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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
12月になったばかりだというのに、 この寒さったらない。
今年の冬も去年のセーターで乗り切ろう。 ウール10%の安物でも、下着を着れば温かい。
それでもという時は、腰にカイロを貼ればいい。
不況の土木業界だから、 まる3年というものボーナスは支給されていない。
懐は寒く、 プレハブ社屋はさらに寒い。
去年、 大型ストーブが修理不能になり、小型ストーブひとつで暖を取った。
今年はそれさえも、寒がり常務の背中を温めるために持って行かれてしまった。
私はひざ掛けで足をぐるぐる巻きにし、机の下に置いた電気ストーブ(自前)で
こがさぬように、 足を炙っている。
そのくらい、 この業界は冷え込んでいる。
「赤毛のアン」を読んでる暇があったら、職探しにやっきになった方がいいのではないかと、
多くの良識ある読者は忠告するだろう。
にもかかわらず、 私ときたら頭の中はアンで一杯。
たまにかかって来る電話に、
「はい、赤毛のアンでございます。」
これじゃ、再就職も思いやられる。
「大きな望みがあるのって楽しいわ。」
そんなアンの言葉に、 おばさんは圧倒されてしまう。
その、 なんだ、 おばさんはもう年だし、
おまけにこんなに冷え込んだ業界で、
この先何の望みが輝いているっていうの?
奨学金や金メダルを取る望みに比べれば少々見劣りするけど、
私にだって立派に望みはある。
私の望みは、円満に定年退職することだ。 寒さくらいでイチイチ辞めてたら、
雪国の人に申し訳ないでしょう。
会社が潰れない限りは、 自分からケツをわったりしない。
晴れて退職する時は、送別会をしてもらおう。
忘年会で使う、大衆酒場みたいな安上がりの席じゃ不満だわ。
お料理屋さんの座敷の上座に座って、 大きな花束を貰うのよ。 勿論、餞別もね。
心の中では歓喜の大爆笑をしながらも、空涙のひとつも流そうと思う。
「セクハラしないようになれたのは、あんたのおかげだ。」と、
ある者は感謝するだろう。
またある者は、 私の手を取り、
「あの時あんたにスリッパで叩かれて、ワシは目が覚めました。
今のワシがあるのは、あんたが叱ってくれたからだ。」
だが、 今まさに別れんとする時、私には何の未練さえも残ってはいない。
アンタ達ともおさらばできる! へっ へ〜んだ! バイバイ オッサン!
これを "大きな望み" といわずして何と言えようか、 だ。
今まで私は、何人の送別会の世話役をしてきたことか。
本人に似合った花束を見立て、とりまとめた餞別に別れの言葉を添え…
ようやく私の番が来るというのに、みすみす逃してなるものか。
…と、 そんな望みを抱いて、私は寒い事務所に踏み留まっている。
そのくせ私は、取り立てて何もしていない。
それどころか、 最近、眼がうすくなってきたので、よく間違える。
おまけに、"物忘れ" も多くなった。
潰れる心配をしている場合ではないと、現実的な読者は思うだろう。
正直、 潰れたら、それでもいいかぁ… いや、潰れたほうが諦めも付く…
え〜い ツブれてしまえ!
定年まで勤めようと決めてたのに… この経営不振はご時世だろうか。
いいや、社長一族の責任でしょうが。 公共工事の減少はかなり前から読めていたはず。
なのに、 何の手も打たなかったのは誰?
ママ(専務)によく聞いて、教えて貰ってたんじゃないの?
ママは、何もわからん幼稚なオバハンのふりして、あちこちで情報仕込んで
来てるでしょうに。
アンタがマザコンってことはみんな知ってるんだから、安心してママに頼んで、
して貰えばいいじゃない。
少なくとも、アンタよりは仕事が速いわ。
働くんだから、報酬はちゃんと支払ってほしい。
また、 約束した昇給と賞与は、払って貰わなければならない。
支払えない理由を、その都度説明しなさい。
IQと偏差値だけが高い、 神経質なお坊チャマの心は傷つきやすく、
うっかりモノも言えやしない。 誰にブチまけたらいいのよ?
