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 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.35 『第35章  拝啓 モンゴメリー様』




恐れながら申し上げます。


クイーンでの生活たったの一章だなんて、短過ぎるんではないでしょうか。


いくら短大で、アンが一年の短期集中コースをとったからって、
あまりにも簡単にヤッツケてませんか。

しかも、 15、16歳ともなれば思春期の真っ只中、精神的にも何かと不安定な年頃。

手短に言えば…、 脇目もふらずに懸命に勉強し、エイブリー奨学金を獲得した…
なんて それ以外にも他に何かあるでしょうが。

ぜんぜんロマンチックじゃないと思います。


男の子のことを考えないではなかった、と書かれているけれど、
実際、 どんな人に興味を持ったのか、どう言葉を交わしたのかとか…
詳しくぶっちゃけて欲しかったです。

男の子の研究をするために、とても参考になったと思うからです。



しかし、 よく考えてみると、私の15、16歳だって…
手短に言えば、三度の食事、おやつと夜食の合間に勉強し、 大学受験にすべった…。

頭の中の妄想とは裏腹に、 ロマンチックとは無縁な生活をしていたように思う。


男の友達が欲しかったわ。

男の子の "合い呼ぶ魂の友" 、そんな彼の自転車の荷台に乗せられて走り回りたかったな。

絶対好きになりそうだ。 好きになるのは、つまらない感情ではないと思う。



ところが、 そんな願いは叶えられないのが女子高の定め

何しろ我が校は「良妻賢母」の育成を目的としており、
男女交際は、〜最重要禁止事項 だったのだ。

男の子は宇宙人レベルの未確認生物として、私の研究対象となった。


まずは一般常識から、と、 本を読んでみた。

トルストイとか、ドストエフスキーとか、 マト外れもいいとこ。

日本男児なら "竜馬が行く" 、 山本周五郎も泣けた…
"研究" にはほど遠く、 単なる読書になってしまった。

これでは肝心な所がさっぱりわからない。


女子高にはサンプルなどある訳がなく、研究は行き詰まり始めた。


際をしていそうなクラスの子にインタビュー。

  「誰か紹介するわ、付き合ったらわかるんじゃないん?

迷っている間に彼女は謹慎処分になり、 この話は立ち消えた。



一度だけ男子校の学祭に、独りでこそっと行ってみた。

しばらくぶらぶらしていると、何か匂いが違う… 長居は無用、と逃げ帰った。

結局、何にもわからずじまいだった。



ところが大学生ともなるとそうはいかない。 合コンとかに誘われる。


私は平静を装いながら様子を伺っていた。

何人かの男の子と会って、わかった事。

  "男の子" とは… 「恋愛の対象」なんだぁ…

納得がいかない。

女子大生に近寄って来る男の子は、 皆、「友達を求めていない」のだ。

私は友達が欲しいのに。

私はつまらなかった。


そんな時、 面白い女の子が現れた。

彼女(仮に"O嬢"とでも呼ぼう)は、女子大生のなかにあって "浮いて" いた。

背が高く細身で、まっすぐな髪をのばして、後ろで束ねていた。


服装は清楚。 丸襟の白いブラウスにチェックのフレアースカート、
昭和30年頃の私服に着替えた、女子高生みたいなの。

高校生でない証拠に、 他の学生は見向きもしなかった大学のペンダント
指輪
を身につけていた。

将来の目標は、学院に進学して修道院に入るという。

口の悪い学生は、 O嬢はシスターどころか、マリア様を目指していると噂した。



初めての夏休みが終わり、O嬢が帰って来た。 なんと、うっすらと化粧をしている。


服装は相変わらずダサイのだが、口紅までひいているではないか。

いったい何が彼女に起こったの? それはまもなく明らかになった。


英会話の講義はアメリカ人講師で行われていて、 その日は
"夏休みの出来事" について発表することになった。

"O嬢" は嬉しそうに話し始めた。

まるで、「ハワイはアメリカと日本の間の太平洋上にある島である」を
英語に訳すように、

  I got a boy friend in this summer …


みんな、ブッたまげた。 蝉も驚いて鳴くのを止めたくらいだ。

彼とは将来の夢を語り合う仲で、友情で結ばれているそうだ。

ということは、お相手は坊主修道師になるしかなく、彼は一生
欲望の成就する機会さえ、与えられないわけだ。

男の子を、 "恋愛の対象" としか考えない女子達は笑いころげた



ごめんね、 自分の事を棚に上げて、一緒になって笑ったりして。

男の子の友達がほしいなら求めよ、そうすれば与えられる。

"O嬢" だって例外ではない。 「友達になってぇ〜」それで済む。



恋愛するなら… 私の理想は、友達からの "自然発展" 型。


言うは易し…で、結構苦労した。 好きとか嫌いとかの方向へ話題が行かないよう、注意。

イイ感じになりかけると、的外れな事を言って必死で落した。


男の子との友情を保つには、 常に "一定の距離" がいる。 だいたい… 1mくらい。

こんなに涙ぐましい努力して、彼を段々好きになって来ると、

  「キミとはずっと、いい友達でいたい。」

  ンなぁ…  ぬけぬけと… よく言うわ〜


でも、 理想のために私も頑張った。 後を追いかけて行って、持っていた傘の柄で
背中をドツイてやった。


私達は初めてキスしたんだけど、それがなんかなのよ。

つまり、 何というか… 身内の挨拶代わりみたいな感じ。


やっぱり「いい友達」で正解だったのだ。


こうして私は研究レポートにこう書き加えた。



男の子は極めて鈍感である。



posted by 片岡 よしこ at 15:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
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