"励ましクリック"、 よろしくお願いします! にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.26 『第26章  ある変わり者の物語』




"読書感想文"。 宿題の類で、一番嫌われているモノのひとつだ。

読まなければ書けないし、読んでも何と書いていいかわからない。


父なら、 まず私にこう聞くだろう。

  「面白かったか、 面白くなかったか?」

課題になる本は、罰ゲームかと思うくらい面白くないから、

  「おもろくなかった。」

そう言うと、 絶対こう答える。

  「面白くなかった、 と書いとけ。」

それで済ませられるものなら、あんたには聞かない。


どうせなら、先生が大喜びしそうな感想文をと思い、 書いてみた。

人間の尊厳と、平和を愛することの大切さを、改めて思い知らされる様な、
そんな内容。 一等賞を貰った。


調子に乗ったら次は全国大会だ。

純粋な女性の生き方に感銘を受け、自らも自立した生き方をする事を
高らかに宣言する、 そんな内容。

選考者の心をくすぐるように考えて書いたのだから、嘘をついたも同然だ。

さすがに全国は無理だったが、校内では一等賞だった。


それが器用にまとめた大嘘でも、表彰されるとちょっと嬉しいのが情けない。

優等生っぽいだけで、つまらないわね。



アン達の物語クラブでは、週にひとつ物語を書いて、皆で読みあうことになった。

書いた物は大事にとっておいて、子孫に読んでもらうそうだ。


でも、 それは、どうかなぁ…

子孫に読ませる以前に、 自分が読むのも嫌になるわよ、 アン…



昔、密かに、アン達のように "劇的な物語" を書いてみようとしたことがある。


そのノートは子孫には読ませたくないし、裸を見られるより恥ずかしいので、
お嫁に行く前に燃やしたつもりでいた。

それが最近、妙に気になって、 古い日記やらを詰め込んだ箱を探してみると、
あった、 ありました。


最初の作品は、 主人公の "マドモァゼル・ヨシコ" がパリを行く物語。

魅惑に溢れたパリの街を、マドモァゼルはただ、とめどもなくうろつき回るばかりで、
事件はおろか、 いっこうに話が進展しないまま、終わってしまった。


これでは読者(当時の友人2名)も拍子抜けするので、
今度は「フェリクス・パッパラルディー氏の大冒険」を企画した。

パッパラルディー氏は自慢の口ひげをいじくり回し、「フム…」と考え込むが、
結局、何ひとつ冒険的な行動は起こさぬまま…、

やっぱりこれも終わってしまい、読者からはさすがに苦情が来た。


個性的で風変わりな人物を書きたかったのに。


"変人" が "凡人" を巻き込んで騒動になり、非常識なヤツと馬鹿にされても
悠々としている。

そんな滑稽な物語にしたかったが、器用で嘘つきなだけじゃ続けられない。

「これ、"オモシロイ"」を、どうやって表現したらいいのか、
自分でもわけがわからなくなって、収拾が付かず、 やめてしまう。

悔しいなぁ…


ちなみに、最近思い付いた "新作" は、「赤毛のアン太郎」。 どうじゃろ?

ある日、突然私の部屋に住み着いた、 風変わりなオジサンが、
さてさて、どんな騒動を巻き起こすやら。

また何にもしないうちに終わってしまうって?

まだ何にもしていないので、 反論できません。



まずは、 "器用な感想文" 以上の物を書くつもりでいるから…、


みんな!!

面白かったら、素直に 「オモシロイ

面白くなかったら、素直に 「オモシロクナイ」と書いとけ。
posted by 片岡 よしこ at 16:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.25 『第25章 クリスマスの思い出』




週末は、寒くもなく暑くもない秋晴れだったのに、
一夜にして秋が深まった。

早くに飾られたクリスマスツリーが、 今日はしっくり空気に溶け込んで、
クリスマスが現実味をおびてきた。



クリスマスプレゼント、 貰ってうれしい?


