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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
〜ギルバートはレッドモンド大学での4年間、
忍耐強く待とうと決心します。
いつか、僕のことを思ってくれるだろうか。
不安に胸が締め付けられるのでした。〜
私はもうすぐ大学生。
中学の同窓会の案内状が届いた。
志望校に合格したことを、より多くの人々に宣伝するために出席したつもり
だったが、 行ってすぐに、来てしまった事を後悔し始めた。
私の座布団に押しピンを仕込んだ男の子の顔だけは忘れようがなかったけど、
誰もかれもがまるで初対面で、記憶がないのだ。
買ったばかりのオレンジ色のセーターが目立ち過ぎているのではないかと、
そればかりが気になった。
メグミを誘えば良かった…
「同窓会に行ったんだって? みんな、あんたが来たので驚いてたみたいよ。」
メグミが愉快そうに電話してきた。
わからない。 どうして私が出席したら驚くのか。
「だって、同窓会なんか興味なさそうに見えるじゃない。」
それは、誤解だ。
少し前に私はコンタクトレンズを入れたばかりで、外の世界を見るのが楽しくて
たまらなかった。
それに眼鏡より、 ムフッ… 美人に見える。
同窓会は、美人効果を試してみる絶好の機会だ。
"はっきり見える" とは、実に素晴らしい。
世界が明るくなった。 遠くを歩く男前だってよく見える。
デパ地下の食料品はぴかぴかに輝いて、こんなにウマそうだとは
気付かなかったぞ。
特にここ4・5年、はっきり物を見ていない近眼の私にとっては、何もかもが
大発見である。
私にとって "初対面" の級友達が、思い出話や近況の報告に花を咲かせている間、
私はコンタクトの見え具合を思う存分楽しんでいた。
信号機の鮮やかな赤や青色に、驚きと感動を持って眺め続けていた。
「かたおかぁ〜 おまえ、ボーイフレンドいるんか?」
「いるわよ、しかも沢山。 ただし、実在してないけど。
ターバンを巻いた、おそらくインド人とか、コペンハーゲンの飲んだくれとか、
修行中の僧侶。」
ツー ツー ツー
話は途切れた…
「それは、お嬢様に興味があるということでしょうね。」
コンタクト効果ってもんでしょ。
佐竹が思うほど私は馬鹿じゃない。 私の方が彼に興味がなかったということ。
彼は私が聞きたい、話したいと思うようなことは、 まぐれにも一言だって
言えそうにない、マヌケだもの。
春の河原には、たんぽぽが一斉に咲き始めた。
去年の春、風に乗って吹き飛ばされ、 よい土地に根付いた幸運の綿毛だけが、
こうして花を咲かせることができたのだ。
しかし、一週間後の大学の入学式を控えて、 私が幸運なたんぽぽの綿毛に
なれるのか… そんな自信はない。
胸が締め付けられるような不安。 ほとんど鬱状態。
私の合格が間違いだったという夢を見た。
次の夜は、入学金が未納で入学を取り消された。
その次の夜は、宿題の提出が遅れて落第した。
佐竹でもいれば話相手になるのに、年金暮らしなのでアルバイトに忙しいらしい。
親父さんは、人の気も知らないでからかう。
「よっ、学士さん!」
誰かの胸にすがって泣きたい。 漢文の先生の映像が浮かぶ…
「大丈夫だよ、心配ない。」
いや〜ん、ちょっといい気分。
いかん、いかん!
