牧師館のお茶に招かれたアンは、幸せ一杯で帰って来た。
マリラのギンガムの膝に、疲れた巻き毛の頭をのせて、
アンはうれしそうに一部始終を語って聞かせた。
夕暮れの涼しい風に吹かれておしゃべりを続けるアン。
いつもの辛らつな皮肉も言わず、ただ黙って聴いているマリラ。
二人の甘く優しい関係が、風や、星や、ホタルと、ひとつに溶け合って、
言葉には言い表せない、素晴らしいものを作りあげ、 私の心を惹き付ける。
アンの体の温もりを感じながら、マリラは優しく髪を撫でているに違いない。
子供に対しては、何か教育的なことを言わなければいけないと信じているマリラも、
この時ばかりは、温かく心地よい母親のような感情にうっとりとしているようにみえる。
触れ合うと、 気持ちがいい。
私をお母さんと間違えたこどもが、暖かい手を私の手の中に滑り込ませた時など、
"このまま気付かなければいいのに"、 と思う。
アンには気難しい老人や頑固な独り者、おせっかいな叔母さんなど、
世間で付き合いづらいと言われる人なら、どんな人とでもうまくやっていく才能がある。
しかも好きなことを言って気に入られるのだから、それはむしろ魔法の域に近い。
私には86歳になる叔母がいる。
生涯独身で、 この年になってもお金の計算には誤りがない。
バブル期には株で儲けたという噂だが、あてにされたくないらしく、
人にはそ知らぬ顔をしている。
私は、本人のいない所では "強ツク張りばぁさん" と呼んでいる。
"貰った物はすぐ返す" の鉄則を守り、身内の誰をもあてにしていない。
事実、病院のお見舞いに到るまで、 "交通費" という形でお金に換算する。
そんな彼女も、 身体がいうことを利かなくなってからは、
甥の言う事なら何でも聞くようになったらしい。
家と土地を遺すから "その分" だけは面倒みてもらおう、という
腹づもりなのだろうか。
愛しい者に身を委ねる温もりを知らない人は、
"してもらいっぱなし" というのが苦手なのだろう。
この物語が終わる頃には、 マリラは "すっかりまるく"なって、
アンのおしゃべりにトドメを刺す、 あの" 素敵な皮肉" が影をひそめてしまう。
"マリラ好き" の私には、かなり残念だが…
アンとの生活に人生の喜びを見出したのだから、
私は「嬉しいわ」 と、言ってあげるべきなのだろう。
夕暮れ時、 美味しそうな夕飯の香りが漂う頃、
一緒に居てくれる愛しい人がいなかったら、
人生の味気なさに私はきっと "まいって" しまう。
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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
いくら風邪で鼻がきかないからって、痛み止めの水薬とバニラエッセンスを
間違えてケーキに入れるなんて考えられないわ。
これだけは自慢できるけど、私は初めて焼いたケーキから始まって、
これまで一度も失敗したことがない。
スポンジケーキはきめ細かくてフワフワ、クリームはなめらかでトロトロ、
クッキーはパリッと香ばしく、パイはバターの層がきれいに並んでいた。
レシピ通りに作るのが基本だけど、分量や火の強さを加減するのは"想像力"だから、
アンならうまく出来るはずなのにね。
こうまで失敗がないと、たまにはシクじってみたいもんだわ。
ちょっとそそっかしいヒロインが、彼のためにケーキを焼く。
ところが大失敗で半泣きになる彼女を、彼が優しく慰めるのよ。
失敗のおかげで友達になれたり、 愛が芽生えたり…
そういうのに、憧れるわ…
ミルフィーユというお菓子、知ってる?
とても手間が掛かる上に、お菓子作りの基本が全部出来なきゃ作れない。
彼が好きなお菓子だと聞いて、 私、一日中かかりっきりで焼きました。
初めて素人が作ったにしては、上出来だったのよ。
もしこれが失敗だといわれたら、人生って理不尽なことばかり。
ところが彼は喜ばなかった。
理由はいたって単純。 メシのおかずにならないから。
「ケーキは、デザートだろうが」
そんなん わかってるワ!
でも… 一日中ミルフィーユだけに集中してたから、
ご飯なんて、 ご飯なんて… 作れる訳ない。 くたくただもの。
愛が芽生えるどころか、な〜んか我儘な男だと思った。
上手に作ってソンしたわ。
次は "根治水" でも入れたろかと思う。
それで優しく慰められなかったら、 別れてやる。
No.21 『第21章 ミルフィーユ』
いくら風邪で鼻がきかないからって、痛み止めの水薬とバニラエッセンスを
間違えてケーキに入れるなんて考えられないわ。
これだけは自慢できるけど、私は初めて焼いたケーキから始まって、
これまで一度も失敗したことがない。
スポンジケーキはきめ細かくてフワフワ、クリームはなめらかでトロトロ、
クッキーはパリッと香ばしく、パイはバターの層がきれいに並んでいた。
レシピ通りに作るのが基本だけど、分量や火の強さを加減するのは"想像力"だから、
アンならうまく出来るはずなのにね。
こうまで失敗がないと、たまにはシクじってみたいもんだわ。
ちょっとそそっかしいヒロインが、彼のためにケーキを焼く。
ところが大失敗で半泣きになる彼女を、彼が優しく慰めるのよ。
失敗のおかげで友達になれたり、 愛が芽生えたり…
そういうのに、憧れるわ…
ミルフィーユというお菓子、知ってる?
とても手間が掛かる上に、お菓子作りの基本が全部出来なきゃ作れない。
彼が好きなお菓子だと聞いて、 私、一日中かかりっきりで焼きました。
初めて素人が作ったにしては、上出来だったのよ。
もしこれが失敗だといわれたら、人生って理不尽なことばかり。
ところが彼は喜ばなかった。
理由はいたって単純。 メシのおかずにならないから。
「ケーキは、デザートだろうが」
そんなん わかってるワ!
でも… 一日中ミルフィーユだけに集中してたから、
ご飯なんて、 ご飯なんて… 作れる訳ない。 くたくただもの。
愛が芽生えるどころか、な〜んか我儘な男だと思った。
上手に作ってソンしたわ。
次は "根治水" でも入れたろかと思う。
それで優しく慰められなかったら、 別れてやる。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
アンがグリーン・ゲーブルズへ引き取られて、ちょうど一年が経った記念すべき日。
アンの質問は直球だ。
「わたしなんか引き取って、 しまったと思っている、マリラ?」
「しまったと思っているわけじゃないよ。」
本心では、 "アンなしでよくも生きてきたものだ" と思ってはいても、
それを言ったら最後、 アンは有頂天。
言いつけた仕事はそっちのけで、たっぷり30分はしゃべりっぱなしになるに
決まってるからね。
"やる" と決めた時のマリラは、 私の母に似ている。
小学生の私は水が怖かった。
泳いだら溺れて死ぬ…
事実、 近くの一級河川の"遊泳禁止区域"で遊んでいて、溺れ死んだ子供がいた。
駄菓子屋のおばあちゃんの一人息子も、ずっと前に溺れ死んだんだって…
そんなかわいそうな子供達の霊が、水の中から足を引っ張るのではないか…
お〜 おそろしや
ある、夏休みのことだった。
「泳ぎなさい。 川に落ちたら溺れるよ。」
母の一言で、私と妹の "地獄の特訓" が始まった。
炎天下の中、 2km程の道のりを、私と妹はプールへ引っ立てられて歩いた。
練習は、 "面かぶり" と "バタ足" の繰り返し。
浮き輪で楽しく遊ぶ子供達を尻目に、 私たちは眼を真っ赤にし、
鼻から水をたらし、 半泣き状態。
一方、 母は日傘をさしてプールの縁に立ち、"ああせぇ、 こうせぇ"と
叱咤激励、指示命令。
お尻が上がると日傘の先で突かれた。 もう、地獄。
嫌になってプールから出ようとすると、
「なにくそ〜 って、歯を食いしばってやりなさい!」
そう言って、また日傘をさして涼しい顔。 決して水に入ろうとはしない。
なぜなら、"泳げなかったから" である。
それでも一週間程経つと、 水の怖さなどおっかない母に比べれば
何ほどでもないわ、と半ば開き直り、どうにか"我流"で泳げるようになっていた。
あの夏のプールサイドの母は、 鬼だった。
"トウヒの森" を通って行くように命じたマリラも、
アンにしてみれば鬼のようにみえただろう。
自分の想像で創り出した"恐怖"とはいえ、 後ろに仁王立ちのマリラ、
前には幽霊の出る森。 どっちもむちゃくちゃ怖い。
そう… あの夏の日、 出来ることなら、言いたかった。
「おかあさん、 もうちょっとやさしくしてよ〜」
運動神経ゼロの私が、水泳だけは得意なのは母のおかげだ。
でも、 こどもは優しいのが好きだから、 厳しさも、優しさも、
同じ愛情だということがわからないの。
辛い現状にぶち当たると、 いつも目に浮かぶのは、
プールサイドに立っていた、鬼のような母の姿。
根性ナシの私だが、 やっぱり "なにくそ〜" よなぁ…
そう思いながら、 足取りのろく、ぼとぼと前へ進んでいる。
No.20 『第20章 鬼』
アンがグリーン・ゲーブルズへ引き取られて、ちょうど一年が経った記念すべき日。
アンの質問は直球だ。
「わたしなんか引き取って、 しまったと思っている、マリラ?」
「しまったと思っているわけじゃないよ。」
本心では、 "アンなしでよくも生きてきたものだ" と思ってはいても、
それを言ったら最後、 アンは有頂天。
言いつけた仕事はそっちのけで、たっぷり30分はしゃべりっぱなしになるに
決まってるからね。
"やる" と決めた時のマリラは、 私の母に似ている。
小学生の私は水が怖かった。
泳いだら溺れて死ぬ…
事実、 近くの一級河川の"遊泳禁止区域"で遊んでいて、溺れ死んだ子供がいた。
駄菓子屋のおばあちゃんの一人息子も、ずっと前に溺れ死んだんだって…
そんなかわいそうな子供達の霊が、水の中から足を引っ張るのではないか…
お〜 おそろしや
ある、夏休みのことだった。
「泳ぎなさい。 川に落ちたら溺れるよ。」
母の一言で、私と妹の "地獄の特訓" が始まった。
炎天下の中、 2km程の道のりを、私と妹はプールへ引っ立てられて歩いた。
練習は、 "面かぶり" と "バタ足" の繰り返し。
浮き輪で楽しく遊ぶ子供達を尻目に、 私たちは眼を真っ赤にし、
鼻から水をたらし、 半泣き状態。
一方、 母は日傘をさしてプールの縁に立ち、"ああせぇ、 こうせぇ"と
叱咤激励、指示命令。
お尻が上がると日傘の先で突かれた。 もう、地獄。
嫌になってプールから出ようとすると、
「なにくそ〜 って、歯を食いしばってやりなさい!」
そう言って、また日傘をさして涼しい顔。 決して水に入ろうとはしない。
なぜなら、"泳げなかったから" である。
それでも一週間程経つと、 水の怖さなどおっかない母に比べれば
何ほどでもないわ、と半ば開き直り、どうにか"我流"で泳げるようになっていた。
あの夏のプールサイドの母は、 鬼だった。
"トウヒの森" を通って行くように命じたマリラも、
アンにしてみれば鬼のようにみえただろう。
自分の想像で創り出した"恐怖"とはいえ、 後ろに仁王立ちのマリラ、
前には幽霊の出る森。 どっちもむちゃくちゃ怖い。
そう… あの夏の日、 出来ることなら、言いたかった。
「おかあさん、 もうちょっとやさしくしてよ〜」
運動神経ゼロの私が、水泳だけは得意なのは母のおかげだ。
でも、 こどもは優しいのが好きだから、 厳しさも、優しさも、
同じ愛情だということがわからないの。
辛い現状にぶち当たると、 いつも目に浮かぶのは、
プールサイドに立っていた、鬼のような母の姿。
根性ナシの私だが、 やっぱり "なにくそ〜" よなぁ…
そう思いながら、 足取りのろく、ぼとぼと前へ進んでいる。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.19 『第19章 ひらめき』
「石橋をたたいて渡れ。」 教訓をアンにタレるリンド夫人。
「こういいたいとか、こうしたいとか思ったが最後、
前後の見境なく、いったりしたりしてしまうでしょうが。」
アンの答えは…
「あら、でも、そうするのが一番だわ。」
えっ? アン? そうなの?