私の場合、 喜んで受け取ることの出来るプレゼントの上限は3000円。
あとは材料費と手間のみ、 つまり "手造り" の物。

夫とは、彼の借金がもとで離婚したけど、"ミルフィーユがおかずにならない" と
言われたことも微妙に影響していた。


彼からプレゼントを貰うたびに思った。

  「これ…、いったい、いくらなんよ…?」

うっ… 高そうだけど、そんなお金があるなら家計に入れてくれ…

これでまた借金が増えた… のか…


当時はそれでも、気を遣って嬉しそうな笑顔を作ってみたりしたが、
今となっては "お愛想のクリスマスプレゼント" なんて、 もう要らない。



気楽に受け取れるプレゼントがいいと思わない?


"けっさく" なプレゼントを思い起こしてみると、 あるある…

父が母に贈った "掃除機"。


クリスマスに "掃除機" はないわぁ。
しかも掃除は私達の仕事だから、 母はほとんど使わないし。

ちなみにその年、父からの私へのプレゼントは、
ドイツ製の切れ味バツグンの "爪切り" だった。 大笑いだわさ。



手造り部門では、 おじいちゃんの作品

段ボールを重ねて形を作った、 "ツリーを立てる鉢"。


段ボール製だから、もちろん "はりぼて" 仕立て。

それでも、赤茶色の "レンガ造り風" にちゃんとペイントされていて、
"はりぼて" とは思えないくらいどっしりして見える、ツリーにぴったりのヤツ。


ある年のクリスマス。  本物の大きな樅の木が手に入ったのに、
木に見合った大きな鉢が見つからない。

何でもヤッツケのおばあちゃんは、古くなった火鉢を引っ張り出して来たが、

それは中国の枯れ山水の描かれた、ヒビの入ったシロモノで…

そりゃあ "ナシ" でしょう!


思えば、祖父は "クリスマスが何なのか" もよく知らない人だったのだ。

町内の神社の秋祭りの仕切り方はお手の物だが。


そんな祖父が、どうやってあんなにクリスマスらしい雰囲気の鉢を
考え付いたのか、両親や祖母に聞いても「さぁ…」と首を傾げていた。



さて…、 アンの貰ったプレゼントは、あのふくらんだ袖のついた、
最新流行の "パフスリーブ" のドレス。


茶色の光沢のある絹… しかし、それを着たアンの描写がない。

リボンはどこに結んだのか、 お下げ髪なのか、垂らしていたのか。

どんな風に見えたのか。


"なかなかきれいに見える" ことしかわからない、このドレス。

そのドレスを贈るために受けたマシューの試練は、私達読者だけが知っている。

こればかりは、いくらアンの想像力を総動員したところで、知る由もない。

素晴らしいプレゼントの影に、 贈る者の汗と涙有り、 って訳だ。



熊手や干草の種、 掃除機や爪切り…。

祭りのチョウチン選びは上手にできる連中が、不器用に差し出してくれる
クリスマスプレゼント。

  「とっても嬉しい!ありがとう!」



クリスマスの思い出は、プレゼントが貰えない年になっても、永く心に残る。


街角のツリーが一層華やかになる頃まで、

秋の夜長、蒲団の中の足が暖まるまで、 しばらくは、思い出に浸ってみよう。
posted by 片岡 よしこ at 00:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.24 『第24章  まだまだジョシー・パイ』

「人が嫌がることを言ってはいけない。」


こどもの時から "耳にタコ" の、 この教訓。

ジョシー・パイが更に詳しく教えてくれた。

  「その人が言われて嫌だと思うであろうことを知っていて、
  その事をあえて自分本位な目的のために言ってはいけない。」




アンが一番気にしているのは "赤毛" だ。

あるとき、アンの通う学校で、寄付金集めのためのコンサートが開かれることになった。

ジョシー・パイは劇も暗誦も嫌いなくせに、アンが "お付の妖精役" を
もらったので、気が悪い。

ジョシーは、身のほど知らずにも妖精の女王を狙っていたのだろうか。


  「太った妖精なんて聞いたことない。妖精はすらりとして痩せてなくちゃ。」
アン、 そうかもしれないけど…、

太った妖精がいてもユーモラスで可愛いと思うけど…


  「赤毛の妖精なんて、太った妖精と同じくらいおかしい。」

ジョシー、 "赤毛" がアリなら何でもアリ?

