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 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.96 『第25章  私のそまつな想像力』


  〜アンはついに、夢に描いていた通りの "王子様" に巡り会います。
   その名も、ロイヤル・ガードナー

   フランス帰りのお金持ち。
   甘いマスクの彼に、アンは恋をしているというのでしょうか。
   ギルバートのことを忘れてしまうのでしょうか。




21歳の夏休み。



今、アクセル踏んだらトラックに激突して死ぬ…

今、反対にハンドル切ったら崖から転落して、死ぬ…


運転しながら、事故を想像してしまう時がある。

日常の中のある瞬間、別の選択をすれば生が死に切り替わってしまうのだ。


また、人の悩みや苦言のようなシビアな話を聞いている最中に、その話とは
全く関係のない事に神経が行ってしまい、困ることがある。


 もしも今、すごく臭いオナラなんか出たら、不謹慎だ…

 口紅がはみ出してるけど、今注意せんかったらどんどん話が深刻になり、
 キッカケ失う…


しかし、私は悲しいかな、どんなに高尚かつ深刻な悩みに苦しんでいようとも、
頭の中で妙な想像が止まらなくなることがある。



宿泊施設と言っても、浜辺に置いた廃船の一室に蒲団が置いてあるだけである。

本館で食事と入浴を済ませて、 私達は船のデッキに置かれた椅子で
涼しい風に吹かれていた。

船室にはエアコンがないのである。

佐竹は人に預けてきた "糠床" が気になって、電話を掛けに席を立った。

沖を走る船影もなく、星空だけが拡がる夜の海は恐ろしいほど真っ暗で、
波の打ち寄せる音だけが響いていた。

"夜明け前には釣りに出掛けるから早寝する" と言っていたミス・クセは、
じっと海を見つめて一向に寝る様子もない。


 「今頃… カレ、あの子と旅行しているはずよ… 」

理想の女の子に出会えたから、我がままを許してくれと言われたそうだ。

相手は私も知っている同級生。 お人形さんみたいな美人だ。

陶器のように白い肌。 柔らかな黒髪がこれまた白い肩に掛かっている。

あれだけ綺麗だったら、頭の中は空っぽでも何の問題もないだろう。


 「二股カケルようなまねはしたくないんだってサ

はぁ… 二股をカケルねぇ…

この言葉が誘発剤になってしまった。



ミス・クセの "カレ" は陸上部で、短距離の選手である。

"いかに記録を更新するか" で、いつも頭が一杯なんだそうだ。

が、私の見る限り…、 カレはちんちくりんで、足が短か過ぎるように思う。

あの体型で記録を更新するには、二股の分岐点を中心にして、扇風機の羽みたいに
高速回転させないといけない。

ホレ、走っている足の見えないマンガみたいだわ…


  土煙があがる陸上競技場。

  トラックの向こうには黒髪の美人が高速回転で走っている。

  汗もかかず、化粧崩れもなく。

  後方にはミス・クセが続く。 おっ、釣竿が邪魔だ!

  「そんなもの、捨てちゃえ〜」 観衆が叫ぶ。


 「カレと生まれて初めて釣りに行って、すごく釣れたのよ。
 ビギナーズラックかもしれないけど、カレは悔しがりもしないで言うの。

 『キミはフィッシュ・チャーマーなんだよ。 魚が寄ってくるんだ』って…


  えっ〜? ホントに寄ってきたがな… ミス・クセの周りに魚群が迫る。

  魚が邪魔で走れない。 おっと、ついに釣竿を捨てた。

  しかし既に、カレに大きく水をあけられている。


 「それからもうひとつ。 私を花に例えてたら何かしらって聞いてみたらね。
 ピンクのカーネーションですって。
 後にも先にもこの花の名前しか知らないんですって。 正直な人なのよね


正直者は馬鹿をみるって言うけど、 近頃では正直者と関わったら、こっちの方が馬鹿をみる。

ウソつけ〜 桜とかチューリップくらい知っとるはずやぁ。 小学校で習うやろが〜。


  二股回転走りのカレは、ついに白肌黒髪美人に追いついた。

  ところが、回転は急には止まらない。

  不本意にも美人にタックルをかけてしまい、美人を巻き込んでの
  ものすごいスライディング。

  二人ともゼンマイの切れたおもちゃのように無様に止まって、
  足だけがいつまでもカタカタと動き続けている。

周囲が暗闇だった事と、ミス・クセが終止私に背を向けていたおかげで、
私はこの深刻な問題を、ちんけなお笑い草に変えてしまった。


それにしても… この島に来る前になんで私に話してくれなかったのよ。

ここへ来る道中だって、たっぷり時間はあったのに。

ずっと、傷ついていたはずなのに。


何でもないフリをしていたのなら、可哀想過ぎる。

友達が傷ついているのに、変な想像した自分が申し訳ない。


ごめん… あんたの話で… 変な想像して、ごめん


結局ミス・クセも大笑いしたのだが、その前にキッチリ嫌味を言われたわ。

やっぱり、正直に打ち明ければ許して貰えると思ったら大間違い。

勇気を出して本当の事を話したら、笑われる。



正直だからって、大して良い事がある訳でもない。

自分に正直な人が、 どれだけ周囲に迷惑をかけ、人を傷つけていることか。

所詮私も自分勝手な正直者だ、とガックリしたのである。
posted by 片岡 よしこ at 13:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
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