「なにかすばらしいことがぱっとひらめいたら、すぐその場で吐きださなくちゃ」
そっ そぅ … ?
「考えていたら、しぼんで消えちゃうでしょ」
そうよ … そうよネ
「そんなふうに感じたことありません?」
ある!
私もそう感じることがあるわ、 アン!
私にとって、 "ひらめき" とは 「降ってきた!」 って感じだ。
解けない謎が、 りんごが地面に落ちた瞬間に解ってしまうような。
降って来た時に、 これは"当たりだ" と、心でわかるようなもの。
何年前だったか、 "人の魂は何処で生まれて何処からくるのだろう" と
考えていた時があった。
ちょっとウサンクサイ本に、私は "ひらめき" を感じてしまった。
「地球の人間の魂の90パーセントは、地球以外の宇宙生まれだ。」
これは本当かも知れないと思い、友達に話してみた。
大人だった彼女は、「アンタ変なんじゃない?」 という視線を向ける代わりに、
そこだけ聞かなかったことにしてくれた。
これで怯んではいけない。 やはり人は選ばなきゃ。
しばらく経ったある日、 どこか風変わりなブティックの店員さんと親しくなった。
何となくスピリチュアルな方に話が向いて、 "魂宇宙説"を持ち出してみた。
「私も宇宙から"魂の船"に乗ってきたの。 そんな人が集まる会に来ない?」
…。 誘われた。 これはアブナイと"ひらめいた"ので参加していない。
何につけても、"上" には "上" がいるものね。
マルチ系のビジネスに手を出した事もある。
いいビジネスパートナーに出遇えた、と "ひらめいた"のだが… 結局は失敗。
やってみて、私には無理だと思い知るのも勉強だ。 同じ失敗を二度としなくて済む。
時が過ぎると、後悔だけが残ってしまう。 後悔するどころか、損する事もある。
そう、 ギャンブル。
頭の中で、ある4桁の数字が浮かんで消えない。
もしかして… ナンバーズ? いやぁ〜 まさかでしょ
もし、2週間後に買っていれば、 100万円…。
あ〜 悔しい…
何が悔しいって、 合呼ぶ魂の彼に話しときゃよかった。
"買う買わない"で、元がとれるくらい盛り上がったのに。
「そんなの 正しい "ひらめき" とは言えない」 って?
そうでもないわ。
毎日、光のように降り注いでいるとしたら、
どんな事でもいったりしたりしてみなくちゃね。
"ひらめき" とは、良い結果をもたらす、 空から降ってくる "応援の声" だと
私は信じている。
「こういいたいとか、こうしたいとか思ったが最後、
前後の見境なく、いったりしたりしてしまうでしょうが。」
アンの答えは…
「あら、でも、そうするのが一番だわ。」
えっ? アン? そうなの?
「なにかすばらしいことがぱっとひらめいたら、すぐその場で吐きださなくちゃ」
そっ そぅ … ?
「考えていたら、しぼんで消えちゃうでしょ」
そうよ … そうよネ
「そんなふうに感じたことありません?」
ある!
私もそう感じることがあるわ、 アン!
私にとって、 "ひらめき" とは 「降ってきた!」 って感じだ。
解けない謎が、 りんごが地面に落ちた瞬間に解ってしまうような。
降って来た時に、 これは"当たりだ" と、心でわかるようなもの。
何年前だったか、 "人の魂は何処で生まれて何処からくるのだろう" と
考えていた時があった。
ちょっとウサンクサイ本に、私は "ひらめき" を感じてしまった。
「地球の人間の魂の90パーセントは、地球以外の宇宙生まれだ。」
これは本当かも知れないと思い、友達に話してみた。
大人だった彼女は、「アンタ変なんじゃない?」 という視線を向ける代わりに、
そこだけ聞かなかったことにしてくれた。
これで怯んではいけない。 やはり人は選ばなきゃ。
しばらく経ったある日、 どこか風変わりなブティックの店員さんと親しくなった。
何となくスピリチュアルな方に話が向いて、 "魂宇宙説"を持ち出してみた。
「私も宇宙から"魂の船"に乗ってきたの。 そんな人が集まる会に来ない?」
…。 誘われた。 これはアブナイと"ひらめいた"ので参加していない。
何につけても、"上" には "上" がいるものね。
マルチ系のビジネスに手を出した事もある。
いいビジネスパートナーに出遇えた、と "ひらめいた"のだが… 結局は失敗。
やってみて、私には無理だと思い知るのも勉強だ。 同じ失敗を二度としなくて済む。
時が過ぎると、後悔だけが残ってしまう。 後悔するどころか、損する事もある。
そう、 ギャンブル。
頭の中で、ある4桁の数字が浮かんで消えない。
もしかして… ナンバーズ? いやぁ〜 まさかでしょ
もし、2週間後に買っていれば、 100万円…。
あ〜 悔しい…
何が悔しいって、 合呼ぶ魂の彼に話しときゃよかった。
"買う買わない"で、元がとれるくらい盛り上がったのに。
「そんなの 正しい "ひらめき" とは言えない」 って?
そうでもないわ。
毎日、光のように降り注いでいるとしたら、
どんな事でもいったりしたりしてみなくちゃね。
"ひらめき" とは、良い結果をもたらす、 空から降ってくる "応援の声" だと
私は信じている。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
仕事を終えて、今日も私は家路を急ぐ。
夕食の献立を考えながら、 いつものマーケットでお買い物。
今夜は大好きな "おうどん" にしよう。
この頃はすっかり秋めいて、金木犀の香りがどこにいても漂ってくる。
特別な事の何もなかった日、 いつもと同じ一日を終えて、
夕暮れの空は、茜色の薄紙を重ねたように、 儚げに澄んで、 美しい。
それが悲しい色に染まっていなければ、私の一日は幸せだったのだ。
近頃の私は、訳もなく落ち込む事が少なくなった。
何もオモシロイことがなくても、
「いいじゃない、 自分でオモシロイことすれば。」
なんて、 だんだんアンに影響されてきたのかしら。
アンの場合、平穏無事な日なんて皆無だ。
この日も大人達が留守の間に、ミニー・メイが"クループ"にかかってしまう。
大変な事になった。
"クループ"は喉の病気で、息が苦しくなり、犬が呻くような音をたてるそうだ。
私も、喘息の子供を一晩中抱いていて、
不安と疲労でくたくたになってしまったことがある。
夜の明ける頃、 峠を越えてすやすやと寝息を立てる子供を見て、
どれほど安堵したことか。
アンの適切な手当により、ミニー・メイは命を取り留めた。
真っ白い霜の降りた、素晴らしい冬の朝、
アンとマシューはグリーン ゲーブルズへ帰って行く。
「マシュー、素晴らしい朝ね。
神様が御自分が楽しむためだけに描いた絵のようだわ。」
私はこのシーンに心惹かれる。
精一杯の仕事をやり終えた後の、心地よい疲労感が伝わってくるからだ。
全てが良い方向に働き、最善の結果をもたらした。
けれども、 もしうまくいかなくても、何も見返りはなくても、
一日の終わりに世界が美しい、と思えたら幸せだ。
私はそう思う。
アン、 あなたもそう思わない?
No.18 『第18章 一日の終わりに』
仕事を終えて、今日も私は家路を急ぐ。
夕食の献立を考えながら、 いつものマーケットでお買い物。
今夜は大好きな "おうどん" にしよう。
この頃はすっかり秋めいて、金木犀の香りがどこにいても漂ってくる。
特別な事の何もなかった日、 いつもと同じ一日を終えて、
夕暮れの空は、茜色の薄紙を重ねたように、 儚げに澄んで、 美しい。
それが悲しい色に染まっていなければ、私の一日は幸せだったのだ。
近頃の私は、訳もなく落ち込む事が少なくなった。
何もオモシロイことがなくても、
「いいじゃない、 自分でオモシロイことすれば。」
なんて、 だんだんアンに影響されてきたのかしら。
アンの場合、平穏無事な日なんて皆無だ。
この日も大人達が留守の間に、ミニー・メイが"クループ"にかかってしまう。
大変な事になった。
"クループ"は喉の病気で、息が苦しくなり、犬が呻くような音をたてるそうだ。
私も、喘息の子供を一晩中抱いていて、
不安と疲労でくたくたになってしまったことがある。
夜の明ける頃、 峠を越えてすやすやと寝息を立てる子供を見て、
どれほど安堵したことか。
アンの適切な手当により、ミニー・メイは命を取り留めた。
真っ白い霜の降りた、素晴らしい冬の朝、
アンとマシューはグリーン ゲーブルズへ帰って行く。
「マシュー、素晴らしい朝ね。
神様が御自分が楽しむためだけに描いた絵のようだわ。」
私はこのシーンに心惹かれる。
精一杯の仕事をやり終えた後の、心地よい疲労感が伝わってくるからだ。
全てが良い方向に働き、最善の結果をもたらした。
けれども、 もしうまくいかなくても、何も見返りはなくても、
一日の終わりに世界が美しい、と思えたら幸せだ。
私はそう思う。
アン、 あなたもそう思わない?