けれどもウマい事言うじゃないの!



アンの髪が成長と共にきれいな赤褐色に変わっていっても、ジョシーは認めない。

  「前より赤くなったんじゃないの?」

  「自分の髪が赤いってどんな気持ちがするものなの?」


アンが嫌がってるでしょうに!



そんなことして、いったい何になるっていうの?  ジョシー??

あんた、 アンがシャクにさわってしょうがないんだろうけど、
いったい、どうなったら満足?

"赤毛"をネタにされるのが嫌で、おどおどするアンを見るとき?

アンが苦手な "幾何" の点が足りなくてクイーン短大に不合格になったら満足?


ジョシー、 アンが赤くなったり青くなったりするのが
面白くてしょうがないんだろうけど、 いいかげんにしときなさいよ。

人のあらさがしをする暇があったら自分をよく見ること。


あんたにも才能はある。

持って生まれたものは、 それが悪い性格であっても使わなければいけない。


弁護士とか、検事とかはどう?

それだけ人の嫌がることを見抜く目を持ち、情け容赦なく攻める性根があれば、
それが悪名であれなんであれ、立派に名を残す希望がある。


そして、 この一言だけを練習することよ。
あんたには地獄の苦しみだと思うけど、

  「 私も嬉しい 」



ジョシーよ、 汝の心と口を治めよ。

さもなくば汝の名は永遠に "パイ家" の者と呼ばれるであろう。
posted by 片岡 よしこ at 13:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.23 『第23章  ジョシー・パイ』




パイ家の人間というだけで、アヴォンリーでは折り紙付きのワルらしいのだ。

ずるくて、いじわるで、 人に好かれようなどとは一切考えもしない一族らしい。


アンの魔法も、パイ家の連中には効かない。

  「ジョシーはパイ家の一員だからね。つきあいにくくて当然なんだよ。
  ああいう人たちも社会でなにかの役にたっているんだろうけど、
  アザミと同じように、なんの役に立っているのか、わたしにゃわからないね。」


あら、マリラ、 ジョシーは物語には絶対欠かせない、重要な役割をしているわ。

それは、 "嫌われ役"。


「嘘ばっかり。」

メアリーズベルの女の子が、屋根の棟木の上を歩いたなんて、 

アン… 嘘でしょ…?

これがズバリ言えるのはジョシー・パイ、 あんたしかいない。

名誉をかけたアンは足首を骨折。

ジョシー、 あんたは"嫌われ役"以外の何者でもないわ。



ジョシー・パイの容姿で、はっきりしているのは太っていること。

勉強では、計算が苦手。 性格はずるくてやきもちやき。

別に珍しくもない、 つまり、どこにでもいる嫌な女の子よ。


それなのに私ったら…、ジョシー・パイの毒舌を聞くと、すごく楽しくなっちゃうの…



クイーン短大に進学する時の、ジョシーの言い草ったらない。


ジョシーは勉強するだけのために大学へいくそうだ。

  「お慈悲にすがって生きている孤児と違って、自分で生活費を稼がなく
  ていい。 孤児は目の色変えて頑張らなくちゃね。」

性格、わるっ!


クイーンに進学して、ホームシックのアンを慰める(?)言葉がすごい。


  「泣いちゃダメよアン、見られたものじゃないから。
  鼻と目が赤くなると、全身これ まっかっかよ。」

涙も止まるわ!


更にジョシーの毒舌は続く。


"あの赤毛の子は誰だ" って、聞かれたジョシー。

  「あれはカスバート家にもらわれてきたみなしごで、
  それまではどこでなにをしていたのかだれもよくは知らない。」

と言っておいたらしい。

その質問をしたのは、ちょっとイケてる男の子だったからやきもち焼いたのよ!



