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 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.33 『第33章  私はワタシよ』


ホワイトサンズでのコンサートの帰り道。 アン達を乗せた馬車は、
ダイヤモンドや白いレースの豪華なドレスやらの話で賑やかだったのだろう。

お金持ちになりたいという女の子達に、アンはきっぱり言い切った。

  「一生ダイヤモンドに慰めてもらえる身分になれなくても、
  自分以外の人にはなりたくない。」



私は、今のまんまの私で、お金持ちになりたいわ、 アン。



私は、裕福な人達とお付き合いするのが好きだ。 自分も裕福になったような気がする。


大学時代の何人かの友人は、 実際、ほんとうに裕福だった。

仲良しになってみたら実家がお金持ちだった、 というだけの事で、
お金持ちとしか付き合わない訳じゃない。

真面目で分別のありそうな同級生に比べると、不良っぽくて魅力的だったのだ。

私はそんな人に弱い。


仲良くなって下宿へ遊びに行くと、家ごと借りていて、 ばあやさんまでいた。

下宿したいと親にお願いしたら、こうなったそうだ。

片想いで、告白さえしていないのに、 立派に "振られた" つもりになり、
朝まで彼女のヤケ酒に付き合った事がある。

それも、お気に入りの銘柄のワインしか飲まなかったり、オードブルがない、と怒ったり。

ヤケ酒のツマミは "失恋話" だと教えてあげたら、大泣きしていた。

一所懸命で、ちょっと傍迷惑な、 かわいい友人だった。


卒業してまもなく、 そんな彼女から結婚式の招待を受けた。

ヤケ酒を飲み、一緒に泣いてくれた、 ただ一人の友人だからという理由だった。

但し、新郎は振られた相手ではなく、大阪で飲食店を中心に手広く事業する家のご子息、
なのに将来医者を目指しているという、 複雑な男性らしい。

対する彼女は、九州湯布院の老舗温泉旅館のお嬢さん。


ここまで聞けば、相当豪華な披露宴になるのは明らかだった。


前泊まりで大阪のホテルに着いた瞬間、 そこは別世界だった。

一流ホテルってこうよね、 とまずは感心。

私の田舎で一番の老舗ホテルにも "国際" と名がつけられているが、
あれのどこが国際なんだか。


ホテルには地元の土産物店、という私の常識を覆すように、ブランドショップや
高級ブティックが並んで、買い物客で賑わっていた。

素敵な品を見る度にお金持ち気分になるが、 世間ではこれを "妄想" と呼ぶ。


こんなホテルで食事するお金はないので、シッカリ者の私は、昼食にお弁当を
作って持参していた。

ただの "節約" なのだが、彼女らは口々に感心するのだ。

  「あなたはよく気がつく、いい奥様になれるわ〜」



夕食は、 別室に泊まっている招待客も含めた6人で、"美味しい" と評判の
中華料理を食べに行くことに決まった。

お願いだから、勝手にきめないでくれ〜

私は外でたこ焼きとか おうどんを食べたい〜


支度の整った人が次々に集まった。

一人は、先月香港にお父様のお供で旅行した折にあつらえた、チャイニーズドレス

太もも辺りまでスリットが入って、すごくセクシー。

街の中華料理屋のアルバイトが、制服に着せられているペラッペラのとは、
もう雲泥の差。 どこから見ても、香港マフィアの悪い女だ。

また一人は、妊娠中だからおしゃれできないとボヤきながら、素晴らしいダイヤの
ネックレスとブレスレットを付けている。

ナニが "おしゃれできない" よ! 嫌味だわ、 と思ってはいけない。

本当に "先祖代々お金持ち" の方に、"嫌味"という概念はありません。

それらのダイヤは、 彼女の祖母がお嫁に来る時持って来た品で、
最近彼女に譲られたのだそうだ。


そんな素晴らしい光景を、私はベットの中からうっとりと眺めていた。

都会の空気に酔ったのか、昼から痛み始めた頭痛がピークに達し、
気分が悪くなってしまったのだ。

残念な一夜だった。

私がもし、「たこ焼きとか、おうどんが食べた〜い!

そうお願いしたら、きっとカクテルドレスとチャイニーズドレスのままで、
街に繰り出して行っただろう。



更に残念なことに、この結婚式以降、 彼女達には一度も会っていない。

世界が違い過ぎて、交わる事がなかったのだろう。

また、 彼女達ほど個性的で、傍迷惑だが心の自由なお金持ちには、
その後も出遇った事がない。

だが、 彼女達と知り合ったおかげで、本物のお金持ちと成金の区別が
付けられるのかもしれない。

下町のしがない印刷屋の娘だった私が、気後れする事もなく "自分自身" で
いることができた。

彼女達は、 本当に "懐の温かいお金持ち" だったのだ。



今日の私は、古着屋で買ったスカートに、バーゲン品のセーターを着ている。

胸には、小さい人工ダイヤのネックレス。

充分に幸せだ。 想像の余地も残っているしね。


なんたって、

  「彼はこのネックレスを、あなたのおばあさまに負けない位の愛情を
   込めて、私に贈ってくれたんですもの。」



これから先、 また彼女達に会うことがあったら、そう言って自慢するだろう。


posted by 片岡 よしこ at 19:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
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