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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
〜「生きていて、いったいなんになるの? アン?」
ステラがアンにグチをこぼしました。
アンの答えはいつも通り立派だわ。
でも、憂鬱な雨の夜には、 心は響き合うのを忘れてしまうようです。
ごもっともな答えではなく、ステラはアンの本音を聞きたかったのよ。〜
22歳ともなれば、もう大人。
4年生になり、卒論で忙しくなった。
ミッチやミス・クセの下宿に入り浸って、オトコの話で暇を潰す事もなくなった。
夜遅くまで勉強していると、これが何になるんだろうと何度も考えてしまう。
そりゃ、できることなら立派な卒論を書いて褒められたいが、
私の脳ミソじゃ無理なのは明白。
とにかく、提出することに意義があるのだ。
卒業させてもらうにはとりあえず、卒論をやっつけねばならないと、
私は自分に言い聞かせる。
しかし、蒸し暑い雨の夜、 煮詰まった頭で私は悩んでしまう。
これが何になるんだろう…
立派な業績を残した、偉大な学者達の考えをただコピーしているだけだ。
新しい論理はおろか、自分の解釈で光をあてるなんて… 夢のまた夢。
頭が疲れると、学生バンドのライブに私はたびたび足を運んだ。
忘れようとしても思い出される卒論の事… ストレスのせいか、舌がヒリヒリする。
脳ミソが痺れる音量は、そんなウサを忘れさせてくれるからだ。
ところが今夜のバンドは… ほんとに、まぁ、 あまりにひど過ぎる。
これでは逆にウサが溜まってしまう。
オリジナル曲をやるバンドはなく、ほとんどは好きなバンドや曲のコピーだ。
そういうのに限って、まず自分が楽しんで演る事をモットーにしている、
などと平気で言うから腹が立つ。
ハモらないビートルズや、音がデカイだけのロックを聴かされる身にも
なってくれや…。
この人達は自分が楽しめればいいのであって、これが何になるのかと
自分に問う事もなく、苦しむこともないのだろう。
設備もミキサーもボロのライブハウス。 それに見合ったバンドの迷演奏。
この暑いのに、エアコンはダウンする始末。
機材と照明と出演者の熱気でむせ返る中、店のマスターは涼しい顔で打ち水を
始めたが、窓際の客はびしょ濡れ。 それが汗のせいか、打ち水なのか…。
マスターは苦笑しながら、演奏中の必死の面々には目もくれず、
ステージ前の床をのんびり拭き始めた。
あんまり見られん絵よなぁ…
ビートルズのコピーバンドは、最初のコーラスの第一声からハモれていない。
それ以前に声が潰れ、メロディーになっていない。
そして最後まで、 とうとうハモリは聴けなかった。
ヘビメタバンドは… リズムはおろか、チューニングさえ合っていない。
聴いている方が "ヘビー" だ。
弾けないんなら、せめて最後はギターをブチ壊して、大暴れしてよ。
そしてそれを最後に、音楽はヤメて学業に専念して…。 お願いだから…
私は耐えられなくなって、外に出た。
"佐竹" は、軽く耳栓をしているから平気で居られるのだ。
「名曲は誰がやっても名曲でございますよ。 迷演奏の名曲でございます」
と、一人でウケている。
私は、アンのご立派な見解を思い出していた。
数々の名曲を生み出した、偉大なるビートルズ。
彼らの曲をコピーすることで、彼らが創り上げた音楽や感じ方を引き継いで
いけるのだから、 迷演奏にも価値があるってことかしら…
いや、そうではないらしい。
「お嬢様! ご覧下さいませ!」
佐竹が爆笑している。
「本気で唄っておられるのに、ぜんぜんハモっておりませんよ。
いやぁ〜 来て良かった。 こんなに笑わせてもらえるとは…
この世に笑いがある限り、生きている甲斐があったというものでございます」
そんな佐竹の "一言" で、私はどうにか "ヘビー" な気持ちを持ち帰ることなく、
むしろ、何かしらほっとした気持ちで家に帰り着いたのだった。
確かに… 何事も笑いに変える能力は、価値無きごときものに価値を見出すのだ。
そういう自分だって、なんぼのモンなんよ〜 って、自分を笑える事。
思い通りにはならない人生を生き抜く知恵とは、 笑って切りぬける、
ってことなのだ。
笑ってもらえるような卒論を書いて卒業しよう。