アンだけに限ったことじゃない、誰に対してもこの調子だから、
ジョシー・パイはクイーン短大でも学校一の毒舌家として
いささか名を売ったのだ。


"いいこと嫌い" の典型よね。


でも、 私にも、そういう気持ちは「ございません」とは言い切れない。


赤毛でみなしごで、大して器量もよくないのに人気があって、
勉強もよくできて、なにかしら人を惹きつける、 そんな魅力のある子がいたら、
シャクにさわるもの。


だから、 ジョシーの毒舌が楽しいのかもしれない。

私の面目ない"やっかみ"を、ジョシーが代弁してくれる。
posted by 片岡 よしこ at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.22 『第22章  夏の夕暮れ時』

牧師館のお茶に招かれたアンは、幸せ一杯で帰って来た。

マリラのギンガムの膝に、疲れた巻き毛の頭をのせて、
アンはうれしそうに一部始終を語って聞かせた。


夕暮れの涼しい風に吹かれておしゃべりを続けるアン。

いつもの辛らつな皮肉も言わず、ただ黙って聴いているマリラ。


二人の甘く優しい関係が、風や、星や、ホタルと、ひとつに溶け合って、
言葉には言い表せない、素晴らしいものを作りあげ、 私の心を惹き付ける。


アンの体の温もりを感じながら、マリラは優しく髪を撫でているに違いない。

子供に対しては、何か教育的なことを言わなければいけないと信じているマリラも、
この時ばかりは、温かく心地よい母親のような感情にうっとりとしているようにみえる。


触れ合うと、 気持ちがいい。

私をお母さんと間違えたこどもが、暖かい手を私の手の中に滑り込ませた時など、
"このまま気付かなければいいのに"、 と思う。


アンには気難しい老人や頑固な独り者、おせっかいな叔母さんなど、

世間で付き合いづらいと言われる人なら、どんな人とでもうまくやっていく才能がある。

しかも好きなことを言って気に入られるのだから、それはむしろ魔法の域に近い。



私には86歳になる叔母がいる。

生涯独身で、 この年になってもお金の計算には誤りがない。

バブル期には株で儲けたという噂だが、あてにされたくないらしく、
人にはそ知らぬ顔をしている。


私は、本人のいない所では "強ツク張りばぁさん" と呼んでいる。

"貰った物はすぐ返す" の鉄則を守り、身内の誰をもあてにしていない。

事実、病院のお見舞いに到るまで、 "交通費" という形でお金に換算する。


そんな彼女も、 身体がいうことを利かなくなってからは、
甥の言う事なら何でも聞くようになったらしい。

家と土地を遺すから "その分" だけは面倒みてもらおう、という
腹づもりなのだろうか。

愛しい者に身を委ねる温もりを知らない人は、
"してもらいっぱなし" というのが苦手なのだろう。



この物語が終わる頃には、 マリラは "すっかりまるく"なって、
アンのおしゃべりにトドメを刺す、 あの" 素敵な皮肉" が影をひそめてしまう。


"マリラ好き" の私には、かなり残念だが…

アンとの生活に人生の喜びを見出したのだから、
私は「嬉しいわ」 と、言ってあげるべきなのだろう。



夕暮れ時、 美味しそうな夕飯の香りが漂う頃、

一緒に居てくれる愛しい人がいなかったら、

人生の味気なさに私はきっと "まいって" しまう。
posted by 片岡 よしこ at 21:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.21 『第21章  ミルフィーユ』



いくら風邪で鼻がきかないからって、痛み止めの水薬バニラエッセンス
間違えてケーキに入れるなんて考えられないわ。


これだけは自慢できるけど、私は初めて焼いたケーキから始まって、
これまで一度も失敗したことがない。

スポンジケーキはきめ細かくてフワフワ、クリームはなめらかでトロトロ、
クッキーはパリッと香ばしく、パイはバターの層がきれいに並んでいた。


レシピ通りに作るのが基本だけど、分量や火の強さを加減するのは"想像力"だから、
アンならうまく出来るはずなのにね。



こうまで失敗がないと、たまにはシクじってみたいもんだわ。


ちょっとそそっかしいヒロインが、彼のためにケーキを焼く。

ところが大失敗で半泣きになる彼女を、彼が優しく慰めるのよ。

失敗のおかげで友達になれたり、 愛が芽生えたり…

そういうのに、憧れるわ…



ミルフィーユというお菓子、知ってる?

