仕事帰りに、父の家に立ち寄った。
「あんた、元気になったなぁ…」
感心されてしまった。 最近では若いとよく言われる。
しかし、 離婚する前後の5年間で、私は窶れ切っていたらしい。
鏡を見ても、自分では分からないものなのだ。
うまく繕っているつもりでいても、写真と他人の目にはよく事実が見えるらしい。
それって、 お〜、嫌だ。
乙女の夢が破れ、夫とは解り合えないままに終了。
修羅場を乗り越えて生まれ変わろうという瀬戸際に、私は数十万円もする
"美顔機" を購入した。
とりあえず "綺麗" であれば、人生なんとかなる。
「ムフフ… こいつさえあれば、永遠に… 私は美しい、ムフッ…」
ミス・ラベンダーは少女の心を持った、薔薇色に美しい45歳。
でも、髪は真っ白。
「それは、魔法にかけられている証拠よ。」
アン… それは、おとぎ話。
誰かが魔法を解いてくれさえすれば、輝くばかりの若さと美しさを
再び取り戻すって?
それは、あり得んわ…
魔法だなんて非現実的な事で、ごまかされていられない。
私も40代から立派な白髪頭だったけど、 魔法を解いたのは美容師の使う
白髪染め。
今や年間6万円余りを使って維持している。
これのどこが魔法でなんかあるものか。
もし、黒い髪に生え変わる薬ができたとしたら、それこそが魔法だ。
時間もお金もかけて、維持したい美しさってなんだろう。
若々しく、美しくあるために努力したあげく、 へとへとのすっからかんに
なってしまう。
どっちみち、皺くちゃになって死ぬんだろうに。
今朝。 目は覚めたのに、体が起きられない。
「いやだ! 起きれんがな。 おまえ、会社休めや。」
私の身体がそう言った。
いい歳になった今でも、時には会社に行きたくないことがある。
頭が痛いとか、お腹が痛いとか、子供みたいだと思うが、 私はいつも
身体の言うことを聞いて休むか、重役出勤する。
実は面目ないのである。
「若いってことは、非常識ってことかもしれん。」
"赤毛のアン太郎" が優しい口調で付け加えた。
「他人から見ればな。」
いつまでも年をとらないでいるには、勇気が要る。
そしてもうひとつ、 子供の頃どう感じたかを忘れない事。
ミス・ラベンダーは食事の前に言う。 楽しそうにね。
「さぁ、なにかおいしくて消化の悪いものをいただきましょう。」
「さぁ、いい歳をして人から笑われるような事を考えましょう。」
私ならこう言うかしら。
この度、アン太郎のキーボードに、友人達のベース、ドラム、ギターを加えて
バンドをすることになった。
で、私が歌うつもりよ。
幼稚園の劇でソロを歌って以来だけど、これぞ笑われるにはもってこいの
選択でしょう。
いつも座って聴いているだけじゃつまらないんですもの。
「昔からやってみたかったのよ。」
決まって私はそう思う。 笑われるのが恥ずかしいようでは、まだまだ青い。
乙女の夢が破れて、 私は大人になった。
おばさんになりたくないとジタバタし、散財したけれど、何とか変われたようだ。
だが、いざ変わってみると、 なんだか懐かしい、この感じは…
私は子供の頃に戻っていたんだ。 これって、ふりだしに戻るってこと?
「まぁ、それも良しか…」
ゲームにも人生にも、 "ふりだしに戻る" ってのはつきものだ。
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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.62 『第21章 乙女の夢が破れる時 その2』
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