舎じみた風景の中の一軒家に、 "源爺" は一人で住んでいる。実際、たぬきが餌をねだりに来るらしい。夕食が終わった頃、勝手口の辺りまで子連れでやって来て、じっ...</description>
            <content:encoded><![CDATA[
<br /><br />　　～<span style="color:#FF0000;">アンはフィル・ゴードンの屋敷 "ひいらぎ荘" で、楽しい二週間を過ごします。<br /><br />　　　馬車の遠乗り、ダンス、ピクニック、舟遊び。<br /><br />　　　ギルバートのことを考えると、何かが痛んだけれど、<br />　　　毎日続くお祭り騒ぎの中で、彼の事を考える時間はありませんでした。</span>～<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">２１歳、お年寄りの気持ちはわからない。</span><br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">ここが市内なのかと思うほど、田舎じみた風景の中の一軒家に、<br /> "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#CB0065;">源爺</span></span>" は一人で住んでいる。</span><br /><br />実際、たぬきが餌をねだりに来るらしい。<br /><br />夕食が終わった頃、勝手口の辺りまで子連れでやって来て、じっとこちらを<br />見ているので、　源爺が食べ残した魚やら、野菜の煮付けやらを投げてやると、<br />「<span style="color:#0000CB;">おおきに</span>」 も言わずに口に咥えて、裏山へ帰っていくのだそうだ。<br /><br />　「<span style="color:#FF0098;">かわいげのないもんじゃなぁ。　"<span style="font-size:125%;"><span style="color:#333333;">畜生</span></span>" ゆうもんは…<br /><br />　それにしても、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0032CB;">たぬきのどんべえ</span></span>、　小そうて、かわいいなぁ。<br />　目に入れても痛うないほどじゃなぁ…</span>」<br /><br />源爺、 "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#0000CB;">ミニどんべえ</span></span>" を手で撫でるように、眺め回している。<br /><br />レギュラーサイズの "<span style="color:#0032CB;">どんべえ</span>" は食べきれないとぼやくので、"ミニ" を買ってみた。<br /><br />これなら残さずに済むが、<span style="font-size:125%;"><span style="color:#009800;">畜生</span></span>のたぬきはおこぼれに与れなくなるだろう。<br /><br /><br />他に頼まれた買い物は、　お造りとパックのご飯１週間分、それにバナナ。<br /><br />源爺は電子レンジで温めるだけのご飯が、大のお気に入りだ。<br /><br />姉妹品の赤飯も大好きだ。<br /><br />　「<span style="color:#0000CB;">下手な女房の炊いた飯よりうまいからのぅ</span>」<br /><br />と、ほくほく顔である。　死んだばあさんが聞いたら何というやら。<br /><br /><br /><br /><span style="color:#333333;">源爺は１０年前に女房に先立たれ、それ以後ずっと一人暮らしだ。</span><br /><br />二人の息子は他県で働いて所帯を持っているという。<br /><br />近くに住む妹が、ちょいちょい顔を出しては何かと世話を焼いていたのだが、<br />その妹も８０歳を超え、自分の足元もおぼつかなくなり、<br />我が社に<span style="color:#333333;">腕利きのお手伝いさんシッター</span>を依頼したという訳だ。<br /><br />その腕利きの一人がこの "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#006598;">わたし</span></span>" （？）とは、笑わせる。<br /><br /><br />「<span style="color:#980098;">あんた、割烹着姿は結構老けて見えるじゃないの。　大丈夫、ベテランの２８歳でとおるわ</span>」<br /><br /><span style="color:#006598;">　いやいや、とおらないって、　社長。</span><br /><br />私はベビーシッターですから。<br /><br /><span style="color:#006500;">それにお年寄り…　<span style="font-size:125%;">しかも男の年寄りは苦手なのよ！</span></span><br /><br /><span style="color:#333333;">男は歳をとっても "<span style="font-size:125%;"><span style="color:#000098;">男</span></span>" を感じさせる時があって、私はそれが怖かったのだ。</span><br /><br /><br />と言うのも、祖父が亡くなる前に自宅で療養していた時のことだ。<br /><br />珍しく四男夫婦が子供を連れて、泊りがけで遊びに来た。<br /><br />狭い部屋に蒲団を敷き詰めて、騒ぎまわる子供達。<br /><br /><span style="color:#FF0032;">色白でふくよかな嫁の顔</span>がうっすらと上気して、ピンクのモヘヤのセーターが<br />一層可愛らしさを引き立てていた。<br /><br />「<span style="color:#006598;">おばちゃん、きれいだなぁ…</span>」　そう思ったのは私だけではなかった。<br /><br />それまで黙って、火鉢にあたりながら一杯飲んでいた祖父が、何気に呟いたのを<br />私は聞き逃さなかった。<br /><br />　「<span style="color:#006500;">かわいいのぅ…</span>」<br /><br />それは、孫達に向けた言葉ではなかった。<br /><br /><span style="color:#333333;">その時の祖父の表情、艶かしい目つき。　私は忘れない。</span><br /><br />年老いた男