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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
〜美しいルビー・ギリスは、いつも取り巻きの男の子達に囲まれて、
彼らの心をもて遊んでは、陽気に人生を楽しんでいました。
しかし、ルビーは結核を患ってしまいます。
愛する全てのものを残して死んでいくことの苦しみと悲しみを
アンに打ち明け、ルビーは涙を流します。
そしてその夜、 眠りながら静かに息を引き取ったのでした。〜
20歳の秋。
私は、私の自由な意志で、 "ヨシロー君" のことは諦めようと決心した。
私はマトモになりたい。
男のことを考えていない時の私はマトモだ。
好きな人がいなかった頃は更にマトモで、周囲の人を思いやったり、
心配したり、 平和な森のリスのように暮らしていたのだ。
病気の祖父を差し置いて、ヨシロー君を優先させたりは決してしなかっただろう。
祖父の病状は、日増しに悪くなっていた。
いつ亡くなるかもわからず、 ヨシロー君に会う事など優先させられるはずも
なかったのに、私は出掛けて行った。
あんなに可愛がってもらったのに… その事を思い出すこともなく。
そして3日後、祖父は亡くなった。
"死" は、若い私には現実離れしたものだ。
死がやって来たら逃げられないのだ。 死に任せるほかに何ができようか。
そこに、自由な選択はない。 死は周到に準備を整えてやって来たのだから。
自分勝手な考えで男にうつつを抜かし、祖父の側に居るという大切な事から
逃げた私は、 後になって深く後悔した。
所属する部が出展する模擬店を店じまいすると、私はその足でヨシロー君の
学園祭に向かった。
彼が実行委員長としてここ数ヶ月打ち込んできた学園祭を、どうしても
見たかったのだ。
忙しい彼が、私の相手をする時間などない事は百も承知で。
それでもできる限り、私を案内してくれる、 彼のそういう所が私は好き。
しかし、私が彼と言葉を交わす機会はごく少なかった。
大学の周囲の空き地には、ススキの原っぱが拡がっていた。
冷たい夜風に所在なく吹かれて、まるで私の心のようにさわさわと揺れていた。
やっぱり、 遠いなぁ…
言葉を交わし合えない距離がある。
人と人は言葉を交わし、話しをしなければ、 永遠にすれ違う。
想いはつのっても、関係を築いてゆくことは無理なのだ。
恋に患うのも、ここまでかもしれない…
何となくそう思っている私がいた。
ヨシロー君は私の案内を、 "桂さん" と "柏木さん" の二人に頼んだ。
二人とも、とても気立てのいい子だった。
その夜は、桂さんの下宿にお世話になることとなった。
初対面の3人が、近所のお風呂屋さんで仲良く湯船に浸かり、商店街の小さな
中華料理屋で、学園祭の成功を祝ってビールで祝杯をあげた。
"ヨシロー君を知る人" と話をするのは初めてだ。
彼は時に、馬鹿騒ぎをしたり徹夜で無茶をするが、 皆の事をよく考えてくれる
人なんだそうだ。
「彼が女の子と付き合ってるなんて、見た事も聞いた事もないわ。 ねぇ?」
同意を求められた柏木さんは、大きく頷く。
「うん… よしこさん連れてるの見て、びっくりした。
え〜 だれ〜? ってかんじよ」
二度と会うこともないだろう2人の女の子と私の、 誰も知らない打ち明け話は、
夜が更けるまで続いた。
心休まる時間が過ぎていった。
私が家に帰って3日後、祖父が死んだ。
疲れ切った母の顔。
学園祭での事は、思い出したくない悲しいものになってしまった。
そこで過ごした時間の分だけ、親不孝を積み重ねてしまった恥ずかしさ…
私は、両親の顔を見ることが出来なかった。
後ろめたさと悲しさが交錯し、 ごちゃごちゃになった心で、
私は、溢れては流れる想いを見つめていた。
全ては私の愚かさのせいだ。
ヨシロー君に心が糊付けされて、剥がれないからだ。
こんなに懸命に想い焦がれているのに、 なぜ報われないのだろう。
ただひたすら、報われたいと思っていたけれど…
いくら好きでも報われないことがあり、永遠に変わらないと信じていた気持ちに
自分で決着を付けねばならない時がある。
私が想うのと同じ程、ヨシロー君が私のことを想っているのではないと、
私は随分前から気付いていたのだ。
お別れの手紙を書いた。 未練は残るけどね。
自然消滅よりいい。 彼に恨みを残さずに済む。
友達や家族をないがしろにして、ええ事になるはずがない。
私は勝手にヨシロー君を "好き" になって、自由な意志で "お別れ" したわけだ。
だがそのおかげで一番えらい目に遭ったのは、当の彼 "本人" だったのだろう。