グズグズしてたら、私が社長になって、 アンタの送別会をしてやるわ。
かくして… 私は社長となり、会社は潰れない。 それどころか繁盛する。
細かい数字は部下に出してもらうようになり、 新しいアイデアを次々に
考え付いては忘れるようになる…
事務所は日当たりが良くて、暖かくて、 トイレはウォシュレット付き。
更に、 居心地のよい個室を社員に提供。 内職でも、アフィリでも、
自由にやってくれ。
でも上納金は取るから、しっかり儲けてね。 勿論、給料は払う。
私は社長として、 日々、自分と会社の名前を売る。
営業担当が話の種に困らんように。
"赤毛のアン 〜毎日読むアン〜" の出版を機に、
『ジョシー・パイ記念賞 "毒舌コンテスト"』を開催。
日頃の鬱憤をアンにぶつけるコンセプトがウケて、 大成功。
優勝者には、 アンに流れるケルト民族の故郷、スコットランドへのツアーを
プレゼント。 私を含む毒舌家達は、 快適なビジネスクラスで、憧れのUKへ飛ぶ。
こんな望み、 本当に馬鹿げている。
だけど、言わずにはいられなかったの。 自分の姿をまっすぐ見つめられないから。
本当は、 送別会などどうでもいい。
今、 ここがどんなに冷え込んでいても、
「これだから人生はおもしろい。」
そんな望みを持って生きていたいのだ。
忍耐が成功に変わるまでやり通したい、 と望む勇気が、今の私にはない。
私は望みの山々から目をそらしている。
顔をあげれば、 既に私は、広い地平線を見渡す場所に立っている。
低い山、小高い丘、 その先にそびえる山脈。
生きている限り、すべての山を登り
すべての流れをわたり
すべての虹を追って
夢を見いだしなさい
大好きだった歌を思い出している。
望みは、 まだない。 しかし私は、 寒くてもこの山を登り続けるだろう。
No.34 『第34章 すべての山に登れ』
12月になったばかりだというのに、 この寒さったらない。
今年の冬も去年のセーターで乗り切ろう。 ウール10%の安物でも、下着を着れば温かい。
それでもという時は、腰にカイロを貼ればいい。
不況の土木業界だから、 まる3年というものボーナスは支給されていない。
懐は寒く、 プレハブ社屋はさらに寒い。
去年、 大型ストーブが修理不能になり、小型ストーブひとつで暖を取った。
今年はそれさえも、寒がり常務の背中を温めるために持って行かれてしまった。
私はひざ掛けで足をぐるぐる巻きにし、机の下に置いた電気ストーブ(自前)で
こがさぬように、 足を炙っている。
そのくらい、 この業界は冷え込んでいる。
「赤毛のアン」を読んでる暇があったら、職探しにやっきになった方がいいのではないかと、
多くの良識ある読者は忠告するだろう。
にもかかわらず、 私ときたら頭の中はアンで一杯。
たまにかかって来る電話に、
「はい、赤毛のアンでございます。」
これじゃ、再就職も思いやられる。
「大きな望みがあるのって楽しいわ。」
そんなアンの言葉に、 おばさんは圧倒されてしまう。
その、 なんだ、 おばさんはもう年だし、
おまけにこんなに冷え込んだ業界で、
この先何の望みが輝いているっていうの?
奨学金や金メダルを取る望みに比べれば少々見劣りするけど、
私にだって立派に望みはある。
私の望みは、円満に定年退職することだ。 寒さくらいでイチイチ辞めてたら、
雪国の人に申し訳ないでしょう。
会社が潰れない限りは、 自分からケツをわったりしない。
晴れて退職する時は、送別会をしてもらおう。
忘年会で使う、大衆酒場みたいな安上がりの席じゃ不満だわ。
お料理屋さんの座敷の上座に座って、 大きな花束を貰うのよ。 勿論、餞別もね。
心の中では歓喜の大爆笑をしながらも、空涙のひとつも流そうと思う。
「セクハラしないようになれたのは、あんたのおかげだ。」と、
ある者は感謝するだろう。
またある者は、 私の手を取り、
「あの時あんたにスリッパで叩かれて、ワシは目が覚めました。
今のワシがあるのは、あんたが叱ってくれたからだ。」
だが、 今まさに別れんとする時、私には何の未練さえも残ってはいない。
アンタ達ともおさらばできる! へっ へ〜んだ! バイバイ オッサン!
