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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
どんな時に幸せを感じる?
良い事はあったのに、その時の幸せな気持ちを思い出すことが出来ない。
腹ぺこで、二人して鍋をつつく。
やけどしそうに熱い白菜を、フガフガいいながら食べる。
二人で、
「うまいなぁ」
「おいし〜っ」
そればかりを繰り返す時が幸せだ。 けれど、それは一瞬のこと。
明日のことも、今日あったことも、考えないでいられる時間はあまりにも短い。
何も考えないでいる、 その一瞬だけは幸せな時なのだ。
その一瞬がもう少し長持ちしてくれればいいのに。
何かに打ち込んで、沢山の不安や心配を忘れてしまいたい。
猛然と掃除をし、ピカピカの部屋にどっかり座って、
くだらないサスペンスドラマを見ながら、 居眠りする…
これが私のささやかな幸せだ。
憂鬱な気分になるのが、私は何より怖い。
憂鬱になると、 何もする気になれない。 決まって頭や首、肩が痛む。
何もしていないことの罪悪感で滅入っていく。
今日のような雨の休日は大嫌いだ。 なのに掃除をしなければいけない。
部屋は間違いなく薄汚れていき、唯一の私の資産は確実に価値を失ってゆくに
違いない。
正月以来、ヨガもしていない。 身体を動かし続けていなければいけない。
筋肉は緩み、筋は固まり、老後に最も大切な健康は維持されない。
何もしないで、放って置くとどうなるか。
必ず想像通り、 いや、それ以上に悪い結果になる。 悪い想像は本当になる。
私は、そんなマイナスの考え方を止めることが出来ない。
「アンが誰かの人生ににっこり微笑みかけると、その人生の持ち主は
太陽の光を浴びたように感じ、人生を希望に溢れ、楽しく素晴らしい事に
満ちたものだと、その一瞬だけでも感じるようになる…」
いいえ… 今日は駄目だ。 そんなんで、ごまかされたくない気分だ。
合い呼ぶ魂の人が側にいても、幸せを感じない日がある。
思い描いた幸せな生活は、ここにはまだないと思うと、 ドンと落ち込む。
"赤毛のアン太郎" は、 時々昼夜が逆転する。
私が起きているとき、 "赤毛のアン太郎" は寝ている。
私が眠くなる頃、 彼はようやく目覚める。
こんな日が続くと、私まで憂鬱になってしまう。
なんでこんな人を好きになってしまったのだろうかと、まるで私の冒した過ちの
責任を取っているような気になって、 ますます憂鬱から抜け出せなくなる。
誰か私に、明るい太陽の光を注いでくれない?
独りではとても、耐えてはいかれない。
でも私は、この事は誰にも言えない。
そんなんだったら別れてしまえばいい、と言われるのが怖いのだ。
どう答えて良いのか判らない。
だから独りで家に閉じこもり、誰とも話をせず、 この憂鬱が去って行くのを
待つしかない。
時が経てば、また彼の昼夜が元に戻り、 束の間の平和が訪れる、と
経験から知っているからだ。
これが最後になればいいと、何度祈ったかしれない。
でも、希望が持てた頃に、 必ずまたやって来るのだ。
それもまた、経験で知っている。
何か奇跡が起こらないものだろうか。
経験で推測する事を超えた、信じられないような出来事がないだろうか。
悪い想像ばかりが当たってしまうなんて、あんまりではないか。
時々やって来る憂鬱を吹き払って、 いつも幸せな気持ちでいたい。
アンは美しい自然や草花に眼を向けるよう、 私に促す。
だが、アンが眼を留めるものと、私が心を向けるものとは随分違う。
私は自然の中に置かれると、 取り残されたように淋しい。
花や木々は不平も不満も言わず、黙っているからよそよそしい。
むしろ、 雲ひとつ無い水色の空や、不毛の砂漠を、 私は美しいと感じる。
何もする気が起きなくても、別にいいじゃないか、 と許してくれるような
気がするのだ。
無機質なモノたちの声が聞こえる。
採石場の切り崩した山肌に、不格好に組み立てられた足場や、
赤茶けた機械に心惹かれる。
緑の広がる水田や野山より、 コンビナートの怪物に親しみを感じる。
大型クレーンは、太古に死に絶えた恐竜だ。
そんな世界で、 排気ガスを吸い、塵に汚れながら、 それでも街路樹は
優しい気持を失ってはいない。
喜びの白い道に咲く、香しいリンゴの花に、 少しも劣ってはいない。
こんなに憂鬱な時に、にっこり微笑みかけられたって腹が立つだけだ。
何もかもに腹が立つんだから。
「かくのごとき日に生きていられる幸せよ、
樅の枯れ葉の匂いを嗅ぐは 天国なり。」
なにが天国よ、エデンの国よ。
怒りをため込んで明日の事を思い煩う元気などない。
襖を隔てた隣の部屋から、 "赤毛のアン太郎" が何か言っている。
? …。 寝言か…。
こらぁ! そろそろ起きろ! バンドの練習の時間だぁ!
これで起きなかったら二度と起こしてやらん。
メンバーに愛想をつかされたって、アタシは知らんからな。
アタシは愛に飢えてるのでなければ、希望を失っているのでもない。
私は、怒っているんだ。
No.48 『第7章 怒り』
どんな時に幸せを感じる?