とても手間が掛かる上に、お菓子作りの基本が全部出来なきゃ作れない。


彼が好きなお菓子だと聞いて、 私、一日中かかりっきりで焼きました。

初めて素人が作ったにしては、上出来だったのよ。

もしこれが失敗だといわれたら、人生って理不尽なことばかり。


ところが彼は喜ばなかった。

理由はいたって単純。 メシのおかずにならないから。


「ケーキは、デザートだろうが」

そんなん わかってるワ!


でも… 一日中ミルフィーユだけに集中してたから、

ご飯なんて、 ご飯なんて… 作れる訳ない。 くたくただもの。


愛が芽生えるどころか、な〜んか我儘な男だと思った。


上手に作ってソンしたわ。

次は "根治水" でも入れたろかと思う。


それで優しく慰められなかったら、 別れてやる
posted by 片岡 よしこ at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.20 『第20章  鬼』



アンがグリーン・ゲーブルズへ引き取られて、ちょうど一年が経った記念すべき日。


アンの質問は直球だ。

  「わたしなんか引き取って、 しまったと思っている、マリラ?」

  「しまったと思っているわけじゃないよ。」


本心では、 "アンなしでよくも生きてきたものだ" と思ってはいても、
それを言ったら最後、 アンは有頂天。

言いつけた仕事はそっちのけで、たっぷり30分はしゃべりっぱなしになるに
決まってるからね。



"やる" と決めた時のマリラは、 私の母に似ている。


小学生の私は水が怖かった。

  泳いだら溺れて死ぬ…


事実、 近くの一級河川の"遊泳禁止区域"で遊んでいて、溺れ死んだ子供がいた。

駄菓子屋のおばあちゃんの一人息子も、ずっと前に溺れ死んだんだって…

そんなかわいそうな子供達の霊が、水の中から足を引っ張るのではないか…


お〜 おそろしや



ある、夏休みのことだった。


  「泳ぎなさい。 川に落ちたら溺れるよ。」

母の一言で、私と妹の "地獄の特訓" が始まった。


炎天下の中、 2km程の道のりを、私と妹はプールへ引っ立てられて歩いた。


練習は、 "面かぶり" と "バタ足" の繰り返し。

浮き輪で楽しく遊ぶ子供達を尻目に、 私たちは眼を真っ赤にし、
鼻から水をたらし、 半泣き状態。

一方、 母は日傘をさしてプールの縁に立ち、"ああせぇ、 こうせぇ"と
叱咤激励、指示命令。

お尻が上がると日傘の先で突かれた。 もう、地獄。


嫌になってプールから出ようとすると、

  「なにくそ〜 って、歯を食いしばってやりなさい!」

そう言って、また日傘をさして涼しい顔。 決して水に入ろうとはしない。

なぜなら、"泳げなかったから" である。


それでも一週間程経つと、 水の怖さなどおっかない母に比べれば
何ほどでもないわ、と半ば開き直り、どうにか"我流"で泳げるようになっていた。


あの夏のプールサイドの母は、 鬼だった。



"トウヒの森" を通って行くように命じたマリラも、
アンにしてみれば鬼のようにみえただろう。

自分の想像で創り出した"恐怖"とはいえ、 後ろに仁王立ちのマリラ、
前には幽霊の出る森。 どっちもむちゃくちゃ怖い。



そう… あの夏の日、 出来ることなら、言いたかった。

  「おかあさん、 もうちょっとやさしくしてよ〜」


運動神経ゼロの私が、水泳だけは得意なのは母のおかげだ。

でも、 こどもは優しいのが好きだから、 厳しさも、優しさも、
同じ愛情だということがわからないの。



辛い現状にぶち当たると、 いつも目に浮かぶのは、
プールサイドに立っていた、鬼のような母の姿。


根性ナシの私だが、 やっぱり "なにくそ〜" よなぁ… 

そう思いながら、 足取りのろく、ぼとぼと前へ進んでいる。
posted by 片岡 よしこ at 00:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.19 『第19章  ひらめき』

「石橋をたたいて渡れ。」  教訓をアンにタレるリンド夫人。

  「こういいたいとか、こうしたいとか思ったが最後、
  前後の見境なく、いったりしたりしてしまうでしょうが。」


アンの答えは…

  「あら、でも、そうするのが一番だわ。」

えっ? アン?  そうなの?