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
「こんなおもしろい世界に生きているんですもの、
そういつまでも、悲しい気持ちでなんかいられないわよね?」
これは、子供の台詞ではない、と私は思う。
作者のモンゴメリー自身が私たちに語りかけているようだ。
そう… 問題は、いつまでも悲しい気持ちになってしまって、
世の中に出て行けないこと。
今の"この世界"はオモシロクない。
相変わらずダイアナとは遊べないアン。
それでも、久しぶりに通い始めた学校では大歓迎される。
ギルバート・ブライスとの成績争いはクラスの注目の的だ。
そりゃ、 オモシロイだろうさ。
私と言えば、 "身から出たサビ"と言われればそれまでだが、
相も変わらず忘れ物の罰則に苦しめられていた。
ある日、隣のクラスの人から教科書を借りてきたら、
"それも忘れたうちに入るのでは"と学級会にかけられ、卑怯者扱いよ。
それで、やっぱり立たされた。
だって図画の授業よ、 教科書いらんやんか。 オモシロクない。
ひとりクラシックファンを気取っていたPTA会長の息子は、
私の座布団の中に押しピンを仕込むのに熱中していた。
私ほど何度でもひっかかるヤツはいないそうだ。
ギャ! 叫ぶその度に先生に睨まれた。
もう… 悲しいばかりだわ…
石板で頭を割られるに値する男子がいるはずもない。
陰湿ないじめっ子はストーカー。 しつこく付け回されるので、
ある日怖くなった私は、持っていたサブバックを振り回した。
運悪く硯が入っていたため、彼はマジで頭をカチ割られそうになった。
学校に行くのが怖いわ…
やっと家に帰れば、母にメチャクチャ"逆上がり"を特訓されて、
手はマメだらけ、足は打ち身だらけ…
こうなると、 学校に行くのも帰るのもオモシロクない。
今なら私、断固登校を拒否する。
どこがオモシロイ世界なんだ。 でも…
待てよ… 冴えない事ばっかだけど、ちょっとオモシロイかもしれない。
いや、 私、かなりオモシロイ世界に生きていたかもしれん。
今の私の目には滑稽で鈍くさい私でも、確かにオモシロイ世界に生きていた。
卑怯で、滑稽で、鈍くさい私って… オモシロイ…?
ぶっちゃけてしまえば何て事ない。
いつまでもオモシロクないなんて言ってられないわ。
No.17 『第17章 オモシロクもない世界』
「こんなおもしろい世界に生きているんですもの、
そういつまでも、悲しい気持ちでなんかいられないわよね?」
これは、子供の台詞ではない、と私は思う。
作者のモンゴメリー自身が私たちに語りかけているようだ。
そう… 問題は、いつまでも悲しい気持ちになってしまって、
世の中に出て行けないこと。
今の"この世界"はオモシロクない。
相変わらずダイアナとは遊べないアン。
それでも、久しぶりに通い始めた学校では大歓迎される。
ギルバート・ブライスとの成績争いはクラスの注目の的だ。
そりゃ、 オモシロイだろうさ。
私と言えば、 "身から出たサビ"と言われればそれまでだが、
相も変わらず忘れ物の罰則に苦しめられていた。
ある日、隣のクラスの人から教科書を借りてきたら、
"それも忘れたうちに入るのでは"と学級会にかけられ、卑怯者扱いよ。
それで、やっぱり立たされた。
だって図画の授業よ、 教科書いらんやんか。 オモシロクない。
ひとりクラシックファンを気取っていたPTA会長の息子は、
私の座布団の中に押しピンを仕込むのに熱中していた。
私ほど何度でもひっかかるヤツはいないそうだ。
ギャ! 叫ぶその度に先生に睨まれた。
もう… 悲しいばかりだわ…
石板で頭を割られるに値する男子がいるはずもない。
陰湿ないじめっ子はストーカー。 しつこく付け回されるので、
ある日怖くなった私は、持っていたサブバックを振り回した。
運悪く硯が入っていたため、彼はマジで頭をカチ割られそうになった。
学校に行くのが怖いわ…
やっと家に帰れば、母にメチャクチャ"逆上がり"を特訓されて、
手はマメだらけ、足は打ち身だらけ…
こうなると、 学校に行くのも帰るのもオモシロクない。
今なら私、断固登校を拒否する。
どこがオモシロイ世界なんだ。 でも…
待てよ… 冴えない事ばっかだけど、ちょっとオモシロイかもしれない。
いや、 私、かなりオモシロイ世界に生きていたかもしれん。
今の私の目には滑稽で鈍くさい私でも、確かにオモシロイ世界に生きていた。
卑怯で、滑稽で、鈍くさい私って… オモシロイ…?
ぶっちゃけてしまえば何て事ない。
いつまでもオモシロクないなんて言ってられないわ。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
お茶に招かれたダイアナが、スグリ酒で酔っぱらうお話は有名。
多くの読者は思うだろう。
「いくら子供でも、お酒とシロップの違いは飲めば判るんでないの?」 … という、疑問。
美味しければなんだってアリなのは、大人も子供も同じ。
だからこそ、躾はしっかり、 厳しくしなくてはいけない。 よ、ねっ? マリラ…
友達の家で酒盛りをしていたときの話。
私たちは割り箸をマドラー代わりに、一杯どころか相当飲んでいた。
友達には4歳になる娘さんがいた。
そういえば、ずっと私たちの側で何やら"やっていた"ような記憶がある。
割り箸を舐めていたのだ。 それも、何度も何度もね。
翌朝、いつまで経っても目を覚まさない。
心配して抱き上げてみると息が酒くさかったので、初めて気付いた、って訳。
彼女が熱心に舐めていたのは高級ブランディーでした。
そうしてみると、子供にだってお酒は美味しい飲み物なのかもしれない。
「お水 お水 ちょうだい」 って、 朝からおねだりしてたもの。
私もこどもの頃、"酒粕"が好物だった。
寒い夜は、火鉢でこんがり焼いた酒粕に、お砂糖をまぶして食べるのが
夜食代わりだった。
プックリ焦げた表面が香ばしく、酒粕の甘みと砂糖の甘さが絶妙でオイシイ。
粕とは言えども、"酒"と名が付いているのですから、
そんな食品をこどもに与える家庭は、今時ないだろうけど。
我が家のばあちゃんはこども8人を育て、
全員に酒粕を"おやつ"と称して食べさせていた。
酒屋から"サービス"で貰う酒粕は、最も安上がりなおやつだったのだ。
3時のおやつにも、ひとりでこっそり焼いて食べていた。
「酔う」という観念がないから、酔ったかどうかも定かでない。
ある日のこと、 一度に一枚全部を食べてみたい… という、
打ち勝ちがたい誘惑に負けてしまった。
さすがに気分が悪くなった。
これがマリラに知れたら、お尻を叩かれて根性を入れ替えさせられるところだ。
意地汚いマネをすると気分が悪くなる… 懲りたはずなのだが……
祖母に見つかって、お尻を叩かれた方が良かったかもしれない。
未だに私は、一人でつまみ食いをする時は全部食べてしまいたい誘惑に駆られる。
意地汚いのは直っていない。
No.16 『第16章 美味しい水』
お茶に招かれたダイアナが、スグリ酒で酔っぱらうお話は有名。
多くの読者は思うだろう。
「いくら子供でも、お酒とシロップの違いは飲めば判るんでないの?」 … という、疑問。
美味しければなんだってアリなのは、大人も子供も同じ。
だからこそ、躾はしっかり、 厳しくしなくてはいけない。 よ、ねっ? マリラ…
友達の家で酒盛りをしていたときの話。
私たちは割り箸をマドラー代わりに、一杯どころか相当飲んでいた。
友達には4歳になる娘さんがいた。
そういえば、ずっと私たちの側で何やら"やっていた"ような記憶がある。
割り箸を舐めていたのだ。 それも、何度も何度もね。
翌朝、いつまで経っても目を覚まさない。
心配して抱き上げてみると息が酒くさかったので、初めて気付いた、って訳。
彼女が熱心に舐めていたのは高級ブランディーでした。
そうしてみると、子供にだってお酒は美味しい飲み物なのかもしれない。
「お水 お水 ちょうだい」 って、 朝からおねだりしてたもの。
私もこどもの頃、"酒粕"が好物だった。
寒い夜は、火鉢でこんがり焼いた酒粕に、お砂糖をまぶして食べるのが
夜食代わりだった。
プックリ焦げた表面が香ばしく、酒粕の甘みと砂糖の甘さが絶妙でオイシイ。
粕とは言えども、"酒"と名が付いているのですから、
そんな食品をこどもに与える家庭は、今時ないだろうけど。
我が家のばあちゃんはこども8人を育て、
全員に酒粕を"おやつ"と称して食べさせていた。
酒屋から"サービス"で貰う酒粕は、最も安上がりなおやつだったのだ。
3時のおやつにも、ひとりでこっそり焼いて食べていた。
「酔う」という観念がないから、酔ったかどうかも定かでない。
ある日のこと、 一度に一枚全部を食べてみたい… という、
打ち勝ちがたい誘惑に負けてしまった。
さすがに気分が悪くなった。
これがマリラに知れたら、お尻を叩かれて根性を入れ替えさせられるところだ。
意地汚いマネをすると気分が悪くなる… 懲りたはずなのだが……
祖母に見つかって、お尻を叩かれた方が良かったかもしれない。
未だに私は、一人でつまみ食いをする時は全部食べてしまいたい誘惑に駆られる。
意地汚いのは直っていない。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
小学校5年の時の担任が大嫌いだ。 40歳前後の男の先生。
黒ぶちの丸眼鏡をかけて、いつも同じ茶色のツイードの上着に、
冬は毛糸のチョッキ、 という、教員を絵に描いたような冴えないスタイル。
何につけ皮肉っぽい、物の言い方が嫌いだった。
最近写真の整理をしていたら、当時の集合写真が見つかった。
「え〜っ 以外に若いなぁ、 嫌味なヤツにも見えないじゃないの…」
ダメダメ、 11歳の私は絶対許さないんだから!