良い事はあったのに、その時の幸せな気持ちを思い出すことが出来ない。
腹ぺこで、二人して鍋をつつく。
やけどしそうに熱い白菜を、フガフガいいながら食べる。
二人で、
「うまいなぁ」
「おいし〜っ」
そればかりを繰り返す時が幸せだ。 けれど、それは一瞬のこと。
明日のことも、今日あったことも、考えないでいられる時間はあまりにも短い。
何も考えないでいる、 その一瞬だけは幸せな時なのだ。
その一瞬がもう少し長持ちしてくれればいいのに。
何かに打ち込んで、沢山の不安や心配を忘れてしまいたい。
猛然と掃除をし、ピカピカの部屋にどっかり座って、
くだらないサスペンスドラマを見ながら、 居眠りする…
これが私のささやかな幸せだ。
憂鬱な気分になるのが、私は何より怖い。
憂鬱になると、 何もする気になれない。 決まって頭や首、肩が痛む。
何もしていないことの罪悪感で滅入っていく。
今日のような雨の休日は大嫌いだ。 なのに掃除をしなければいけない。
部屋は間違いなく薄汚れていき、唯一の私の資産は確実に価値を失ってゆくに
違いない。
正月以来、ヨガもしていない。 身体を動かし続けていなければいけない。
筋肉は緩み、筋は固まり、老後に最も大切な健康は維持されない。
何もしないで、放って置くとどうなるか。
必ず想像通り、 いや、それ以上に悪い結果になる。 悪い想像は本当になる。
私は、そんなマイナスの考え方を止めることが出来ない。
「アンが誰かの人生ににっこり微笑みかけると、その人生の持ち主は
太陽の光を浴びたように感じ、人生を希望に溢れ、楽しく素晴らしい事に
満ちたものだと、その一瞬だけでも感じるようになる…」
いいえ… 今日は駄目だ。 そんなんで、ごまかされたくない気分だ。
合い呼ぶ魂の人が側にいても、幸せを感じない日がある。
思い描いた幸せな生活は、ここにはまだないと思うと、 ドンと落ち込む。
"赤毛のアン太郎" は、 時々昼夜が逆転する。
私が起きているとき、 "赤毛のアン太郎" は寝ている。
私が眠くなる頃、 彼はようやく目覚める。
こんな日が続くと、私まで憂鬱になってしまう。
なんでこんな人を好きになってしまったのだろうかと、まるで私の冒した過ちの
責任を取っているような気になって、 ますます憂鬱から抜け出せなくなる。
誰か私に、明るい太陽の光を注いでくれない?
独りではとても、耐えてはいかれない。
でも私は、この事は誰にも言えない。
そんなんだったら別れてしまえばいい、と言われるのが怖いのだ。
どう答えて良いのか判らない。
だから独りで家に閉じこもり、誰とも話をせず、 この憂鬱が去って行くのを
待つしかない。
時が経てば、また彼の昼夜が元に戻り、 束の間の平和が訪れる、と
経験から知っているからだ。
これが最後になればいいと、何度祈ったかしれない。
でも、希望が持てた頃に、 必ずまたやって来るのだ。
それもまた、経験で知っている。
何か奇跡が起こらないものだろうか。
経験で推測する事を超えた、信じられないような出来事がないだろうか。
悪い想像ばかりが当たってしまうなんて、あんまりではないか。
時々やって来る憂鬱を吹き払って、 いつも幸せな気持ちでいたい。
アンは美しい自然や草花に眼を向けるよう、 私に促す。
だが、アンが眼を留めるものと、私が心を向けるものとは随分違う。
私は自然の中に置かれると、 取り残されたように淋しい。
花や木々は不平も不満も言わず、黙っているからよそよそしい。
むしろ、 雲ひとつ無い水色の空や、不毛の砂漠を、 私は美しいと感じる。
何もする気が起きなくても、別にいいじゃないか、 と許してくれるような
気がするのだ。
無機質なモノたちの声が聞こえる。
採石場の切り崩した山肌に、不格好に組み立てられた足場や、
赤茶けた機械に心惹かれる。
緑の広がる水田や野山より、 コンビナートの怪物に親しみを感じる。
大型クレーンは、太古に死に絶えた恐竜だ。
そんな世界で、 排気ガスを吸い、塵に汚れながら、 それでも街路樹は
優しい気持を失ってはいない。
喜びの白い道に咲く、香しいリンゴの花に、 少しも劣ってはいない。
こんなに憂鬱な時に、にっこり微笑みかけられたって腹が立つだけだ。
何もかもに腹が立つんだから。
「かくのごとき日に生きていられる幸せよ、
樅の枯れ葉の匂いを嗅ぐは 天国なり。」
なにが天国よ、エデンの国よ。
怒りをため込んで明日の事を思い煩う元気などない。
襖を隔てた隣の部屋から、 "赤毛のアン太郎" が何か言っている。
? …。 寝言か…。
こらぁ! そろそろ起きろ! バンドの練習の時間だぁ!
これで起きなかったら二度と起こしてやらん。
メンバーに愛想をつかされたって、アタシは知らんからな。
アタシは愛に飢えてるのでなければ、希望を失っているのでもない。
私は、怒っているんだ。
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