私があの悪魔の化身である男の胸で泣くなんて、あってはならないことだ。
男の人にすがるなんて、負けることだ。
とりあえず風に乗って、飛ばされてみることにした。
落ちたところが悪ければ枯れるだろうし、良ければ花が咲く。
それは、私が決められるわけじゃなし、 そう思えば気が楽だ。
人は見えない力によって動かされているって、レオナルド・ダビンチが
言っていた。
天才なんだから、間違ってはないだろう。
見えない力。
この力に翻弄され、右往左往する私の大学生活が始まろうとしていた。
No.73 『第2章 入学式迫る』
〜ギルバートはレッドモンド大学での4年間、
忍耐強く待とうと決心します。
いつか、僕のことを思ってくれるだろうか。
不安に胸が締め付けられるのでした。〜
私はもうすぐ大学生。
中学の同窓会の案内状が届いた。
志望校に合格したことを、より多くの人々に宣伝するために出席したつもり
だったが、 行ってすぐに、来てしまった事を後悔し始めた。
私の座布団に押しピンを仕込んだ男の子の顔だけは忘れようがなかったけど、
誰もかれもがまるで初対面で、記憶がないのだ。
買ったばかりのオレンジ色のセーターが目立ち過ぎているのではないかと、
そればかりが気になった。
メグミを誘えば良かった…
「同窓会に行ったんだって? みんな、あんたが来たので驚いてたみたいよ。」
メグミが愉快そうに電話してきた。
わからない。 どうして私が出席したら驚くのか。
「だって、同窓会なんか興味なさそうに見えるじゃない。」
それは、誤解だ。
少し前に私はコンタクトレンズを入れたばかりで、外の世界を見るのが楽しくて
たまらなかった。
それに眼鏡より、 ムフッ… 美人に見える。
同窓会は、美人効果を試してみる絶好の機会だ。
"はっきり見える" とは、実に素晴らしい。
世界が明るくなった。 遠くを歩く男前だってよく見える。
デパ地下の食料品はぴかぴかに輝いて、こんなにウマそうだとは
気付かなかったぞ。
特にここ4・5年、はっきり物を見ていない近眼の私にとっては、何もかもが
大発見である。
私にとって "初対面" の級友達が、思い出話や近況の報告に花を咲かせている間、
私はコンタクトの見え具合を思う存分楽しんでいた。
信号機の鮮やかな赤や青色に、驚きと感動を持って眺め続けていた。
「かたおかぁ〜 おまえ、ボーイフレンドいるんか?」
「いるわよ、しかも沢山。 ただし、実在してないけど。
ターバンを巻いた、おそらくインド人とか、コペンハーゲンの飲んだくれとか、
修行中の僧侶。」
ツー ツー ツー
話は途切れた…
「それは、お嬢様に興味があるということでしょうね。」
コンタクト効果ってもんでしょ。
佐竹が思うほど私は馬鹿じゃない。 私の方が彼に興味がなかったということ。
彼は私が聞きたい、話したいと思うようなことは、 まぐれにも一言だって
言えそうにない、マヌケだもの。
春の河原には、たんぽぽが一斉に咲き始めた。
去年の春、風に乗って吹き飛ばされ、 よい土地に根付いた幸運の綿毛だけが、
こうして花を咲かせることができたのだ。
しかし、一週間後の大学の入学式を控えて、 私が幸運なたんぽぽの綿毛に
なれるのか… そんな自信はない。
胸が締め付けられるような不安。 ほとんど鬱状態。
私の合格が間違いだったという夢を見た。
次の夜は、入学金が未納で入学を取り消された。
その次の夜は、宿題の提出が遅れて落第した。
佐竹でもいれば話相手になるのに、年金暮らしなのでアルバイトに忙しいらしい。
親父さんは、人の気も知らないでからかう。
「よっ、学士さん!」
誰かの胸にすがって泣きたい。 漢文の先生の映像が浮かぶ…
「大丈夫だよ、心配ない。」
いや〜ん、ちょっといい気分。
いかん、いかん!
私があの悪魔の化身である男の胸で泣くなんて、あってはならないことだ。
男の人にすがるなんて、負けることだ。
とりあえず風に乗って、飛ばされてみることにした。
落ちたところが悪ければ枯れるだろうし、良ければ花が咲く。
それは、私が決められるわけじゃなし、 そう思えば気が楽だ。
人は見えない力によって動かされているって、レオナルド・ダビンチが
言っていた。
天才なんだから、間違ってはないだろう。
見えない力。
この力に翻弄され、右往左往する私の大学生活が始まろうとしていた。
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