さて、 私の担任教師は、忘れ物をする生徒を根こそぎ撲滅するために、
"教科書を忘れてきた生徒は、その科目の授業中は後ろに立つ"という、
独自の罰則を持っていた。
"教科書のない者は勉強するに及ばず"という訳だ。
常連の男の子達は悪びれもせず、ニヤニヤしながら後ろに立ったが、
女の子でこの罰を受けた子は一人もいなかった。
ところが不幸なことに、私はひどく物忘れの激しい生徒だった。
教科書だけは毎日確認していたのだが、 とうとうその日がやって来た。
忘れました、 算数の教科書。 それも1時間目。
私の家は小学校の塀の前にあった。
大きな木の枝葉の間から2階の私の部屋が見えた。
「あそこに… 教科書があるのに…」
私は絶対立たされたくない。
男の子と同じ目に合うなんて、恥ずかしくてたまらなかった。
「先生! お腹が痛いのでトイレに行かせてください。」
嘘をついた。
走りに走って家に帰ると私は教科書を持って、はぁはぁ言いながら教室に戻った。
「お腹は良くなったかな」
そう言った時の皮肉っぽい目が忘れられない。 本当に嫌な先生だった。
そんな彼の罰則と皮肉を持ってしても、結局私の忘れ物癖は
大して改善されなかった。
癖が直ったのは、 もっと、ずっと後のことだ。
子供の私は、学校があることを忘れてしまいたかった。
忘れ物をしたくらいでなによ。
私を立たせるなんて、 ほんとに嫌な先生だ。
No.15 『第15章 大嫌いな先生』
小学校5年の時の担任が大嫌いだ。 40歳前後の男の先生。
黒ぶちの丸眼鏡をかけて、いつも同じ茶色のツイードの上着に、
冬は毛糸のチョッキ、 という、教員を絵に描いたような冴えないスタイル。
何につけ皮肉っぽい、物の言い方が嫌いだった。
最近写真の整理をしていたら、当時の集合写真が見つかった。
「え〜っ 以外に若いなぁ、 嫌味なヤツにも見えないじゃないの…」
ダメダメ、 11歳の私は絶対許さないんだから!
さて、 私の担任教師は、忘れ物をする生徒を根こそぎ撲滅するために、
"教科書を忘れてきた生徒は、その科目の授業中は後ろに立つ"という、
独自の罰則を持っていた。
"教科書のない者は勉強するに及ばず"という訳だ。
常連の男の子達は悪びれもせず、ニヤニヤしながら後ろに立ったが、
女の子でこの罰を受けた子は一人もいなかった。
ところが不幸なことに、私はひどく物忘れの激しい生徒だった。
教科書だけは毎日確認していたのだが、 とうとうその日がやって来た。
忘れました、 算数の教科書。 それも1時間目。
私の家は小学校の塀の前にあった。
大きな木の枝葉の間から2階の私の部屋が見えた。
「あそこに… 教科書があるのに…」
私は絶対立たされたくない。
男の子と同じ目に合うなんて、恥ずかしくてたまらなかった。
「先生! お腹が痛いのでトイレに行かせてください。」
嘘をついた。
走りに走って家に帰ると私は教科書を持って、はぁはぁ言いながら教室に戻った。
「お腹は良くなったかな」
そう言った時の皮肉っぽい目が忘れられない。 本当に嫌な先生だった。
そんな彼の罰則と皮肉を持ってしても、結局私の忘れ物癖は
大して改善されなかった。
癖が直ったのは、 もっと、ずっと後のことだ。
子供の私は、学校があることを忘れてしまいたかった。
忘れ物をしたくらいでなによ。
私を立たせるなんて、 ほんとに嫌な先生だ。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
アンの巻き起こす騒動のなかでも、"紫水晶のブローチ紛失事件"は、
私の中では5本の指に入る。
何度読んでも、"事の真相がわかって良かった" と、ホッとする。
ピクニック行きたさにアンがでっちあげた"嘘の告白"は、
いかにもアンらしい筋立てになっている。
紫水晶のブローチがきらきらと輝きながら、 "輝く湖水"に深く、 深く……
沈んでいくのが、 差し伸べるアンの手が見えるような……
「私がブローチを持ち出して、湖水に落としてしまいました。」
そう言えばピクニックに行かせてもらえる。
半狂乱になるほどピクニックを待ち焦がれていた、アンの必死の嘘だ。
しかしこの嘘、 そんなに悪い嘘とは思えない。
マリラでさえ、嘘を言わせた自分も悪かったと認めているくらいだから。
ところが、私の子供としての生活は、実に日々恥ずかしい嘘で固められていた。
持ってもいないトランプを "持ってる" と言い、見せてと言われてアセる。
乗れもしない自転車に "乗れる" と豪語したばかりに、
"サイクリング遠足"にバスで行く言い訳に、人知れず悩む。
つい尾ひれをつけてしまうのは、嘘つきだからなのか、 想像力のせいなのか。
どうしてつまらない嘘をついてしまうのか…、 幼い私は真剣に悩んだ。
私の彼は小学校の時、友達に "ハワイに行った" と嘘を言い、
"ジャンボ機の中にはプールがある" などと途方も無い尾ひれをつけたらしい。
当然ながら嘘はバレて、親にこっぴどく叱られたそうだが、
この話を聞いて、正直私はホッとした。
更に… 20歳になってまで、大汗をかいたことを告白しなければならない。
皆の話題が趣味に及んだ時。 ちょうど囲碁をちょっとだけカジっていた私は、
"初段"がどんだけ強いか知りもせず、 「初段くらいかなぁ」などと
尾ひれをつけてしまった。
若い女の子の趣味が"囲碁"だなんて、
シブくてゾクゾクッとするお話になると思ったから。
ところが運悪く、その中に囲碁のできるヤツがいて、
「お手合わせを願います。」 なんて…
でも碁盤がないし… 逃げる私…
「あっ、黒板に書きましょう。」
名案を出す彼。 泡を吹いて倒れそうな私…
はい、 バレて全員に冷たく笑われました。
こんな嘘はもう嫌だとつくづく思う。 体に悪い。
アンはブローチを盗んでもいないのに、一生"泥棒"の烙印を押されてしまうし、
私は囲碁を本気で勉強して、最低でも初段にはなっていなければならない。
その時の友達には逢いたくないなぁ。 また話の種にされてしまいそう。
「お手合わせ願いますかな!」
No.14 『第14章 嘘の告白』
アンの巻き起こす騒動のなかでも、"紫水晶のブローチ紛失事件"は、
私の中では5本の指に入る。
何度読んでも、"事の真相がわかって良かった" と、ホッとする。
ピクニック行きたさにアンがでっちあげた"嘘の告白"は、
いかにもアンらしい筋立てになっている。
紫水晶のブローチがきらきらと輝きながら、 "輝く湖水"に深く、 深く……
沈んでいくのが、 差し伸べるアンの手が見えるような……
「私がブローチを持ち出して、湖水に落としてしまいました。」
そう言えばピクニックに行かせてもらえる。
半狂乱になるほどピクニックを待ち焦がれていた、アンの必死の嘘だ。
しかしこの嘘、 そんなに悪い嘘とは思えない。
マリラでさえ、嘘を言わせた自分も悪かったと認めているくらいだから。
ところが、私の子供としての生活は、実に日々恥ずかしい嘘で固められていた。
持ってもいないトランプを "持ってる" と言い、見せてと言われてアセる。
乗れもしない自転車に "乗れる" と豪語したばかりに、
"サイクリング遠足"にバスで行く言い訳に、人知れず悩む。
つい尾ひれをつけてしまうのは、嘘つきだからなのか、 想像力のせいなのか。
どうしてつまらない嘘をついてしまうのか…、 幼い私は真剣に悩んだ。
私の彼は小学校の時、友達に "ハワイに行った" と嘘を言い、
"ジャンボ機の中にはプールがある" などと途方も無い尾ひれをつけたらしい。
当然ながら嘘はバレて、親にこっぴどく叱られたそうだが、
この話を聞いて、正直私はホッとした。
更に… 20歳になってまで、大汗をかいたことを告白しなければならない。
皆の話題が趣味に及んだ時。 ちょうど囲碁をちょっとだけカジっていた私は、
"初段"がどんだけ強いか知りもせず、 「初段くらいかなぁ」などと
尾ひれをつけてしまった。
若い女の子の趣味が"囲碁"だなんて、
シブくてゾクゾクッとするお話になると思ったから。
ところが運悪く、その中に囲碁のできるヤツがいて、
「お手合わせを願います。」 なんて…
でも碁盤がないし… 逃げる私…
「あっ、黒板に書きましょう。」
名案を出す彼。 泡を吹いて倒れそうな私…
はい、 バレて全員に冷たく笑われました。
こんな嘘はもう嫌だとつくづく思う。 体に悪い。
アンはブローチを盗んでもいないのに、一生"泥棒"の烙印を押されてしまうし、
私は囲碁を本気で勉強して、最低でも初段にはなっていなければならない。
その時の友達には逢いたくないなぁ。 また話の種にされてしまいそう。
「お手合わせ願いますかな!」
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
「期待せざる者は幸いなり、失望せざればなり」。
リンド夫人はさも分別ありげにアンを諭したのだろうが、
アンにそんな説教は通じない。
「楽しみの半分は、それを待っていることにあるのよ。」
そう、 あんたはマリラをウンザリさせるほどしゃべり倒して、
待っているわね。
人に期待すれば、裏切られる。 いい事なんかそうそうあるもんじゃない。
私は、 "期待する事とは夢や希望を持つ事" と思っている。
そしてついに夢のしっぽを掴んだら、 うんと楽しまなくちゃ。
去年の秋。 私達はオーストラリアへ旅行した。
懸賞に当たったの。 そうそうありそうにもない事だ。
事の始まりは私の予感からだった。 何かに当たりそうな気がしていた。
そんなある日、 彼が突然ハガキの束を私に渡して、
「3日間に分けて毎朝投函するんよ。 オーストラリアに行こう。」
"当たったらいいな…" どころか、もう行く気まんまんの私達。
辛い時、 落ち込んだ時は、どちらからともなく、
「でも、 秋にはオーストラリア行くもんねェ〜 」と言っては、
わくわくしてはしゃぎ回った。 当たらなくても充分元を取ったくらいに。
本当に"当選"の連絡がきた日は、それこそ信じられなかった。
「新手の詐欺じゃねーのかァ〜?」などと疑ってみたりもした。
とりあえず夢じゃないかどうか、生まれて初めてつねってみたね。
「タダでもらったァ〜 タダでもらったァ〜 オーストラリアりょこう〜 」
なんて唄っては、二人で家の中を踊り歩いた。
ピクニックに浮かれるアンの気持ちが心底わかった。
夢のような幸運が自分にも降ってくることはある。