私はほっと肩の力を抜いた。
No.106 『第35章 笑い』
〜「生きていて、いったいなんになるの? アン?」
ステラがアンにグチをこぼしました。
アンの答えはいつも通り立派だわ。
でも、憂鬱な雨の夜には、 心は響き合うのを忘れてしまうようです。
ごもっともな答えではなく、ステラはアンの本音を聞きたかったのよ。〜
22歳ともなれば、もう大人。
4年生になり、卒論で忙しくなった。
ミッチやミス・クセの下宿に入り浸って、オトコの話で暇を潰す事もなくなった。
夜遅くまで勉強していると、これが何になるんだろうと何度も考えてしまう。
そりゃ、できることなら立派な卒論を書いて褒められたいが、
私の脳ミソじゃ無理なのは明白。
とにかく、提出することに意義があるのだ。
卒業させてもらうにはとりあえず、卒論をやっつけねばならないと、
私は自分に言い聞かせる。
しかし、蒸し暑い雨の夜、 煮詰まった頭で私は悩んでしまう。
これが何になるんだろう…
立派な業績を残した、偉大な学者達の考えをただコピーしているだけだ。
新しい論理はおろか、自分の解釈で光をあてるなんて… 夢のまた夢。
頭が疲れると、学生バンドのライブに私はたびたび足を運んだ。
忘れようとしても思い出される卒論の事… ストレスのせいか、舌がヒリヒリする。
脳ミソが痺れる音量は、そんなウサを忘れさせてくれるからだ。
ところが今夜のバンドは… ほんとに、まぁ、 あまりにひど過ぎる。
これでは逆にウサが溜まってしまう。
オリジナル曲をやるバンドはなく、ほとんどは好きなバンドや曲のコピーだ。
そういうのに限って、まず自分が楽しんで演る事をモットーにしている、
などと平気で言うから腹が立つ。
ハモらないビートルズや、音がデカイだけのロックを聴かされる身にも
なってくれや…。
この人達は自分が楽しめればいいのであって、これが何になるのかと
自分に問う事もなく、苦しむこともないのだろう。
設備もミキサーもボロのライブハウス。 それに見合ったバンドの迷演奏。
この暑いのに、エアコンはダウンする始末。
機材と照明と出演者の熱気でむせ返る中、店のマスターは涼しい顔で打ち水を
始めたが、窓際の客はびしょ濡れ。 それが汗のせいか、打ち水なのか…。
マスターは苦笑しながら、演奏中の必死の面々には目もくれず、
ステージ前の床をのんびり拭き始めた。
あんまり見られん絵よなぁ…
ビートルズのコピーバンドは、最初のコーラスの第一声からハモれていない。
それ以前に声が潰れ、メロディーになっていない。
そして最後まで、 とうとうハモリは聴けなかった。
ヘビメタバンドは… リズムはおろか、チューニングさえ合っていない。
聴いている方が "ヘビー" だ。
弾けないんなら、せめて最後はギターをブチ壊して、大暴れしてよ。
そしてそれを最後に、音楽はヤメて学業に専念して…。 お願いだから…
私は耐えられなくなって、外に出た。
"佐竹" は、軽く耳栓をしているから平気で居られるのだ。
「名曲は誰がやっても名曲でございますよ。 迷演奏の名曲でございます」
と、一人でウケている。
私は、アンのご立派な見解を思い出していた。
数々の名曲を生み出した、偉大なるビートルズ。
彼らの曲をコピーすることで、彼らが創り上げた音楽や感じ方を引き継いで
いけるのだから、 迷演奏にも価値があるってことかしら…
いや、そうではないらしい。
「お嬢様! ご覧下さいませ!」
佐竹が爆笑している。
「本気で唄っておられるのに、ぜんぜんハモっておりませんよ。
いやぁ〜 来て良かった。 こんなに笑わせてもらえるとは…
この世に笑いがある限り、生きている甲斐があったというものでございます」
そんな佐竹の "一言" で、私はどうにか "ヘビー" な気持ちを持ち帰ることなく、
むしろ、何かしらほっとした気持ちで家に帰り着いたのだった。
確かに… 何事も笑いに変える能力は、価値無きごときものに価値を見出すのだ。
そういう自分だって、なんぼのモンなんよ〜 って、自分を笑える事。
思い通りにはならない人生を生き抜く知恵とは、 笑って切りぬける、
ってことなのだ。
笑ってもらえるような卒論を書いて卒業しよう。
私はほっと肩の力を抜いた。
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