  「なにかすばらしいことがぱっとひらめいたら、すぐその場で吐きださなくちゃ」

そっ そぅ … ?

  「考えていたら、しぼんで消えちゃうでしょ」

そうよ …  そうよネ

  「そんなふうに感じたことありません?」

ある!

私もそう感じることがあるわ、 アン!



私にとって、 "ひらめき" とは 「降ってきた!」 って感じだ。


解けない謎が、 りんごが地面に落ちた瞬間に解ってしまうような。

降って来た時に、 これは"当たりだ" と、心でわかるようなもの。



何年前だったか、 "人の魂は何処で生まれて何処からくるのだろう" と
考えていた時があった。

ちょっとウサンクサイ本に、私は "ひらめき" を感じてしまった。

  「地球の人間の魂の90パーセントは、地球以外の宇宙生まれだ。」


これは本当かも知れないと思い、友達に話してみた。

大人だった彼女は、「アンタ変なんじゃない?」 という視線を向ける代わりに、
そこだけ聞かなかったことにしてくれた。


これで怯んではいけない。 やはり人は選ばなきゃ。


しばらく経ったある日、 どこか風変わりなブティックの店員さんと親しくなった。

何となくスピリチュアルな方に話が向いて、 "魂宇宙説"を持ち出してみた。


  「私も宇宙から"魂の船"に乗ってきたの。 そんな人が集まる会に来ない?」


…。  誘われた。 これはアブナイと"ひらめいた"ので参加していない。

何につけても、"上" には "上" がいるものね。



マルチ系のビジネスに手を出した事もある。

いいビジネスパートナーに出遇えた、と "ひらめいた"のだが… 結局は失敗。

やってみて、私には無理だと思い知るのも勉強だ。 同じ失敗を二度としなくて済む。



時が過ぎると、後悔だけが残ってしまう。 後悔するどころか、損する事もある。


そう、 ギャンブル


頭の中で、ある4桁の数字が浮かんで消えない。

もしかして… ナンバーズ?  いやぁ〜 まさかでしょ


もし、2週間後に買っていれば、 100万円…。

あ〜 悔しい… 


何が悔しいって、  合呼ぶ魂の彼に話しときゃよかった。

"買う買わない"で、元がとれるくらい盛り上がったのに。



「そんなの 正しい "ひらめき" とは言えない」 って?


そうでもないわ。

毎日、光のように降り注いでいるとしたら、
どんな事でもいったりしたりしてみなくちゃね。


"ひらめき" とは、良い結果をもたらす、 空から降ってくる "応援の声" だと
私は信じている。
posted by 片岡 よしこ at 09:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.18 『第18章  一日の終わりに』