その極意は… おしゃべりになることだ。
何かいいことありそうな気がしたら、誰かに話すこと。
欲しい物、好きな物、 叶えたい夢を話すこと。
それが相呼ぶ魂の人だったら更にいい。
そして、 欲しい物がもう手に入ったかのように喜んだり、
もう夢が叶えられたような、うれしい気持ちになればシメたもの。
幸運の妖精が、話を聞きつけてやって来る。
No.13 『第13章 幸運の妖精』
「期待せざる者は幸いなり、失望せざればなり」。
リンド夫人はさも分別ありげにアンを諭したのだろうが、
アンにそんな説教は通じない。
「楽しみの半分は、それを待っていることにあるのよ。」
そう、 あんたはマリラをウンザリさせるほどしゃべり倒して、
待っているわね。
人に期待すれば、裏切られる。 いい事なんかそうそうあるもんじゃない。
私は、 "期待する事とは夢や希望を持つ事" と思っている。
そしてついに夢のしっぽを掴んだら、 うんと楽しまなくちゃ。
去年の秋。 私達はオーストラリアへ旅行した。
懸賞に当たったの。 そうそうありそうにもない事だ。
事の始まりは私の予感からだった。 何かに当たりそうな気がしていた。
そんなある日、 彼が突然ハガキの束を私に渡して、
「3日間に分けて毎朝投函するんよ。 オーストラリアに行こう。」
"当たったらいいな…" どころか、もう行く気まんまんの私達。
辛い時、 落ち込んだ時は、どちらからともなく、
「でも、 秋にはオーストラリア行くもんねェ〜 」と言っては、
わくわくしてはしゃぎ回った。 当たらなくても充分元を取ったくらいに。
本当に"当選"の連絡がきた日は、それこそ信じられなかった。
「新手の詐欺じゃねーのかァ〜?」などと疑ってみたりもした。
とりあえず夢じゃないかどうか、生まれて初めてつねってみたね。
「タダでもらったァ〜 タダでもらったァ〜 オーストラリアりょこう〜 」
なんて唄っては、二人で家の中を踊り歩いた。
ピクニックに浮かれるアンの気持ちが心底わかった。
夢のような幸運が自分にも降ってくることはある。
その極意は… おしゃべりになることだ。
何かいいことありそうな気がしたら、誰かに話すこと。
欲しい物、好きな物、 叶えたい夢を話すこと。
それが相呼ぶ魂の人だったら更にいい。
そして、 欲しい物がもう手に入ったかのように喜んだり、
もう夢が叶えられたような、うれしい気持ちになればシメたもの。
幸運の妖精が、話を聞きつけてやって来る。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
原文では "bosom friend"。
英和辞典ではあっさり「親友」と訳されているが、
アンの熱烈な思い入れを表現するために、様々な日本語に訳されている。
「腹心の友」 「宿命の友」 「相呼ぶ魂」
どれもアンの心をゾクゾクさせるだろう。
「ソウルメイト」ってのもアリじゃないかなぁ…。
私は昔から相呼ぶ魂の人を嗅ぎ分けられる。
小学校4年生の時、私は宿命の友に出逢った。
彼女はすらりと背が高く、賢そうな切れ長の目をしていた。
他のクラスメートと同じ様に、ブルマにスカートをたくし込んで、
ゴム飛びをする時ですら、彼女は上品だった。
勉強も良く出来た。
宿題をするのは彼女には当然のことだし、忘れ物も無かった。
筆を洗うバケツ、 給食当番が使うマスクや鉛筆を削るナイフに至るまで、
毎日が完璧だった。
私は… というと、これらが「なくてはならない物」とは思えなかったので、
よく忘れた。
どうやって彼女と友達になったのか、全然憶えてないけど、
どうせ私のことだからガツガツ押しかけていったんだろう。
彼女はピアノが上手だった。
学芸会の合唱の伴奏をする姿にうっとりしたものだ。
家に遊びに行ったとき、ピアノを弾いてくれた。
「エリーゼのために」だった。
もう、その感動といったら…、
ズバリ! 花輪君のヴァイオリンに聴きほれる、ウルウルのちびまる子。
彼女には弟が二人いた。 私は妹が一人。
弟を持つことに憧れた。
大学の先生をしているお父さんに憧れた。
お父さんが双子、 と聞くとそれにも憧れ、 しまいには彼女愛用の
10年モノの筆箱が輪ゴムで留めてあることにまで憧れた。
2年後、 彼女が長野県へ引っ越すことになった時。
まさに私は愕然とし、 次に悲しみのどん底に突き落とされた。
離ればなれになる悲しさというものをそれまで知らなかったのだ。
それから15年が過ぎ、彼女から手紙が届いた。
「赤毛のアンの島を訪れました… 」
やっぱり、 相呼ぶ魂だったんだ。
No.12 『第12章 相呼ぶ魂』
原文では "bosom friend"。
英和辞典ではあっさり「親友」と訳されているが、
アンの熱烈な思い入れを表現するために、様々な日本語に訳されている。
「腹心の友」 「宿命の友」 「相呼ぶ魂」
どれもアンの心をゾクゾクさせるだろう。
「ソウルメイト」ってのもアリじゃないかなぁ…。
私は昔から相呼ぶ魂の人を嗅ぎ分けられる。
小学校4年生の時、私は宿命の友に出逢った。
彼女はすらりと背が高く、賢そうな切れ長の目をしていた。
他のクラスメートと同じ様に、ブルマにスカートをたくし込んで、
ゴム飛びをする時ですら、彼女は上品だった。
勉強も良く出来た。
宿題をするのは彼女には当然のことだし、忘れ物も無かった。
筆を洗うバケツ、 給食当番が使うマスクや鉛筆を削るナイフに至るまで、
毎日が完璧だった。
私は… というと、これらが「なくてはならない物」とは思えなかったので、
よく忘れた。
どうやって彼女と友達になったのか、全然憶えてないけど、
どうせ私のことだからガツガツ押しかけていったんだろう。
彼女はピアノが上手だった。
学芸会の合唱の伴奏をする姿にうっとりしたものだ。
家に遊びに行ったとき、ピアノを弾いてくれた。
「エリーゼのために」だった。
もう、その感動といったら…、
ズバリ! 花輪君のヴァイオリンに聴きほれる、ウルウルのちびまる子。
彼女には弟が二人いた。 私は妹が一人。
弟を持つことに憧れた。
大学の先生をしているお父さんに憧れた。
お父さんが双子、 と聞くとそれにも憧れ、 しまいには彼女愛用の
10年モノの筆箱が輪ゴムで留めてあることにまで憧れた。
2年後、 彼女が長野県へ引っ越すことになった時。
まさに私は愕然とし、 次に悲しみのどん底に突き落とされた。
離ればなれになる悲しさというものをそれまで知らなかったのだ。
それから15年が過ぎ、彼女から手紙が届いた。
「赤毛のアンの島を訪れました… 」
やっぱり、 相呼ぶ魂だったんだ。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
すてきな服は女の子の夢だ。
アンくらいの年頃の子にとって、すてきな服とは"みんなが着ているような服"と言える。
ひとりだけ個性的で趣味がいいより、みんなといっしょに普通の服を着て、
つきなみな方がいい。
母は洋裁が得意だったから、小さい時から服はほとんどお手製だった。
マリラとは違って、流行を取り入れるセンスがあり、結構可愛い服を縫ってもらった。
ピアノの発表会の時には、ほとんどの子は制服の白のブラウスだったが、
私は母の手製のブラウスを着た。
それはクリーム色の丸襟のブラウスで、おまけにアンの憧れの小さなパフスリーブ、
胸にはスモック刺繍が施されて、制服の紺のプリーツスカートに似合っていた。
母は制服も縫った。 何着か古着の制服をどこからか集めてきて、
傷んでない所をつなぎ合わせて1着を作るのだ。
制服は小さな襟に白の替え襟をボタンで留めつけるデザインになっている。
ところが出来上がりは、型紙の取り間違えで襟ぐりの大きなシャツカラーになり、
白襟をつけるとますます襟が目立ってしまう。
着るとまるで"ろくろ首"みたいに見える。 服というより襟を着てる感じだ。
母は一言。
「襟が大きすぎたわ。」
5年生、6年生の2年間はその「襟」を着た。
おかげで学芸会、遠足、どの写真を見ても、何の苦もなく私を見つけられる。
襟が「矢印」みたいに私を指し示しているからだ。
あ〜あ、 みんなと同じ襟なら、擦り切れてくたびれた制服でもよかったのに……
母もこの失敗を踏まえて、中学の制服は考えたようだ。
例によって古着を貰ってきて、今度は擦り切れて薄くなった肘の部分に、
見事な「つぎ」を当てた。
遠目には絶対わからない程の完璧な掛継だった。
でも友達とは遠目の付き合いはしないもの。 これにはがっかりしたが、
今度も母の一言。
「ちゃんと直しといたから。」
くたびれて擦り切れていても、みんなと同じの襟で、「つぎ当て」のない制服が着たい。
口数の少ない母は、更に有無を言わせないトドメの矢を1本、私の胸に的中させた。
「どこが気に入らないの。 穴が開いたままじゃないのよ。
ちゃんと直してあるんだから、恥ずかしくないよ。」
マリラ以上に怖い。
No.11 『第11章 白い襟』
すてきな服は女の子の夢だ。
アンくらいの年頃の子にとって、すてきな服とは"みんなが着ているような服"と言える。
ひとりだけ個性的で趣味がいいより、みんなといっしょに普通の服を着て、
つきなみな方がいい。
母は洋裁が得意だったから、小さい時から服はほとんどお手製だった。
マリラとは違って、流行を取り入れるセンスがあり、結構可愛い服を縫ってもらった。
ピアノの発表会の時には、ほとんどの子は制服の白のブラウスだったが、
私は母の手製のブラウスを着た。
それはクリーム色の丸襟のブラウスで、おまけにアンの憧れの小さなパフスリーブ、
胸にはスモック刺繍が施されて、制服の紺のプリーツスカートに似合っていた。
母は制服も縫った。 何着か古着の制服をどこからか集めてきて、
傷んでない所をつなぎ合わせて1着を作るのだ。
制服は小さな襟に白の替え襟をボタンで留めつけるデザインになっている。
ところが出来上がりは、型紙の取り間違えで襟ぐりの大きなシャツカラーになり、
白襟をつけるとますます襟が目立ってしまう。
着るとまるで"ろくろ首"みたいに見える。 服というより襟を着てる感じだ。
母は一言。
「襟が大きすぎたわ。」
5年生、6年生の2年間はその「襟」を着た。
おかげで学芸会、遠足、どの写真を見ても、何の苦もなく私を見つけられる。
襟が「矢印」みたいに私を指し示しているからだ。