お気の毒な話である。
No.85 『第14章 気の毒な話』
〜美しいルビー・ギリスは、いつも取り巻きの男の子達に囲まれて、
彼らの心をもて遊んでは、陽気に人生を楽しんでいました。
しかし、ルビーは結核を患ってしまいます。
愛する全てのものを残して死んでいくことの苦しみと悲しみを
アンに打ち明け、ルビーは涙を流します。
そしてその夜、 眠りながら静かに息を引き取ったのでした。〜
20歳の秋。
私は、私の自由な意志で、 "ヨシロー君" のことは諦めようと決心した。
私はマトモになりたい。
男のことを考えていない時の私はマトモだ。
好きな人がいなかった頃は更にマトモで、周囲の人を思いやったり、
心配したり、 平和な森のリスのように暮らしていたのだ。
病気の祖父を差し置いて、ヨシロー君を優先させたりは決してしなかっただろう。
祖父の病状は、日増しに悪くなっていた。
いつ亡くなるかもわからず、 ヨシロー君に会う事など優先させられるはずも
なかったのに、私は出掛けて行った。
あんなに可愛がってもらったのに… その事を思い出すこともなく。
そして3日後、祖父は亡くなった。
"死" は、若い私には現実離れしたものだ。
死がやって来たら逃げられないのだ。 死に任せるほかに何ができようか。
そこに、自由な選択はない。 死は周到に準備を整えてやって来たのだから。
自分勝手な考えで男にうつつを抜かし、祖父の側に居るという大切な事から
逃げた私は、 後になって深く後悔した。
所属する部が出展する模擬店を店じまいすると、私はその足でヨシロー君の
学園祭に向かった。
彼が実行委員長としてここ数ヶ月打ち込んできた学園祭を、どうしても
見たかったのだ。
忙しい彼が、私の相手をする時間などない事は百も承知で。
それでもできる限り、私を案内してくれる、 彼のそういう所が私は好き。
しかし、私が彼と言葉を交わす機会はごく少なかった。
大学の周囲の空き地には、ススキの原っぱが拡がっていた。
冷たい夜風に所在なく吹かれて、まるで私の心のようにさわさわと揺れていた。
やっぱり、 遠いなぁ…
言葉を交わし合えない距離がある。
人と人は言葉を交わし、話しをしなければ、 永遠にすれ違う。
想いはつのっても、関係を築いてゆくことは無理なのだ。
恋に患うのも、ここまでかもしれない…
何となくそう思っている私がいた。
ヨシロー君は私の案内を、 "桂さん" と "柏木さん" の二人に頼んだ。
二人とも、とても気立てのいい子だった。
その夜は、桂さんの下宿にお世話になることとなった。
初対面の3人が、近所のお風呂屋さんで仲良く湯船に浸かり、商店街の小さな
中華料理屋で、学園祭の成功を祝ってビールで祝杯をあげた。
"ヨシロー君を知る人" と話をするのは初めてだ。
彼は時に、馬鹿騒ぎをしたり徹夜で無茶をするが、 皆の事をよく考えてくれる
人なんだそうだ。
「彼が女の子と付き合ってるなんて、見た事も聞いた事もないわ。 ねぇ?」
同意を求められた柏木さんは、大きく頷く。
「うん… よしこさん連れてるの見て、びっくりした。
え〜 だれ〜? ってかんじよ」
二度と会うこともないだろう2人の女の子と私の、 誰も知らない打ち明け話は、
夜が更けるまで続いた。
心休まる時間が過ぎていった。
私が家に帰って3日後、祖父が死んだ。
疲れ切った母の顔。
学園祭での事は、思い出したくない悲しいものになってしまった。
そこで過ごした時間の分だけ、親不孝を積み重ねてしまった恥ずかしさ…
私は、両親の顔を見ることが出来なかった。
後ろめたさと悲しさが交錯し、 ごちゃごちゃになった心で、
私は、溢れては流れる想いを見つめていた。
全ては私の愚かさのせいだ。
ヨシロー君に心が糊付けされて、剥がれないからだ。
こんなに懸命に想い焦がれているのに、 なぜ報われないのだろう。
ただひたすら、報われたいと思っていたけれど…
いくら好きでも報われないことがあり、永遠に変わらないと信じていた気持ちに
自分で決着を付けねばならない時がある。
私が想うのと同じ程、ヨシロー君が私のことを想っているのではないと、
私は随分前から気付いていたのだ。
お別れの手紙を書いた。 未練は残るけどね。
自然消滅よりいい。 彼に恨みを残さずに済む。
友達や家族をないがしろにして、ええ事になるはずがない。
私は勝手にヨシロー君を "好き" になって、自由な意志で "お別れ" したわけだ。
だがそのおかげで一番えらい目に遭ったのは、当の彼 "本人" だったのだろう。
お気の毒な話である。
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