仕事を終えて、今日も私は家路を急ぐ。


夕食の献立を考えながら、 いつものマーケットでお買い物。

今夜は大好きな "おうどん" にしよう。


この頃はすっかり秋めいて、金木犀の香りがどこにいても漂ってくる。


特別な事の何もなかった日、 いつもと同じ一日を終えて、

夕暮れの空は、茜色の薄紙を重ねたように、 儚げに澄んで、 美しい。

それが悲しい色に染まっていなければ、私の一日は幸せだったのだ。


近頃の私は、訳もなく落ち込む事が少なくなった。

何もオモシロイことがなくても、

  「いいじゃない、 自分でオモシロイことすれば。」

なんて、 だんだんアンに影響されてきたのかしら。



アンの場合、平穏無事な日なんて皆無だ。

この日も大人達が留守の間に、ミニー・メイが"クループ"にかかってしまう。
大変な事になった。

"クループ"は喉の病気で、息が苦しくなり、犬が呻くような音をたてるそうだ。


私も、喘息の子供を一晩中抱いていて、
不安と疲労でくたくたになってしまったことがある。

夜の明ける頃、 峠を越えてすやすやと寝息を立てる子供を見て、
どれほど安堵したことか。


アンの適切な手当により、ミニー・メイは命を取り留めた。


真っ白い霜の降りた、素晴らしい冬の朝、
アンとマシューはグリーン ゲーブルズへ帰って行く。


  「マシュー、素晴らしい朝ね。

  神様が御自分が楽しむためだけに描いた絵のようだわ。」



私はこのシーンに心惹かれる。

精一杯の仕事をやり終えた後の、心地よい疲労感が伝わってくるからだ。

全てが良い方向に働き、最善の結果をもたらした。

けれども、 もしうまくいかなくても、何も見返りはなくても、
一日の終わりに世界が美しい、と思えたら幸せだ。


私はそう思う。


アン、 あなたもそう思わない?
posted by 片岡 よしこ at 00:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.17 『第17章  オモシロクもない世界』



  「こんなおもしろい世界に生きているんですもの、
  そういつまでも、悲しい気持ちでなんかいられないわよね?」



これは、子供の台詞ではない、と私は思う。

作者のモンゴメリー自身が私たちに語りかけているようだ。


そう… 問題は、いつまでも悲しい気持ちになってしまって、
世の中に出て行けないこと。

今の"この世界"はオモシロクない。


相変わらずダイアナとは遊べないアン。
それでも、久しぶりに通い始めた学校では大歓迎される。

ギルバート・ブライスとの成績争いはクラスの注目の的だ。
そりゃ、 オモシロイだろうさ。



私と言えば、 "身から出たサビ"と言われればそれまでだが、
相も変わらず忘れ物の罰則に苦しめられていた。

ある日、隣のクラスの人から教科書を借りてきたら、
"それも忘れたうちに入るのでは"と学級会にかけられ、卑怯者扱いよ。
それで、やっぱり立たされた。

だって図画の授業よ、 教科書いらんやんか。 オモシロクない。


ひとりクラシックファンを気取っていたPTA会長の息子は、
私の座布団の中に押しピンを仕込むのに熱中していた。

私ほど何度でもひっかかるヤツはいないそうだ。
ギャ! 叫ぶその度に先生に睨まれた。

もう… 悲しいばかりだわ…


石板で頭を割られるに値する男子がいるはずもない。

陰湿ないじめっ子はストーカー。 しつこく付け回されるので、
ある日怖くなった私は、持っていたサブバックを振り回した。

運悪く硯が入っていたため、彼はマジで頭をカチ割られそうになった。

学校に行くのが怖いわ…


やっと家に帰れば、母にメチャクチャ"逆上がり"を特訓されて、
手はマメだらけ、足は打ち身だらけ…

こうなると、 学校に行くのも帰るのもオモシロクない。

今なら私、断固登校を拒否する。


どこがオモシロイ世界なんだ。  でも…

待てよ… 冴えない事ばっかだけど、ちょっとオモシロイかもしれない。

いや、 私、かなりオモシロイ世界に生きていたかもしれん。


今の私の目には滑稽で鈍くさい私でも、確かにオモシロイ世界に生きていた。


卑怯で、滑稽で、鈍くさい私って… オモシロイ…?

ぶっちゃけてしまえば何て事ない。




いつまでもオモシロクないなんて言ってられないわ。
posted by 片岡 よしこ at 20:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.16 『第16章  美味しい水』




