〜ジョンの母親が亡くなりました。 そして、真相が明らかにされたのです。
なんてクソババアなんでしょう。
息子を誰にも渡したくないからって、ジャネットに
結婚を申し込まないことを誓わせるなんて。
余命半年のはずが、結局20年近く生き永らえたものだから、
ジョンも辛かったでしょうが…
ジャネットも、余程ジョンの事が好きだったのね。〜
22歳ともなれば、もう大人。
15年、 かなり長いと言っていい年月だ。
その間 "一度だけしか洗濯していない" キルティングの手提げバッグは、
結構カワイイと褒められる事が多い。
それも、何故か皆オトコだ。
両端のどちらからでもファスナーでパックリ開閉できるようになっていて、
ピアノの教則本がすっぽり入るので、初めはお稽古かばんに使っていた。
柄は、赤地に白い水玉模様。 …なんて、もしこれが服なら派手過ぎる。
これを着こなせるのはミッキーマウスの "オンナ" のミニーと、
オールディーズバンドの老けたポニーテールくらいのものかしら…
通学には大きな黒いバッグ。 春も夏もコイツだけ。
それ以外は赤白水玉。 正直くたびれて、色も褪せている。
バーゲンを見る度に心が動くが、 新しいのを買ったらこの "赤白水玉の子" は
どうなるのか?
きっと私は、この子を捨てちゃうに違いない。
いや… 何でも捨てて始末するのが大好きだから、ゼッタイ捨てるだろう。
店頭で新しいバッグを右肩に、赤白水玉を左肩に…、 鏡の前で見比べて、
ため息と共に、新しい方を棚に戻す。
新しいのと入れ替えに "この子" を捨てる自分に、気が滅入ってしまうのだ。
ある時。 "ゴウコン" に、赤白水玉を下げて行った。
他の女の子達は、普通に流行のデザインとかブランドものとかをお伴に
めかし込んでるから、私みたいな赤白水玉は無視されるどころか、 評価外" だ。
「かわいいカバンですね」
男の子のうちの一人に言われたが、私にはわかってる。
これって、褒められてんじゃないからねぇ。
つまり、大学生が "赤白水玉のお稽古かばん" ですかぁ、ってことで…。
喜んでる場合じゃないのに、 やっぱ… オトコ受けいいんだわ…
わかっていても、内心私は嬉しい。
長く付き合ってきたものを捨てるには、それなりにちゃ〜んとした理由が要る。
引っ掛けてバリッと破れるとか、お弁当に入れたオカズの煮汁がこっぴどく
こびりつくとか、 加えて、こぼれた煮汁の魚臭さが抜けないとか…
そんな決定的な事でも起こらない限り、新しいのに変えられない。
だが… そうなったらなったで、私は自責の念に駆られて落ち込むだろう。
赤白水玉のバッグが好きでたまらん訳ではない。
使いものになる間は決して捨てない、と約束しているのでもない。
むしろ新しいバッグが欲しいと考えるのは自然なことだし、
取っ替えるのも私の自由だ。
日頃から目星をつけているものが何点かあるのだが、本当は買う気など全くない。
10年以上も同じバッグを持ち続けると、違うバッグがある事など
考えられなくなるものなのだ。
それでも人は変わる。
「新しい葡萄酒は新しい皮袋にいれろ」 っていうでしょ。
新しい葡萄酒は、古い皮袋を破いてしまうから。
でもね、 "まぁいいや まだ使えるから" と、新しい葡萄酒を古い袋に
いれちゃうのよ、 私は。
そして、 破けて初めて、赤白水玉が似合わないオンナになったと気付く。
お気に入りと言う訳でもないのに、新しいのに変えられない。
それはやはり、 私は "赤白水玉" のバッグを愛しているのだ。
もしかすると… 愛するとは、捨てる理由が見つからないことなのかもしれない。
次が見つかればそれで良い、というものでもない。
捨てられないから、見つけられないのだ。 それが愛というものなのだから。
"愛する" とは、 自分から相手を捨てることができないってことなのだ。
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赤毛のアン 〜毎日読むアン〜
No.105 『第34章 赤白水玉のお稽古かばん』
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