あ〜あ、 みんなと同じ襟なら、擦り切れてくたびれた制服でもよかったのに……
母もこの失敗を踏まえて、中学の制服は考えたようだ。
例によって古着を貰ってきて、今度は擦り切れて薄くなった肘の部分に、
見事な「つぎ」を当てた。
遠目には絶対わからない程の完璧な掛継だった。
でも友達とは遠目の付き合いはしないもの。 これにはがっかりしたが、
今度も母の一言。
「ちゃんと直しといたから。」
くたびれて擦り切れていても、みんなと同じの襟で、「つぎ当て」のない制服が着たい。
口数の少ない母は、更に有無を言わせないトドメの矢を1本、私の胸に的中させた。
「どこが気に入らないの。 穴が開いたままじゃないのよ。
ちゃんと直してあるんだから、恥ずかしくないよ。」
マリラ以上に怖い。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
「ちびまる子」には"友蔵おじいちゃん"という強い(?)味方がついてるし、
アンとマシューは「相呼ぶ魂」同士の仲良しだ。
友蔵も、マシューも、 かわいいこどもの肩を持ってくれる。
アンが部屋から出てこないのが心配で、可哀想でならないマシューは、
こっそりアンに会いに行く。
リンド夫人に謝るまでは部屋を出さない、 と言い渡すマリラ。
アンは生涯幽閉の身となる覚悟を決めていたのだが…
「いっそのこと、さっさとやってしまってさっぱりしたほうが
いいと思わないかね?」
マリラは言い出したら後へは引かないし、ここは謝ってしまえば、
すべてが丸く収まるというものだ。
アンが大好きなマシューのためにリンド夫人に謝る気になる…
このシーンに私は「ちびまる子」を思い出してしまう。
「おじいちゃぁ〜ん!」
「まる子やぁぁ〜〜」
小さな子供には味方になってくれる人が必要だ。
家族全員から同じ方針で躾られたら息が詰まってしまう。
12才くらいの時。 そそっかしい私は、ある日失敗を連発した。
苦労して持って帰った鉢植えなのに、
家に着いたらいきなり落として割ってしまった。
叱られてぼんやり食事をしていたら、みそ汁を座布団の上にぶちまけた。
"手元を見ていない" と、さんざん叱られて泣き泣き茶碗を洗っていると、
今度は母のお気に入りの鉢物を取り落とし、あわやコッパ微塵になるところを
何とか救ったものの、縁が欠けてしまった。
これがトドメとなったことだけが不幸中の幸いだったと言える。
しかし、 謝って許してもらえると思ったら大間違いだ。
その鉢は大変高価なものだったらしい。
どんなに涙を流しても母の機嫌は直らなかった。
父がそっと台所にやって来て、
「形ある物は、必ず壊れるんだから。」
そう言って、瞬間接着剤で欠けた鉢を修復してくれた。
母が機嫌を直してくれる事を諦めた私にとって、
その言葉は大きな慰めになった。
その時の私の心境は、
「おとうさぁ〜ん!」
「よしこやぁぁ〜〜」
であったことは言うまでもない。
No.10 『第10章 こどもの味方』
「ちびまる子」には"友蔵おじいちゃん"という強い(?)味方がついてるし、
アンとマシューは「相呼ぶ魂」同士の仲良しだ。
友蔵も、マシューも、 かわいいこどもの肩を持ってくれる。
アンが部屋から出てこないのが心配で、可哀想でならないマシューは、
こっそりアンに会いに行く。
リンド夫人に謝るまでは部屋を出さない、 と言い渡すマリラ。
アンは生涯幽閉の身となる覚悟を決めていたのだが…
「いっそのこと、さっさとやってしまってさっぱりしたほうが
いいと思わないかね?」
マリラは言い出したら後へは引かないし、ここは謝ってしまえば、
すべてが丸く収まるというものだ。
アンが大好きなマシューのためにリンド夫人に謝る気になる…
このシーンに私は「ちびまる子」を思い出してしまう。
「おじいちゃぁ〜ん!」
「まる子やぁぁ〜〜」
小さな子供には味方になってくれる人が必要だ。
家族全員から同じ方針で躾られたら息が詰まってしまう。
12才くらいの時。 そそっかしい私は、ある日失敗を連発した。
苦労して持って帰った鉢植えなのに、
家に着いたらいきなり落として割ってしまった。
叱られてぼんやり食事をしていたら、みそ汁を座布団の上にぶちまけた。
"手元を見ていない" と、さんざん叱られて泣き泣き茶碗を洗っていると、
今度は母のお気に入りの鉢物を取り落とし、あわやコッパ微塵になるところを
何とか救ったものの、縁が欠けてしまった。
これがトドメとなったことだけが不幸中の幸いだったと言える。
しかし、 謝って許してもらえると思ったら大間違いだ。
その鉢は大変高価なものだったらしい。
どんなに涙を流しても母の機嫌は直らなかった。
父がそっと台所にやって来て、
「形ある物は、必ず壊れるんだから。」
そう言って、瞬間接着剤で欠けた鉢を修復してくれた。
母が機嫌を直してくれる事を諦めた私にとって、
その言葉は大きな慰めになった。
その時の私の心境は、
「おとうさぁ〜ん!」
「よしこやぁぁ〜〜」
であったことは言うまでもない。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
アン、 あなたの気持ちは良くわかる。
わかりはするけど、リンド夫人に癇癪玉をぶつけるようじゃまだまだ青いわ。
少々の事は挨拶代わりの愛想ぐらいに思ってないとやってられないわよ。
と、 今でこそ"どんなコンプレックスにも救いはあるもの"と思える私も、
こうなるまでには色々あった。
人にはっきりモノを言う人って、 よくもまあ、何の躊躇もなく、
スラスラと言ってくれる。
赤毛だとか、器量のことについてとやかく言われりゃ、そりゃ誰だって嫌だわ。
しかし… ヤツらは実に巧妙に攻めてくる。 気を付けなくちゃ。
「あなた、相変わらずスマートねえ。 何で腕だけそんなに太いん?」
という、"攻撃は最大の防御"作戦。
そういうアンタは腕といわず、どこもかしこも太いクセに。
「まぁ、元気? んも〜 私なんかぶくぶく太っちゃって… ねぇ?」
という、"先手必勝"作戦。
ホント、スゴイ… ブクブク… なんて素直に返したら、どうなることやら…
恐ろしい。
「まぁ あなた、またシミが増えたじゃないの…
でもね、シミは家紋だと思えばいいんだから」
って… "紋付き"ってこと?
いちいち言い返していたら毎日が修羅場になってしまう。
と言いつつも、 家に帰って鏡をまじまじと見ては、そんなに目立つかなぁ、
やっぱ目立つわぁ… としょんぼりしてしまうのでした。
自分でも身体の割合からすると、腕が太すぎると分かっているけど、
他人はそう思ってなければいいな、 と願うものなのよ。
でも… どんなコンプレックスにも救いはあるもの。
私の彼は「女性に対して失礼とは思うけど」と断ってから、
「そうさなぁ… どっちかというと、腕は太いかもなぁ…」
ぷにゅぷにゅした感触が気持ちいいそうだ。
複雑だけど、とても嬉しい。
アンの髪だって、きっと見事な赤褐色になると思うわ。
そんな赤褐色の髪を美しい、 って囁かれる日がきっと来る。
No.9 『第9章 コンプレックス』
アン、 あなたの気持ちは良くわかる。
わかりはするけど、リンド夫人に癇癪玉をぶつけるようじゃまだまだ青いわ。
少々の事は挨拶代わりの愛想ぐらいに思ってないとやってられないわよ。
と、 今でこそ"どんなコンプレックスにも救いはあるもの"と思える私も、
こうなるまでには色々あった。
人にはっきりモノを言う人って、 よくもまあ、何の躊躇もなく、
スラスラと言ってくれる。
赤毛だとか、器量のことについてとやかく言われりゃ、そりゃ誰だって嫌だわ。
しかし… ヤツらは実に巧妙に攻めてくる。 気を付けなくちゃ。
「あなた、相変わらずスマートねえ。 何で腕だけそんなに太いん?」
という、"攻撃は最大の防御"作戦。
そういうアンタは腕といわず、どこもかしこも太いクセに。
「まぁ、元気? んも〜 私なんかぶくぶく太っちゃって… ねぇ?」
という、"先手必勝"作戦。
ホント、スゴイ… ブクブク… なんて素直に返したら、どうなることやら…
恐ろしい。
「まぁ あなた、またシミが増えたじゃないの…
でもね、シミは家紋だと思えばいいんだから」
って… "紋付き"ってこと?
いちいち言い返していたら毎日が修羅場になってしまう。
と言いつつも、 家に帰って鏡をまじまじと見ては、そんなに目立つかなぁ、
やっぱ目立つわぁ… としょんぼりしてしまうのでした。
自分でも身体の割合からすると、腕が太すぎると分かっているけど、
他人はそう思ってなければいいな、 と願うものなのよ。
でも… どんなコンプレックスにも救いはあるもの。
私の彼は「女性に対して失礼とは思うけど」と断ってから、
「そうさなぁ… どっちかというと、腕は太いかもなぁ…」
ぷにゅぷにゅした感触が気持ちいいそうだ。
複雑だけど、とても嬉しい。
アンの髪だって、きっと見事な赤褐色になると思うわ。
そんな赤褐色の髪を美しい、 って囁かれる日がきっと来る。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.8 『第8章 心のアンチエイジング』
「どこの子でもないただのアンとくらべたら、
グリーン ゲーブルズのアンのほうが、百万倍もすてきよ。」
この箇所がとても好きだ。
赤毛で、やせっぽちで、そばかすだらけの顔が映った鏡にキスするところがいい。
「グリーン ゲーブルズのアン」 誕生の瞬間だ。
ひとつの夢が叶うと、次々に夢が叶えられていく、
アンはそんな予感を的中させてくれる。
私なんか、いいことがあったら次には悪いことが起こるに決まってるわと、
ある程度覚悟したりする。
でも、この物語のいい所は、素直な楽観性。
それを信じさせてくれるだけの魅力を、アンは持っている。
しかし、作者のL.M.モンゴメリーがこの物語を書いた時、
彼女自身は心配、憂鬱、心労をかかえていた精神状態だったという。
日記にはこう書かれている。
「他の人の人生を暗くしたいなんて願うわけがない。
私は楽観主義を伝える人、太陽のようにぽかぽか暖める人になりたい。」 (山本史郎訳 「赤毛のアン」〜解説〜より)
赤毛で、そばかすだらけのやせっぽち、コンプレックスの塊のような
アンが私たちに元気を与えてくれる。
読み進むうちに、確かにぽかぽかと暖められるのです。
これぞ、"悲観的で年寄りじみてくる心"のアンチエイジング!