お茶に招かれたダイアナが、スグリ酒で酔っぱらうお話は有名。


多くの読者は思うだろう。

 「いくら子供でも、お酒とシロップの違いは飲めば判るんでないの?」 … という、疑問。


美味しければなんだってアリなのは、大人も子供も同じ。

だからこそ、躾はしっかり、 厳しくしなくてはいけない。 よ、ねっ? マリラ…



友達の家で酒盛りをしていたときの話。


私たちは割り箸をマドラー代わりに、一杯どころか相当飲んでいた。

友達には4歳になる娘さんがいた。
そういえば、ずっと私たちの側で何やら"やっていた"ような記憶がある。

割り箸を舐めていたのだ。 それも、何度も何度もね。


翌朝、いつまで経っても目を覚まさない。

心配して抱き上げてみると息が酒くさかったので、初めて気付いた、って訳。


彼女が熱心に舐めていたのは高級ブランディーでした。

そうしてみると、子供にだってお酒は美味しい飲み物なのかもしれない。

「お水 お水 ちょうだい」 って、 朝からおねだりしてたもの。



私もこどもの頃、"酒粕"が好物だった。


寒い夜は、火鉢でこんがり焼いた酒粕に、お砂糖をまぶして食べるのが
夜食代わりだった。

プックリ焦げた表面が香ばしく、酒粕の甘みと砂糖の甘さが絶妙でオイシイ。

粕とは言えども、"酒"と名が付いているのですから、
そんな食品をこどもに与える家庭は、今時ないだろうけど。


我が家のばあちゃんはこども8人を育て、
全員に酒粕を"おやつ"と称して食べさせていた。

酒屋から"サービス"で貰う酒粕は、最も安上がりなおやつだったのだ。

3時のおやつにも、ひとりでこっそり焼いて食べていた。
「酔う」という観念がないから、酔ったかどうかも定かでない。


ある日のこと、 一度に一枚全部を食べてみたい… という、
打ち勝ちがたい誘惑に負けてしまった。

さすがに気分が悪くなった。

これがマリラに知れたら、お尻を叩かれて根性を入れ替えさせられるところだ。

意地汚いマネをすると気分が悪くなる… 懲りたはずなのだが……


祖母に見つかって、お尻を叩かれた方が良かったかもしれない。

未だに私は、一人でつまみ食いをする時は全部食べてしまいたい誘惑に駆られる。


意地汚いのは直っていない。
posted by 片岡 よしこ at 16:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
 赤毛のアン 〜毎日読むアン〜                           

No.15 『第15章  大嫌いな先生』



小学校5年の時の担任が大嫌いだ 40歳前後の男の先生。

黒ぶちの丸眼鏡をかけて、いつも同じ茶色のツイードの上着に、
冬は毛糸のチョッキ、 という、教員を絵に描いたような冴えないスタイル。

何につけ皮肉っぽい、物の言い方が嫌いだった。


最近写真の整理をしていたら、当時の集合写真が見つかった。

  「え〜っ 以外に若いなぁ、 嫌味なヤツにも見えないじゃないの…」

ダメダメ 11歳の私は絶対許さないんだから!



さて、 私の担任教師は、忘れ物をする生徒を根こそぎ撲滅するために、
"教科書を忘れてきた生徒は、その科目の授業中は後ろに立つ"という、
独自の罰則を持っていた。

"教科書のない者は勉強するに及ばず"という訳だ。

常連の男の子達は悪びれもせず、ニヤニヤしながら後ろに立ったが、
女の子でこの罰を受けた子は一人もいなかった。


ところが不幸なことに、私はひどく物忘れの激しい生徒だった。

教科書だけは毎日確認していたのだが、 とうとうその日がやって来た。

忘れました、 算数の教科書。 それも1時間目。


私の家は小学校の塀の前にあった。

大きな木の枝葉の間から2階の私の部屋が見えた。

  「あそこに… 教科書があるのに…」

私は絶対立たされたくない。

男の子と同じ目に合うなんて、恥ずかしくてたまらなかった。


  「先生! お腹が痛いのでトイレに行かせてください。」

嘘をついた。

走りに走って家に帰ると私は教科書を持って、はぁはぁ言いながら教室に戻った。

  「お腹は良くなったかな」

そう言った時の皮肉っぽい目が忘れられない。 本当に嫌な先生だった。


そんな彼の罰則と皮肉を持ってしても、結局私の忘れ物癖は
大して改善されなかった。

癖が直ったのは、 もっと、ずっと後のことだ。


子供の私は、学校があることを忘れてしまいたかった。


忘れ物をしたくらいでなによ。

私を立たせるなんて、 ほんとに嫌な先生だ。
posted by 片岡 よしこ at 08:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | バックナンバー
"おもしろい!" と思ったらクリックしてくださいね にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