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 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.83 『第12章  手痛い批評を賜る』



  〜アンは島でお休みを過ごす間に、物語を一つ書き上げました。
   ダイアナとハリソンさんはなかなか良い批評家のようです。

   特にハリソンさんには、例の毒舌であっちにもこっちにもケチをつけられ、
   もう二度とハリソンさんには読ませまいとアンは思うのでした。

   ギルバートには?
   書いたと話しただけで読ませてあげないなんて、どうしてなのかしら?




20歳の春、2年生に進級。



私は手紙魔と呼ばれている。 一度に便箋一冊を使い切る程だ。

父が私の "名前入り専用便箋" を印刷してくれてからは更に拍車がかかり、
量も回数も誰よりもダントツ、と思っている。

また、書いてはみたが投函しなかった手紙はもっと多い。

これも老後の楽しみに保管しとかなければ。

私は20歳から既に老後の生活に備えている、 "しっかり者" だったのかも。



この才能を有意義に使わなくてはいけない。

2年生になって、私と "斎藤女史" は新聞部員の勧誘に乗り出した。

まず、私が目をつけたのは下宿派の友人、 "ミス・クセ" 。

ミス・クセは読解力があって、添削、校正等の処理能力アリと私は見込んでいた。


夏休みの間、 私は例によって "なが〜い 手紙" を彼女に書き送り、
ミス・クセからは繊細な文字で返事が来た。

私のはたわいのない馬鹿話だが、彼女は実に理路整然と筋の通った内容で、
私は少々引け目を感じてしまう。

だが最後はいつもこう締め括ってあるから、乗せられてまた書いてしまう。

とにかく、すぐにまた、お手紙下さいね。 お願いよ。


私の手紙、そんなに面白い? そう書いたら返事が来た。

  「私がひどく退屈している分を差し引いても、読み応えがあると
  言えるでしょう。 それで、文才があるなんて勘違いしては駄目ですよ。
  あなたに一流は無理ですが、三文作家くらいには成れるかも知れません。


有難いような気はするが、決して褒めてはいない。

必要以上に喜ばせないように配慮したつもりだろうが、それでも結構喜んだ私は…
やはり "アホ" である。

予定通り新聞部に誘い、 記事は書けないが編集や校正を手伝う、という
約束を取り付けた。


最後の一人は、斎藤女史がどっかから拾ってきた。

私達が "猫むすめ" と呼んでいる、1年国文科。 丸い "猫顔" に私は惚れた。


これで三人が集まった。

しかし顧問が決まらず、 結局 "新聞部" としての成立は見送られ、
私達はまず定期的に集まって、書いたものを批評しあうことにした。


猫むすめは、厳しかった。

よしこさん、結論を急ぎすぎるのは良くないわ。」 とか、

よしこさんは、いつでも逃げ道つくっているでしょ。」 とか…

美しい眉と切れ長の目をキッと吊り上げて、言ってくれるのだ。

はい… おっしゃる通り、なのかも、 しれません…

が、先輩に向かって "よしこさん" はなかろうが。

結論が出るように取材してくるのが、あなたの仕事でしょ。


ネタを集めて来んかい!


今まで私は、書くという事は自分の感性を表現する事だと思ってきた。

事実に基づいて事柄を客観的に考える習慣がなかったのだ。

ましてや自分の文章に第三者の批評を頂くのは、未熟さを思い知る経験だった。


1号さえまだ出していないのに、なんだか自信がなくなった。

新聞の記事を書くのは、手紙を書くのとは勝手が違う。

社説というべきものがないと、一行も書けない。


斎藤女史は、キャリアを積んだ編集長みたいに腕組をして、フムフムと頷いて
言った。

  「うちの大学のカリキュラムは、他校に比べて偏りがあるのではないかと
  推測してるの。 お嬢様学校のメニューなのよ。
  花の東京でも通用する内容の講義じゃない。 その辺りから攻めましょう。


なるほど、井の中の蛙ではいけないということなのだ。

さすが斎藤女史は違われる、 と全員一致(但し2名)で
斉藤女史を "編集長" に抜てきしたのだった。
posted by 片岡 よしこ at 08:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
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