若かった頃の気持ちが蘇り、今の私を少しずつ変えていく。
アンのようにはなれなかったけど、こうして大好きだったアンの事を書いている。
嫌な思い出は誰にも言わずに隠してたけど、笑える思い出に変えられる。
そんな私のつたない文章が、誰かの心に
「わたしだって! 昔はものすごくアンが好きだったんだから〜」
と、火をつけてくれればいい。
「何じゃなぁ……」のため息を笑いに変えて、今日もアンを読んでいる。
何を考えているのかわからん私より、"赤毛のアンが好き"と言える私の方がずっといい。
グリーン ゲーブルズのアンのほうが、百万倍もすてきよ。」
この箇所がとても好きだ。
赤毛で、やせっぽちで、そばかすだらけの顔が映った鏡にキスするところがいい。
「グリーン ゲーブルズのアン」 誕生の瞬間だ。
ひとつの夢が叶うと、次々に夢が叶えられていく、
アンはそんな予感を的中させてくれる。
私なんか、いいことがあったら次には悪いことが起こるに決まってるわと、
ある程度覚悟したりする。
でも、この物語のいい所は、素直な楽観性。
それを信じさせてくれるだけの魅力を、アンは持っている。
しかし、作者のL.M.モンゴメリーがこの物語を書いた時、
彼女自身は心配、憂鬱、心労をかかえていた精神状態だったという。
日記にはこう書かれている。
「他の人の人生を暗くしたいなんて願うわけがない。
私は楽観主義を伝える人、太陽のようにぽかぽか暖める人になりたい。」 (山本史郎訳 「赤毛のアン」〜解説〜より)
赤毛で、そばかすだらけのやせっぽち、コンプレックスの塊のような
アンが私たちに元気を与えてくれる。
読み進むうちに、確かにぽかぽかと暖められるのです。
これぞ、"悲観的で年寄りじみてくる心"のアンチエイジング!
若かった頃の気持ちが蘇り、今の私を少しずつ変えていく。
アンのようにはなれなかったけど、こうして大好きだったアンの事を書いている。
嫌な思い出は誰にも言わずに隠してたけど、笑える思い出に変えられる。
そんな私のつたない文章が、誰かの心に
「わたしだって! 昔はものすごくアンが好きだったんだから〜」
と、火をつけてくれればいい。
「何じゃなぁ……」のため息を笑いに変えて、今日もアンを読んでいる。
何を考えているのかわからん私より、"赤毛のアンが好き"と言える私の方がずっといい。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
OL生活が長くなると、「はい、わかりました。」が、口癖になる。
「この作業は何のためにするのですか?」
→「1ヶ月で出来るか?」
「出来ると思いますが、どこに出す資料でしょうか?」
→「無理のない程度で出来るだけ早くたのむ。」
事務員に"目的"は不要なのだろう。 「はい、わかりました」と言うしかない。
今一度、アンを読み返していて気付いたんだけど…
アンって、 何か用事を言いつけられたり、注意された時に、
素直に「はい」と言うことはまずない。
実に何というか、私からみると堂々としている。
アンの言い訳には、彼女の"偽らない本音"がある。
赤毛だと、いい子になるよりはどうしても悪い子になってしまう、
なんて"傑作"だが、 笑えない。
私だって、色白でシミひとつなくて、サラサラの髪だったら、
もっと他人の欠点を大目にみることも容易だろうと思う。
まして心がずたずたなのに、仕事どころではない。
しかし、そんなアンの"言い訳"に、時に私はハッとさせられる。
物事の核心=本当の意味を問いかけてくるのだ。
「お祈りをするときは、どうしてひざまずかなくちゃいけないのかしら?」
アンは、心で祈りを感じるときに祈りは生まれると言っているのだ。
言い訳をせず、自分の非を素直に認めることが美徳である、という考えは
決して間違いではない。
が、 私のように 「はい、わかりました」 と答えるしかない現実もある。
そんな "物事の本質" を見失わないでいたい。
「なぜ?」 「何のために?」
アンを見ていると、今まで言葉にできなかった気持ちが素直に心に蘇ってくる。
No.7 『第7章 言い訳』
OL生活が長くなると、「はい、わかりました。」が、口癖になる。
「この作業は何のためにするのですか?」
→「1ヶ月で出来るか?」
「出来ると思いますが、どこに出す資料でしょうか?」
→「無理のない程度で出来るだけ早くたのむ。」
事務員に"目的"は不要なのだろう。 「はい、わかりました」と言うしかない。
今一度、アンを読み返していて気付いたんだけど…
アンって、 何か用事を言いつけられたり、注意された時に、
素直に「はい」と言うことはまずない。
実に何というか、私からみると堂々としている。
アンの言い訳には、彼女の"偽らない本音"がある。
赤毛だと、いい子になるよりはどうしても悪い子になってしまう、
なんて"傑作"だが、 笑えない。
私だって、色白でシミひとつなくて、サラサラの髪だったら、
もっと他人の欠点を大目にみることも容易だろうと思う。
まして心がずたずたなのに、仕事どころではない。
しかし、そんなアンの"言い訳"に、時に私はハッとさせられる。
物事の核心=本当の意味を問いかけてくるのだ。
「お祈りをするときは、どうしてひざまずかなくちゃいけないのかしら?」
アンは、心で祈りを感じるときに祈りは生まれると言っているのだ。
言い訳をせず、自分の非を素直に認めることが美徳である、という考えは
決して間違いではない。
が、 私のように 「はい、わかりました」 と答えるしかない現実もある。
そんな "物事の本質" を見失わないでいたい。
「なぜ?」 「何のために?」
アンを見ていると、今まで言葉にできなかった気持ちが素直に心に蘇ってくる。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.6 『第6章 オンナ気スイッチ』
「この女、ワシがおらんとアカンのんちゃうかぁ…?」
そう思ったら、押してはいけない"男気スイッチ"に手がいってしまい、
「よっしゃ、ワシが面倒みてやる!」と言ってしまう。
"そんな男気スイッチがある"と、お笑いタレントが悔しそうに告白していた。
うんうん、 確かにそんなスイッチ、私にもある。
役員を決める会議で、誰もが自分の都合を主張して、時間だけが過ぎてゆく。
こんな人達に任せるくらいだったら、私がやるわ!
ポチッ
こうして役を引き受けたことがあったっけ…
そのためにひどい失敗をしたこともあったっけ…
自分から責任を背負い込むのは嫌だから、最近の私は消極的だ。
迷っている時は止めることにしている。
事の真相を確かめるべくスペンサー家を訪れるまでは、
マリラはアンをどうしたものかと迷っていた。
間違いを正すには、孤児院へ送り返すのが一番の方法だ。
道すがら聞いた、アンの身の上話に心を動かされてはいたが…
しかし、一見厳格で、融通の効かないマリラが、
どうしてアンを引き取る気持ちになったのやら。
冷静なマリラがその場の雰囲気に流されたとは思えない。
ただ、手伝いの子を欲しがっているブリューエットの奥さんに
アンを渡すことが、神のお導きとは思わなかったことだけは確かだ。
だって、ブリューエットの奥さんはアンを上から下まで品定めして、
食いぶち分は働くなら貰ってやるって言うのよ。
この女、絶対食いぶち以上にこき使うと思うわ。
「そんな可愛そうなこと、私には出来ないね。」
ポチッ
マリラはオンナ気スイッチを押したのかもしれない。
私は、それが神のお導きってものだと思う。
マリラ、あなたとなら人の悪口を言い合うのがさぞかし楽しいだろうと思うわ。
あたしだって、ブリューエットって人に猫の子一匹やりたかないもの!
そう思ったら、押してはいけない"男気スイッチ"に手がいってしまい、
「よっしゃ、ワシが面倒みてやる!」と言ってしまう。
"そんな男気スイッチがある"と、お笑いタレントが悔しそうに告白していた。
うんうん、 確かにそんなスイッチ、私にもある。
役員を決める会議で、誰もが自分の都合を主張して、時間だけが過ぎてゆく。
こんな人達に任せるくらいだったら、私がやるわ!
ポチッ
こうして役を引き受けたことがあったっけ…
そのためにひどい失敗をしたこともあったっけ…
自分から責任を背負い込むのは嫌だから、最近の私は消極的だ。
迷っている時は止めることにしている。
事の真相を確かめるべくスペンサー家を訪れるまでは、
マリラはアンをどうしたものかと迷っていた。
間違いを正すには、孤児院へ送り返すのが一番の方法だ。
道すがら聞いた、アンの身の上話に心を動かされてはいたが…
しかし、一見厳格で、融通の効かないマリラが、
どうしてアンを引き取る気持ちになったのやら。
冷静なマリラがその場の雰囲気に流されたとは思えない。
ただ、手伝いの子を欲しがっているブリューエットの奥さんに
アンを渡すことが、神のお導きとは思わなかったことだけは確かだ。
だって、ブリューエットの奥さんはアンを上から下まで品定めして、
食いぶち分は働くなら貰ってやるって言うのよ。
この女、絶対食いぶち以上にこき使うと思うわ。
「そんな可愛そうなこと、私には出来ないね。」
ポチッ
マリラはオンナ気スイッチを押したのかもしれない。
私は、それが神のお導きってものだと思う。
マリラ、あなたとなら人の悪口を言い合うのがさぞかし楽しいだろうと思うわ。
あたしだって、ブリューエットって人に猫の子一匹やりたかないもの!
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.5 『第5章 私は夢みる夢子』
すっかり忘れていたけど、アンの生い立ちはかなり悲惨だったのね。
生まれた時から赤毛で痩せて目ばかり大きいブサイクな子が、
3ヶ月の時両親をなくして、他人の家をたらいまわしにされ、
こき使われ、優しくもされず、いつも悪い子だとしかられ続けていたら、
まともな子になる訳がない。
この物語は少女には読ませられない"貧困と犯罪の物語"になっても
おかしくはない。
人は生まれた環境の中で人格を形成するといわれているし。
よくまぁ、 ひねくれもせず… と思う。
なぜなの? Anne?
私の想像力は"厳しい現実"に直面し、グレていた。
「想像の余地があるってものよ」 …と、アンの真似はしてみるけど、
余地を充分埋めているかどうか、怪しい。
今の私はマンション暮らし。
想像で補わなければならない余地が、福岡ドーム3つ分くらいありそうなんだ。
家には夢があった。
川沿いの緑豊かな散歩道、木立のきらめきの差し込む窓、ベランダの草花、
ひとつひとつが削られて、私の経済でまかなえるきつきつの物件に落ち着いた。
工場地域の真ん中で、見えるのは工場の灰色の屋根と、
排気ダクトがブザマに突き出た壁、 機械の動く音と、排気の匂い…
自分ひとりで探して買った、大切な家。
私の想像力で夢に近づけようか… アンを読むうちにそんな気持ちになってきた。
子供っぽいかなぁ… でも、まぁ、 いいや。 誰にも言わんし。
これでも昔は「夢みる夢子」とまで言われたんだから。
スコットランドの湖水地方の様な、なだらかな山々、
緑の草原を想像してるかって?