これを "大きな望み" といわずして何と言えようか、 だ。
今まで私は、何人の送別会の世話役をしてきたことか。
本人に似合った花束を見立て、とりまとめた餞別に別れの言葉を添え…
ようやく私の番が来るというのに、みすみす逃してなるものか。
…と、 そんな望みを抱いて、私は寒い事務所に踏み留まっている。
そのくせ私は、取り立てて何もしていない。
それどころか、 最近、眼がうすくなってきたので、よく間違える。
おまけに、"物忘れ" も多くなった。
潰れる心配をしている場合ではないと、現実的な読者は思うだろう。
正直、 潰れたら、それでもいいかぁ… いや、潰れたほうが諦めも付く…
え〜い ツブれてしまえ!
定年まで勤めようと決めてたのに… この経営不振はご時世だろうか。
いいや、社長一族の責任でしょうが。 公共工事の減少はかなり前から読めていたはず。
なのに、 何の手も打たなかったのは誰?
ママ(専務)によく聞いて、教えて貰ってたんじゃないの?
ママは、何もわからん幼稚なオバハンのふりして、あちこちで情報仕込んで
来てるでしょうに。
アンタがマザコンってことはみんな知ってるんだから、安心してママに頼んで、
して貰えばいいじゃない。
少なくとも、アンタよりは仕事が速いわ。
働くんだから、報酬はちゃんと支払ってほしい。
また、 約束した昇給と賞与は、払って貰わなければならない。
支払えない理由を、その都度説明しなさい。
IQと偏差値だけが高い、 神経質なお坊チャマの心は傷つきやすく、
うっかりモノも言えやしない。 誰にブチまけたらいいのよ?
グズグズしてたら、私が社長になって、 アンタの送別会をしてやるわ。
かくして… 私は社長となり、会社は潰れない。 それどころか繁盛する。
細かい数字は部下に出してもらうようになり、 新しいアイデアを次々に
考え付いては忘れるようになる…
事務所は日当たりが良くて、暖かくて、 トイレはウォシュレット付き。
更に、 居心地のよい個室を社員に提供。 内職でも、アフィリでも、
自由にやってくれ。
でも上納金は取るから、しっかり儲けてね。 勿論、給料は払う。
私は社長として、 日々、自分と会社の名前を売る。
営業担当が話の種に困らんように。
"赤毛のアン 〜毎日読むアン〜" の出版を機に、
『ジョシー・パイ記念賞 "毒舌コンテスト"』を開催。
日頃の鬱憤をアンにぶつけるコンセプトがウケて、 大成功。
優勝者には、 アンに流れるケルト民族の故郷、スコットランドへのツアーを
プレゼント。 私を含む毒舌家達は、 快適なビジネスクラスで、憧れのUKへ飛ぶ。
こんな望み、 本当に馬鹿げている。
だけど、言わずにはいられなかったの。 自分の姿をまっすぐ見つめられないから。
本当は、 送別会などどうでもいい。
今、 ここがどんなに冷え込んでいても、
「これだから人生はおもしろい。」
そんな望みを持って生きていたいのだ。
忍耐が成功に変わるまでやり通したい、 と望む勇気が、今の私にはない。
私は望みの山々から目をそらしている。
顔をあげれば、 既に私は、広い地平線を見渡す場所に立っている。
低い山、小高い丘、 その先にそびえる山脈。
生きている限り、すべての山を登り
すべての流れをわたり
すべての虹を追って
夢を見いだしなさい
大好きだった歌を思い出している。
望みは、 まだない。 しかし私は、 寒くてもこの山を登り続けるだろう。
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いつも楽しみに拝見させていただいてます。
先々月まで建設業界で事務員をしていました。
この業界は今、冷え切ってますね。
頑張ってくださいね(ストーブぐらい買ってもらいなさい!)
グズグズしてたら、私が社長になって、 アンタの送別会をしてやるわ。
この意気ですよ、女は!
受けましたギャハハハ!!☆ミヾ(∇≦((ヾ(≧∇≦)〃))≧∇)ノ彡☆バンバン!!