いえいえ。
私は工場の灰色の屋根に話しかける。
「暑いわ… あんた、 暑いでしょうに… 」
「あぁ… たまらなく暑いさ 」
返事はいっつも一言。
長い間嫌っていたから、そんなにすぐには心を開いてはくれないんだけど、
排気ダクトは愛想良く、白い煙を吐くついでに唄ってくれる。
「奥サンヨ〜 オレはァ〜 これでもォ〜 陽・気・な タチさ〜♪」
想像で補えないのはただ一つ。 それは、「匂い」ってやつよ。
こいつはどうにもならない。
思いっきし叫んでやるんだ。
「おまえ、くさいゾー!」
生まれた時から赤毛で痩せて目ばかり大きいブサイクな子が、
3ヶ月の時両親をなくして、他人の家をたらいまわしにされ、
こき使われ、優しくもされず、いつも悪い子だとしかられ続けていたら、
まともな子になる訳がない。
この物語は少女には読ませられない"貧困と犯罪の物語"になっても
おかしくはない。
人は生まれた環境の中で人格を形成するといわれているし。
よくまぁ、 ひねくれもせず… と思う。
なぜなの? Anne?
私の想像力は"厳しい現実"に直面し、グレていた。
「想像の余地があるってものよ」 …と、アンの真似はしてみるけど、
余地を充分埋めているかどうか、怪しい。
今の私はマンション暮らし。
想像で補わなければならない余地が、福岡ドーム3つ分くらいありそうなんだ。
家には夢があった。
川沿いの緑豊かな散歩道、木立のきらめきの差し込む窓、ベランダの草花、
ひとつひとつが削られて、私の経済でまかなえるきつきつの物件に落ち着いた。
工場地域の真ん中で、見えるのは工場の灰色の屋根と、
排気ダクトがブザマに突き出た壁、 機械の動く音と、排気の匂い…
自分ひとりで探して買った、大切な家。
私の想像力で夢に近づけようか… アンを読むうちにそんな気持ちになってきた。
子供っぽいかなぁ… でも、まぁ、 いいや。 誰にも言わんし。
これでも昔は「夢みる夢子」とまで言われたんだから。
スコットランドの湖水地方の様な、なだらかな山々、
緑の草原を想像してるかって?
いえいえ。
私は工場の灰色の屋根に話しかける。
「暑いわ… あんた、 暑いでしょうに… 」
「あぁ… たまらなく暑いさ 」
返事はいっつも一言。
長い間嫌っていたから、そんなにすぐには心を開いてはくれないんだけど、
排気ダクトは愛想良く、白い煙を吐くついでに唄ってくれる。
「奥サンヨ〜 オレはァ〜 これでもォ〜 陽・気・な タチさ〜♪」
想像で補えないのはただ一つ。 それは、「匂い」ってやつよ。
こいつはどうにもならない。
思いっきし叫んでやるんだ。
「おまえ、くさいゾー!」
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
確かにあんたは名前を付ける名人だけど、
あまりにロマンティック過ぎて…
まねをして名前を付けると、呼びかけるのが、
コッパずかしいことになってしまい……
やっぱり大人になった私には、ロマンティックは似合わないなぁと思う。
どんなものにも名前があるほうがいいんじゃないかしらと、
あなたは言うでしょ?
それには、賛成。
ロマンティックとは言えないんじゃないかしら、と、
ご批判を覚悟で申しますと…
我が家の空気清浄機の名は、
「消臭 太郎」
扇風機は、
「風子(ふうこ)ちゃん」
〜名は体を表す〜 って感じでしょ。
太郎の時なんか、行書体で【命名 消臭 太郎】ってプリントアウトしたんだから。
「太郎」のフィルター換えてね、とか。
「風子」は気が強いから、弱風ってことを知らないわねぇ、とか。
この前は「太郎の居り場所を変えようか」と言ったら、
窓際に追いやるような扱いだと、ひどく気を悪くさせてしまった。
本気で考えた名前もあるのよ。
子供のころから欲しかったピアノが天から降ってきた時。
つまり、いきなり"差し上げます"と言って下さる方がいたの。
ピアノの先生の生徒さんで、弾かなくなったピアノがあるけれど、
引取り手がなければ家を取り壊すときに一緒に壊すしかないって。
そんな! もったいない! かわいそう!
最後のひとつの荷物が持ち出され、ガランとした家に
ピアノだけがポツンと居ました。
連れて帰りたい……
「星に願いを」を弾きながら、私の気持ちは決まっていました。
今、ピアノは家にいます。 名前は「アントニオ」。
すっごく考えて、ぴったりだと思ってつけたのだけど、
ひとつ困ったことがあります。
アントニオ猪木の存在を忘れてました。
アントニオの紹介をすると、
「えっ…? あのアントニオ? プロレスの…?」
プロレスじゃなくてぇ、ボサノヴァの"アントニオ・カルロス・ジョビン"に
ちなんで付けたのよ、と説明するのですが…。
どうも”猪木”のほうが知名度が高くて困ります。
No.4 『第4章 アンさんよぉ〜』
確かにあんたは名前を付ける名人だけど、
あまりにロマンティック過ぎて…
まねをして名前を付けると、呼びかけるのが、
コッパずかしいことになってしまい……
やっぱり大人になった私には、ロマンティックは似合わないなぁと思う。
どんなものにも名前があるほうがいいんじゃないかしらと、
あなたは言うでしょ?
それには、賛成。
ロマンティックとは言えないんじゃないかしら、と、
ご批判を覚悟で申しますと…
我が家の空気清浄機の名は、
「消臭 太郎」
扇風機は、
「風子(ふうこ)ちゃん」
〜名は体を表す〜 って感じでしょ。
太郎の時なんか、行書体で【命名 消臭 太郎】ってプリントアウトしたんだから。
「太郎」のフィルター換えてね、とか。
「風子」は気が強いから、弱風ってことを知らないわねぇ、とか。
この前は「太郎の居り場所を変えようか」と言ったら、
窓際に追いやるような扱いだと、ひどく気を悪くさせてしまった。
本気で考えた名前もあるのよ。
子供のころから欲しかったピアノが天から降ってきた時。
つまり、いきなり"差し上げます"と言って下さる方がいたの。
ピアノの先生の生徒さんで、弾かなくなったピアノがあるけれど、
引取り手がなければ家を取り壊すときに一緒に壊すしかないって。
そんな! もったいない! かわいそう!
最後のひとつの荷物が持ち出され、ガランとした家に
ピアノだけがポツンと居ました。
連れて帰りたい……
「星に願いを」を弾きながら、私の気持ちは決まっていました。
今、ピアノは家にいます。 名前は「アントニオ」。
すっごく考えて、ぴったりだと思ってつけたのだけど、
ひとつ困ったことがあります。
アントニオ猪木の存在を忘れてました。
アントニオの紹介をすると、
「えっ…? あのアントニオ? プロレスの…?」
プロレスじゃなくてぇ、ボサノヴァの"アントニオ・カルロス・ジョビン"に
ちなんで付けたのよ、と説明するのですが…。
どうも”猪木”のほうが知名度が高くて困ります。
赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
年を重ねてくると、10代の頃には目に留まらなかったことが見えてくる。
マシューと言えば、この世に二人といないくらい内気な男で、
何かと言えば、「そうさなぁ………」と言うだけの脇役のおじさんだった。
この内気な女性恐怖症のおじさんが、アンを気に入ってしまったらしい。
不思議だ。 どこがそんなに気に入ったのか。
マリラは、アンのおしゃべりの魔法にかけられたと言ってるけど、
「魔法」というのはまんざらでもなさそうだ。
ほら、想像してみて。
私は無類の子供嫌い、子供なんぞ騒々しいだけ。
でも独りで公園のベンチに座ると正直孤独はつらい。
すると小さなこどもが近づいてきて、身体全体からきらきら輝きながら、
懸命に私に話し掛けてくる。
足元を列をつくって通るアリさんのおさんぽ、
どこにいくのか と私に真剣な目で話している…
アリは私の靴をぐるりと迂回して行列していく。
腰をあげて立ち去ろうとしたら、
「アリさんをふんづけたらかわいそう…」
ちっちゃなこどもの目にみつめられて、私はまた座り直して、
アリを踏まないよう気を付けるだろう。
この子のアリさんを踏んづけるなど、犯罪に等しいのではと思う。
そして、こどもの話を聞き続けるに違いない。
そんな魔法がこどものおしゃべりには働いている。
それはとてもいい事だと思う。
小さなこどもを悲しませてはいけないという、
甘くて優しい魔法にかけられることは。
そして、マシューはマリラが驚くような事を口にする。
「こっちの方があの子の役にたってやれるんじゃないかね。」
本当に必要だったのは、のら仕事の手伝いをするのに役立つ、
男の子の孤児だったのに。
手違いでやって来た女の子、 魔法にかかった内気な男、
沢山の間違いと偶然が、マシューとマリラにとって必要な物を届けてくれたのだ。
本当に必要なものは、今この瞬間にも、私たちの想いの及ばない所で、
密かに送り届けられているに違いない。
この先、 アンがどれほど、マリラとマシューに喜びと温もり、
そして誇らしささえももたらすことを、私たちは知っている。
No.3 『第3章 魔法にかかった内気な男』
年を重ねてくると、10代の頃には目に留まらなかったことが見えてくる。
マシューと言えば、この世に二人といないくらい内気な男で、
何かと言えば、「そうさなぁ………」と言うだけの脇役のおじさんだった。
この内気な女性恐怖症のおじさんが、アンを気に入ってしまったらしい。
不思議だ。 どこがそんなに気に入ったのか。
マリラは、アンのおしゃべりの魔法にかけられたと言ってるけど、
「魔法」というのはまんざらでもなさそうだ。
ほら、想像してみて。
私は無類の子供嫌い、子供なんぞ騒々しいだけ。
でも独りで公園のベンチに座ると正直孤独はつらい。
すると小さなこどもが近づいてきて、身体全体からきらきら輝きながら、
懸命に私に話し掛けてくる。
足元を列をつくって通るアリさんのおさんぽ、
どこにいくのか と私に真剣な目で話している…
アリは私の靴をぐるりと迂回して行列していく。
腰をあげて立ち去ろうとしたら、
「アリさんをふんづけたらかわいそう…」
ちっちゃなこどもの目にみつめられて、私はまた座り直して、
アリを踏まないよう気を付けるだろう。
この子のアリさんを踏んづけるなど、犯罪に等しいのではと思う。
そして、こどもの話を聞き続けるに違いない。
そんな魔法がこどものおしゃべりには働いている。
それはとてもいい事だと思う。
小さなこどもを悲しませてはいけないという、
甘くて優しい魔法にかけられることは。
そして、マシューはマリラが驚くような事を口にする。
「こっちの方があの子の役にたってやれるんじゃないかね。」
本当に必要だったのは、のら仕事の手伝いをするのに役立つ、
男の子の孤児だったのに。
手違いでやって来た女の子、 魔法にかかった内気な男、
沢山の間違いと偶然が、マシューとマリラにとって必要な物を届けてくれたのだ。
本当に必要なものは、今この瞬間にも、私たちの想いの及ばない所で、
密かに送り届けられているに違いない。
この先、 アンがどれほど、マリラとマシューに喜びと温もり、
そして誇らしささえももたらすことを、私たちは知っている。

